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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻)

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王朝物語『我身にたどる姫君』の現代語訳です。
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2022年7月の記事一覧

現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その51)

 その物腰が音羽山の姫君とまるで同じだったため、権中納言は完全に分別を失った。   身に…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その50)

「月日が経《た》つにつれて、このまま生き永らえることはできないと思う気持ちが強くなり、現…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その49)

 そのまま姫君がいる対屋《たいのや》に赴くと、仕える女房たちが以前よりも増えて華やかな感…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その48)

 激しく時雨が降り、木の葉が先を争って散っていくある夕暮れ、女三宮への思いが募って耐え難…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その47)

 他に心を寄せる女性がいなくても、あまりにも嫉妬深い振る舞いは嫌われるものである。だが、…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その46)

 権中納言は女四宮を避けるような素振《そぶ》りを見せず、古歌で詠まれたような「衣片敷《こ…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その45)

 そうはいっても、男女の関係が絡むと親子の情も薄れてしまうのだろうか。関白は次第に、いっときも女三宮と離れるのが耐え難い気持ちになっていった。言い様もなく浮かれる関白を横目に、権中納言はさりげなく振る舞ってはいたものの、ひどく情けない気分だった。   あさましや海人《あま》の釣舟《つりふね》漕《こ》ぎ返り   果ては見慣るる千賀《ちが》の塩竃《しほがま》  (何とも情けない。海人《あま》が釣り船を漕《こ》いで元の場所に戻るように、あの人が最後には見慣れた家族になってしまうと

現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その44)

 関白は年配者ではあったものの三十八歳で、女三宮は二十歳未満だった。人々は二人の年齢差を…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その43)

 十月二十日、関白は密《ひそ》かに女三宮を寝殿に移し、人々を驚愕《きょうがく》させた。中…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その42)

 関白の北の方は、昔からあまり深い愛情を注がれていなかったため、女三宮が迎えられることに…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その41)

 あるのどやかな夕べのこと、院は三条宮《さんじょうのみや》にやって来た関白に、世話話のつ…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その40)

 こうして世の中は少しずつ落ち着きを取り戻していったが、院の心中は耐え難い悲しさに押し潰…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その39)

 八月末、尚侍《ないしのかみ》は参内《さんだい》して藤壺《ふじつぼ》を自分の局《つぼね》…

たま
2年前
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現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その38)

 院は女三宮を連れて三条宮《さんじょうのみや》に移り、女三宮の世話に専念するつもりでいた。 「二条宮《にじょうのみや》(中宮の里)には既に権中納言と女四宮がいる。もしわたしがそこに乗り込んだら、二人は他の場所に移らざるを得なくなるため、かえって気詰まりだ」  一方の関白は、以前から考えていたように尚侍《ないしのかみ》と姫君を、それぞれ帝と東宮に同時に輿《こし》入れさせる意向を固め、入内《じゅだい》の準備を急いだ。しかも、今月中に実行に移すことを公にしたため、人々は大急ぎで作業