【読了 2023 No.39】水内喜久雄編著『子どもといっしょに読みたい詩(令和版)』(PHP研究所)読了。
副業の個別指導で教えている小学生が国語の課題で詩を作ることになった。
何を題材にして書くのかと聞いたら、「夜店の焼きそばがおいしかった」
って書くと答えた。
それって、詩になるのか?
日記ならいいけど、やっぱ詩って違うんじゃないか?
…と思い、まずはいくつかの詩に親しませようと思って買った本である。
まぁ予想外通り、その子の教科書に記載されている椎名誠の書いた「プラタナスの木」のような「大人の期待する」“純真・無垢”な子ども像を描いた詩が多かった。
子どもって、そんなに大人に都合よく“純真・無垢”じゃねぇよって言いたい。
でも、そんな中で、「さすが谷川俊太郎、スケールがでかいなぁ」と感じた。
この詩人はスケールがダンチな上に、しっかりネガティブな内容も“差し色”のように差し込んでいる。
「生きる」は、決して単なる生命賛歌なんか私はじゃない所がいい。
私は太目なせいかお人好しに見られるようで、電車で座ると「席を譲って欲しい」と思う人のターゲットになり易い。
先日もやっと席が空いて座ったと思ったら、杖をついた“おばあさん”らしき人が乗って来るなりわざわざ私の前に来て、電車に揺らるたびにバランスを崩してみせて(でも、倒れないんだよね)「席を譲れ」圧力をかけてくる。
そんな私には、何度も席を譲らされる女性を描いた吉野弘氏の「夕焼け」が、他人事ではなく響いた。
ちなみに、その“おばあさん”らしき人の話には続きがある。
結局、私の隣の隣の人が見かねて席を譲ってくれた。(それ程露骨だったよ)
ところが、少したって衝撃を受けた。
その“おばあさん”らしき人の手がとっても瑞々しいのである。
「こいつ、若けぇ❗」
恐る恐る顔を見たら、化粧してツケマもしている。
仕事のために朝早く電車に乗る59歳の私が、優先席でもないのに、席を譲るべき人じゃねぇよなと思った。
吉野弘氏の「夕焼け」は、席を譲った“としより”が駅を降りた後に
「別のとりよりが娘の前に横あいから押されてきた」って書いているけど、いや、それは違うんだな。
「この娘は譲ってくれそうだ」と狙ってくるんだよね。
私の話に戻すが、その後もまた、じぃさんっぽい男が私の前に立ってきた。
そして、「譲れ」圧力をかけてきた。
今度は私は顔を上げて確認した。
そいつ、「お前、若いんだから譲れよ」って顔で私を睨むんだけど、私は瞬時に思った。
「こいつ、私より若いぞ」と。
そこで作戦を換えた。
「もう、こっちは59なんだよ。40代までは随分席をゆずってきたよ。だけど、もう59なんだよ。昭和39年生まれなんだよ。さすがに席を譲るのは引退させて貰いたいね。ここ、優先席じゃないしね」
って具合に、グチグチグチグチと野村監督風にボヤいた。
そしたら、案の定、そそくさと手すりポールの方に移動していった。
そのそそくさぶり、今思い出しても笑える。
よっぽど、私は若く見えるみたいだな。
閑話休題。
詩集の話に戻らなきゃね。
詩集にはお決まりの作品二つが入っていた。
島崎藤村の「初恋」と与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」。
でも、やっぱこの二作品はいいよね。
七五調だからいいんじゃないかなぁと思う。
私は「君死にたまふことなかれ」の中で、「すめらみことは、戦ひに おほみづからは出(い)でまさね」
という、天皇制に対する強烈な皮肉がこもった箇所が一番痛快に感じる。
日本語は七五調が一番冴えるなぁと思った。
最後にその小学生の詩の授業について。次の週には終わっていた。
班の中で作品を発表して、お互いに批評して終わったと。
せっかく詩の授業なのに、教科書の詩以外の詩を鑑賞するなどは全く無しだった。
せっかくだから詩をいっしょに読もうかと思ったら、その子が
「お母さんが、これを先生に渡せって」と、
そしたら漢字のテスト。
とっても悪かった。
このお母さんはこっちの書いた日誌には印鑑どころか印もつけないくせに、「もっと宿題を増やして欲しい」と言う人。
要するにもっと漢字練習させろってことらしい。
そんなわけで、この詩集は教材にはなり損なった。
でも、私にとっては、この詩集は価値あるものになった。
谷川俊太郎を改めて見直させてくれたし、茨木のり子さんという好きな詩人ができたしだ。
そして、犬の散歩途中に気づいたことをスマホにメモして、詩を作ってみようという、新たな楽しみに目覚めさせてくれた。
私は中学校で百人一首を暗記させられているし、「古今和歌集」は高校時代に全部読んでいるし、かつて川柳にこったことがあって朝日新聞の「声」欄に三回も載せて貰ったことがあるなど、実は七五調にとっても馴染んでいる人である。
ネガティブな感情をしっかり描きこんだ、かつ七五調の詩を作っていこうかなと思った。
作品ができたら詩の雑誌に投稿してみよう。
そして、年があけたら谷川俊太郎編の「茨木のり子詩集」を読んでみようと思った。
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