現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その44)

 関白は年配者ではあったものの三十八歳で、女三宮は二十歳未満だった。人々は二人の年齢差をさほど問題視しないどころか、むしろ歓迎する声の方が多く聞かれた。
 権中納言は二人の結婚を表立って非難しなかったが、不安な気持ちを抱えたまま一人苦しんでいた。
「初めから妙によそよそしいと首を傾《かし》げていたが、あれは父との結婚が決まっていたからだったのか」
 一方の関白も心中で悩んでいた。
「もし、息子が心を寄せていた相手が女三宮だったならば、どれほど不愉快に思っていることだろう」
 ひどく気後れがし、我が子とはいえ過ちを犯したような心地がしていた。

(続く)

 女三宮が関白の妻になったことに対し、権中納言は渋々受け入れたようです。一方の関白は、権中納言の恋の相手が女三宮だったのではないかと感づきます。関白が気がつくのがもう少し早ければ、――故皇后宮が夢枕に立った際に二人の関係に思い当たれば、違った未来になったかもしれません。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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