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【短編小説】モテない男 ~持栗 旬 編~
あああああぁぁぁ、ついに30歳になってしまった…
仕事はバリバリこなすけど、彼女いない歴、年齢。
ちなみに素人童貞。
俺さ、結婚相談所に入会しようと思う!!
安全だし、結婚もしたいし!近道だと思うんだ。
ブサイクだし普通に日常を送ってたら、星の数ほどめぐり逢いがあっても、実になることは、なしよりのなしだと思うんだよね!
でもね、名前はイケメンだよ(笑)
持栗 旬(もぐりしゅん)だから!!
俳優の小栗旬みたいだよね♪
ネタになるなぁと期待してたのに、女の子に言ったら、小栗旬が可哀想…って号泣されたよ。
どれくらいブサイクかって?
「細木数子と江原啓之をたして2で割って、美輪明宏をかけた感じ」
こう言われた事があるけど、神秘的なのかな(笑)
この世のものとは思えないくらいのブサイクってのが正解かもね♪
まぁ、ブサイクでモテなくても結婚相談所に入会する権利はあるからね(笑)
合コンだったらさ。
俺が待ち合わせ場所に現れた時点で。
「解散」
って女の子に言われてさ(泣)
キッツイよね~。
今日は辛い過去を忘れるためにも、結婚相談所に入会しに行くよ!
キャンペーン中で今なら入会金5万円だしね。
13時半に結婚相談所に予約してある。
割と新しいビルの5F。着いたぞ。
受け付けのお姉ちゃんに、名前を行って個室に案内された。
白い真四角のテーブルに、向かい合わせに椅子が2つ。
ドキドキするな~!!
トキメキに似た緊張が始まった頃、1人の中年女性が現れた。
「それでは入会金お願いしますね」
えっ?
席に着いて早々、それか~
俺は事務的さに少し驚いた。
「5万円ですよね。この封筒に入ってます」
俺はお金が入った縦長の茶封筒を女性に差し出した。
「10万円ですよ?」
「えっ?キャンペーン中ですよね?」
「はい」
「じゃあ、5万じゃないですか」
「貴方は特別です」
「はい?特別なら、安くなるんじゃ」
一体、どうなってるんだ?
「特別だから高いんです」
「そんなの、おかしいでしょう?」
「特別だから安いなんて法律にあります?」
何か喧嘩越しだな!
訳わかんないし、ここ大丈夫かな?
俺は不安になってきた。
けど、10万でも安いんだよな。
他は200万円を分割とかだし…まぁいっか。
「わかりました。あとの5万円は後日支払います」
女性はやれやれといった表情を浮かべた後、1枚の用紙を俺に差し出してきた。
“プロフィールシート”を記入するらしい。
出逢いのはじまりで、
ドキドキするな~!!
俺はよーく考えて素直に、時には女性が喜ぶことを、
思いを込めて記入した。
■名前■ 持栗 旬
■年齢■ 30
■身長■ 165cm(シークレットブーツ込み)
■体重■ 114kg(いいよ)
■長所■ モテる(力持ちで重たいものガッツリ持てる)
■短所■ なし
■趣味■ あなた(出逢った貴女が僕の全て)
■特技■ あなたを褒めること(貴女は素敵すぎます)
■好きな食べ物■ 牛脂、マヨネーズ、ポテチ(ピザチーズ)
■嫌いな食べ物■ もやし、とうふ、こんにゃくゼリー
■年収■ 後からのお楽しみ♪(バリバリです)
■一言■ 株式会社 夢追い人 代表取締役の 持栗 旬です♪
素敵な時間を過ごしましょう。座右の銘は
人間は負けたら終わりではない、やめたら終わ
りなのだ。です。
*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜
「なんですか!?これ!」
俺のプロフィールを見てアドバイザーの女性が、怒りを込めた声で言った。
「え?俺のプロフィールですよ?」
「株式会社夢追い人ってところで何?」
「俺の会社です」
「…年収は?」
「ありません」
あっさり言う俺に女性は、拍子抜けした顔をしてる。
「どういうことですか?無職の男性は入会できません!」
「無職じゃありません!毎日、頑張って夢を追ってます!今の夢は彼女をつくること!!だから今日はここに!!」
「はぁ~~?収入はどっから入るんですか!」
「入りません!お金を稼ぐだけが仕事じゃない!やる気です!!夢追って頑張ってます!!たった1人で!!」
「馬鹿野郎(ꐦ°᷄д°᷅)!!」
俺の熱弁に、馬鹿野郎と返され入会をお断りされた…
なんてことなんだ…
悔しい…
悔しい……
あの忌まわしい結婚相談所の出来事から3年。
あの後、悔しくてなんと借金をして結婚相談所を立ち上げた!
それが大当たりで、相変わらず彼女はいないが、金に守られている。
今日はキャバクラ行くかな~。
《END》
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