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昔々多くの外国人たちに夢のような美しい国だと手放しで褒めちぎられた国があったとさ。

前回は明治維新の時に平均律が変則的なかたちで日本に導入されたことを書いた。

日本は開国によって西洋の先進的な知識やテクノロジーを思う存分吸収しましたが同時に日本的なものや日本独自の素晴らしさを捨て去ってしまったことは見逃せません。

いったい開国前の日本ってどんな国だったんだろう?

そのあたりを探った超オモシロ本がある。

【きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第82回】

時々本棚から取り出してちびちび読みすすめている歴史家の渡辺京二著「逝きし世の面影」(平凡社ライブラリー)だ。

なんでちびちびかというと604ページもある大著だからだ。

“逝きし”とは“ゆきし”と読み、過ぎ去ったとか失われたという意味。

明治維新以降日本は変わったなどと生易しいことではなく一つの文明が滅んでしまったのだと渡辺市は強調する。

日本近代が古い日本の制度や文物のいわば蛮勇を振るった清算の上に建設されたことは、あらためて注意するまでもない陳腐な常識であるだろう。

だがその清算がひとつのユニークな文明の滅亡を意味したことは、その様々な含意もあわせて十分に自覚されているとはいえない。

十分どころか、われわれはまだ近代以前の文明はただ変貌しただけで、おなじ日本という文明が時代の装いを替えて今日も続いていると信じているのではなかろうか。

つまりすべては、日本文化という持続する実体の変容にすぎないと、おめでたくも錯覚して来たのではあるまいか。

実は、一回かぎりの有機的な個性として文明が滅んだのだった。それは江戸文明とか徳川文明とか称されるもので、18世紀初頭に確立し、19世紀を通じて存続した古い日本の生活様式である。
          
          「逝きし世の面影」第一章「ある文明の幻影」より。

この本は幕末から明治にかけて日本に滞在した多くの外国人が残した膨大な日記や研究書に書かれた日本を紹介している。

多くの外国人たちの目には日本は夢のような国に映った。

まるで絵をみるような美しい風景の中で人々は仲良く暮らしている。

日本にはたくさんの貧乏人がいるが貧困とか悲惨さをみじんも感じさせない。

多くの貧乏人たちは他の国とは比較にならないほど明るく陽気にお互い助け合って暮らしている。

家(長屋)を覗いてみると何の家具もなく狭苦しい場所に家族が寝起きしている。

長崎は世界3大美港と言われているリオデジャネイロ、リスボン、コンスタンチノープルよりずっと美しい。

日本の最も貧しい家庭でさえ醜いものは皆無だ。お櫃(ひつ)から簪(かんざし)にいたるまで、すべての家庭用品や個人用品は、多かれ少なかれ美しく、うつりがよい。

男も女も子供もみんな幸せそうで満足しているように見える。個人が共同体のために犠牲になる日本で、各人がまったく幸福で満足しているように見えることは、まったく驚くべき事実である。

何もすることもなく何もしていない人々が日本では数多い。かれらは火鉢のまわりにうずくまってお茶を飲み、小さなキセルを吸い、満足な表情で話をしたり聞いたりしている。そこには日本人のやさしい気質と丁寧な人づきあいとがあらわれている。

何もかにも開けっぴろげな彼らは家に鍵をかけずに生活している。

日本人はとても親切で通りでうろうろしていると必ず何人かが近寄ってきて言葉も通じないのに心配してくれる。

探している家まで何人もの村人がついてきてくれる。

世界中さがしてもこれほど優しくて思いやりのある民族は他には見当たらない。

オリエンタリズムに幻惑されて贔屓目に見た特有の眼差しがあったとしてもこれほど多くの外国人たちが手放しで褒め称える国が世界中他にあっただろうか。

日本はこの世のパラダイスだった。

何よりも残念なことは日本人自らがこのパラダイスのような国を切り捨ててしまったということだ。

今がチャンスだ。

未来の歴史家たちは現代をAC、BCという区切り方をするだろう。

After CORONA  Befor CORONA

今まで続いた科学も宗教も哲学も一度リセットして地球と響き合えるAfter CORONA時代を創り上げなくてはいけない。

After CORONAは自然と共存し調和がとれた世界でなくてはならない。

そのためには一人ひとりタガが外れて狂ってしまった自分自身の心と体を調律しなおすことから始めないと。

調律の狂った楽器では美しいメロディーを奏でることはできず、他人と合奏して美しいハーモニーを響かせることも不可能だ。

世界を美しい響きで満たすために一人ひとりの調律から始めないと。

最後までお読みいただき有難うございました。

次回もお寄り頂ければ嬉しいです。


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2002年に書き始めたブログ「万歩計日和」です。


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