2021年日本シリーズ総括①第1・2戦 稀に見る投手戦

2021年の日本シリーズが幕を閉じた。
東京ヤクルトスワローズが4勝2敗でオリックス・バファローズを下した。
ヤクルトは2001年以来、20年ぶり6度目の日本一に輝いた。
両チームとも2年連続でリーグ最下位で、プロ野球選手OBの評論家たちも両チームを優勝に推す声は皆無であった。

さらに日本シリーズ戦前の下馬評では、「オリックス有利」という予想も多かったが、ヤクルトが初戦サヨナラ負けの後、3連勝で王手を懸け、6戦目で決めた。

ちなみに、私の戦前予想はオリックス4勝3敗で日本一であり、第1戦から5戦までの勝敗は的中したが、第6戦でハズれた。

https://note.com/mmiyauchi/n/n415421afc61b

プロ野球ファンからは「近年になく面白い日本シリーズ」と評されるほど、どの試合も接戦に次ぐ接戦で、終盤までどちらが勝つか分からないという展開ばかりであった。

なぜ、ここまで面白い勝負になったのだろうか?

その① 第1戦、第2戦が好投手同士の投手戦で締まった展開になった。

シリーズ開幕前の監督会議で、今年の日本シリーズでは「予告先発」を行わないことになった。報道ではヤクルトの高津監督が嫌ったようである。

オリックスは二大エースの山本由伸と宮城大弥がおり、比較的、先発投手の順番が読みやすい一方で、ヤクルトは奥川恭伸、高橋奎二もどういう順番で来るのか、憶測を呼んだ。
山本由伸に奥川恭伸をぶつけるのか?それとも回避するのか。

高津監督は初陣の先発に奥川恭伸を選んだ。
これはシリーズが第7戦までもつれた場合に備えて、奥川恭伸を先発させるために登板間隔を逆算した結果ともいえるが、高津監督からすれば、「ヤクルトのエースは奥川」というメッセージもあったと思われる。
また高津監督には、今後、10年先を考えれば、山本から逃げずに奥川をぶつけるという「正攻法」を採ることでチームとしても奥川本人としても収穫が大きい、という深謀遠慮もあったかもしれない。

第1戦、ヤクルトは1-1の同点で迎えた8回、村上宗隆がバックスクリーンに2ランホームランを放って勝ち越したが、結果的にクローザーのスコット・マクガフの誤算があり、2点差を追いつかれてサヨナラ負けで星を落とした。
初戦をクローザーで落とすというのは嫌な流れだが、一方で収穫も多かった。
まず、奥川が山本由伸とほぼ互角に投げ合った。
いや、奥川は7回1失点なので、山本の6回1失点を上回っている。
また、ヤクルト攻撃陣は山本由伸から1点しか奪えなかったが、待球作戦によって序盤から球数を多く投げさせることで、山本を6回、112球で引きずりおろすことに成功した。これによって、オリックスは中継ぎ投手を一人、多く使わないといけなくなった。
ヤクルトからすれば奇策を弄して敗れるよりは、はるかに納得のいく「1敗」であった。

https://note.com/mmiyauchi/n/ne054e19009a3


続く第2戦は、オリックスは宮城大弥、ヤクルトは高橋奎二の両左腕の先発となった。
宮城は6回1死までパーフェクト投球を見せた。宮城の好投はある程度、予想できたが、一方の高橋奎二も初回から走者を背負いながら要所で失点を許さない、粘りの投球を見せた。
両先発とも7回までスコアボードに「ゼロ」を並べたが、最後は宮城が根負けし、8回2死から青木宣親に先制タイムリーを許した。
そして、高津監督は8回、9回も高橋奎二に続投を命じた。
高橋奎二はレギュラーシーズンでも7回が最長で、8回以降は投げたことがない。
前日、セットアッパーの清水昇も失点はなかったが走者を出す不安定な出来で、またクローザーのマクガフが打たれていなければ、8回から清水、マクガフの継投も考えられた。
だが、9回に追加点が入ったこともあり、高橋奎二は未知なる完投、完封に挑み、見事、三者凡退で抑えて、プロ初完封勝利を収めた。

高津監督にとって、高橋奎二の続投、完封は「怪我の功名」ではあるが、第1戦の敗戦を活かした見事な決断であった。


https://note.com/mmiyauchi/n/n7cde334f1bba


一方、中嶋監督は9回表、1点ビハインドでセサル・バルガスを投入した。
バルガスは、村上宗隆をピッチャーゴロに抑えたものの、ドミンゴ・サンタナを四球で出して、中村悠平に犠牲バントで送られ、二死からホセ・オスナにタイムリー安打で2点目を献上し、ヤクルトベンチに高橋奎二に続投させるという選択に弾みを与えてしまったともいえる。
これによって、ヤクルトベンチも高橋奎二も、ソロ一発を浴びてもまだ1点リードある、という心の余裕を得ることができたのかもしれない。

オリックスベンチからすると、第1戦にセットアッパーのタイラー・ヒギンスが8回に、一時勝ち越しとなる村上宗隆の2ランを浴びており、このことが中嶋監督にヒギンス投入を渋った理由であろうが、バルガス以外の選択肢がなかったのか。
オリックスには、山本・宮城を先発させた試合は絶対に勝つ、という執念が欲しかったところだ。

このシリーズを振り返ると、第2戦で高橋奎二が「望外」ともいえる完封勝利を収めたことがヤクルトを勢いづけたと思う。
個人的には、「日本シリーズ第2戦重視論」を採っていることもあるが、やはり結果的に第2戦に勝利したヤクルトが日本一になった。


オリックスの本拠地・京セラドームでは1勝1敗で、勝負は東京ドームへと引き継がれた。



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