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ねい
2019年1月10日 21:37
「植物になりたいと、真剣に悩んだ時期があるんだよ。」 そう話すのは、40代後半の、髪に混じる少しの白毛を染める事もしない男性でした。コットン地の白シャツの上に、グレーの質の良いニット、茶色のダウンベストを着ています。ダボっとしたワークパンツの足元はスニーカーで、どれもビンテージものです。着崩した様子がとても似合いますが、上品さを感じさせます。生まれは東京では、ないのかもしれません。
2018年12月29日 21:11
年の瀬の東名高速道路の渋滞は、絢爛たる川だった。 フロントガラスの半分より上には、世界が逆さまでない隠れた恩恵を覗かせるように、底のない暗い空がまたがる。 さらに三分の一の高さには、光る橙を灯した一本草が並び、宙にもう一枚の滑走路を浮かべるも、そこを走る車は一台も見えない。 誰も走れない滑走路の下で、ようやく、尻に赤を灯す車たちが等間隔に流れていく。 これほどの赤い蛍を見る
2019年1月8日 15:04
寝付けない夜や、どこかの帰りの電車、人を待つ時間に、よく頭の中に人物像が浮かび、気になって仕方がないことがあります。だいたい、人混みに出掛けた後が多いです。 髪の長い、栗色の毛をした色白の優子さん。全体的に肌が乾燥しているように見えるし、胃腸が強くない人に見られる体格だなぁと思います。ピンクの薄いウールのカーディガンに、オフホワイトのインナー。下半身はテーブルの下でよくわかりません。
2019年3月17日 23:57
どの文章も書き終わらなくて困っている。分岐が次々と生まれ、あちらこちらに向かう電車は増え続け、いつのまにかどこかへ去ってしまう。乗りかけた乗客を置き去りに。そんなこんなで、いくつもの下書きが眠ったまま、鍵のかかったロッカーで借り主を待っている。どこで鍵を落としたのだろう。ポケットを叩いてもビスケットひとつ出てこない。いつのまにか列車とホームの隙間に、落としたのかもしれない。この動かない