現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その46)

 権中納言は女四宮を避けるような素振《そぶ》りを見せず、古歌で詠まれたような「衣片敷《ころもかたしき》」(衣の片袖を敷いた独り寝)のつらい夜もなかった。しかし、いつもひどく思い悩んだ様子で、気が塞《ふさ》いだようにぼんやりとしながら、時折、無意識に歌を口ずさむ権中納言の様に、女四宮は確信はなかったものの疑念が晴れなかった。
「いったいどこの女に心を奪われているのか」
 女四宮は見当外れで些細《ささい》なことを疑い、恨みごとを言いながら涙を流した。

(続く)

 権中納言と女四宮の夫婦生活が再び描写されています。女四宮の疑い深い性格は以前と何ら変わりませんが、今のところ女三宮の件についてはばれてはいないようです。

 母親である中宮の悪役振りは、短いセンテンスで的確に描写されるのに対し、女四宮の嫉妬深さは同じ内容がしつこいほど繰り返されるので、やや食傷気味です。作者の身近にモデルとなる人がいたのだろうか――と余計な邪推をしてしまいます。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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