見出し画像

旅日記 安房小湊(エッセイ)

何もない漁師町。何もない海の世界。
東京に住んでいると情報という名の麻薬で中毒になりそうになる。そんなときに訪れたい町。

朝、日の出前に海岸へ行く。波の音、風の音、鳥の声。風の音楽に合わせて、波が白く踊る。やがて、オレンジに染まる空から太陽が昇る。空気が急に暖かくなる。誰もいない世界に私一人。私だけの時間。私だけの場所。
このまま座っていたら、波にさらわれそうな世界。水平線の先にある知らない場所へ導かれるならば、それはそれで構わない。そんな贅沢な時間、贅沢な場所。
波に洗われ、風に吹き飛ばされた垢や埃が落ちた心をお土産に、東京へ帰る電車に乗る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?