現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その47)

 他に心を寄せる女性がいなくても、あまりにも嫉妬深い振る舞いは嫌われるものである。だが、どういった心情なのか、権中納言はまるで別人のように毎日、二条宮《にじょうのみや》に通っては閉じ込められ、女四宮から恨み言を聞かされていた。誠に人の宿世《すくせ》というは複雑で儚《はかな》いものである。
 関白邸に出入りするだけで空恐ろしく落ち着かないものの、かといって引き籠《こ》もるわけにもいかず、ひどく忍んで中納言の君のもとに通った。だが、今や同じ屋敷にいるため、秘密が露見してしまうのが恐ろしい中納言の君は以前のように取り計らおうとしないので、権中納言はさらに気が抜けたようになった。

(続く)

 今回も権中納言と女四宮の関係の復習です。

 権中納言は女四宮から恨み言を浴びせられることが分かっていながら二条宮に行き、予想通りの結果になって何日も閉じ込められる――という生活を繰り返しています。作者は「宿世(前世から定められた運命)」としていますが、彼にはマゾの素質があると個人的に思います。

 一方、女三宮が関白邸に移った後も、女房の中納言の君に取り次ぐように言い寄っているようです。この辺りの行動パターンが「まるで別人のように」という本文につながります。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


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