現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その40)

 こうして世の中は少しずつ落ち着きを取り戻していったが、院の心中は耐え難い悲しさに押し潰《つぶ》されそうだった。安史《あんし》の乱後に都に戻った玄宗《げんそう》が、亡き楊貴妃《ようきひ》を偲《しの》んで茫然《ぼうぜん》と暮らしたような心地で、このまま現世で生きていくことはできそうにない。しかしながら、絆《ほだし》である女三宮の身の上がどうにも気掛かりで決断できず、ひどく思い悩んでいた。どのようにすべきかと思案を巡らしながら、一方で今すぐにでも出家が可能な二宮を少し羨《うらや》ましく感じていた。

(続く)

 退位した院は、静かに仏道修行を行って心を落ち着けようとしましたが、皇后宮を失った悲しさに耐えきれずに出家を決意します。しかし、女三宮の身の上が気になり、実行に移すことができません。

 一方、二宮は東宮になれなかった代わりに、生きていくのに困らない所領をもらっていますので、院はまったく心配していません。それどころか、出家するのに何の支障もなく、愛する人を失う悲しさを味わうこともない立場を羨んでいます。

 さて、ここで問題です。
 次回に少し意外なイベントが発生します。何が起きるか予想できますでしょうか?

 ヒントは「院が気にしている女三宮に関する事柄」です。
(ちなみに、わたしはまったく予想外で完全に不意打ちされました)

 それでは次回にまたお会いしましょう。



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