note飲食プロデュースすべき理由

編集者が「飲食店プロデュース」すべき理由:お金を集めて増やしてクリエイターに返す

人生初の飲食店プロデュースに挑戦してみた「サイバラ酒場」が2020年2月16日に大盛況の中、新宿歌舞伎町での約一ヶ月の期間限定営業を終えました。

私にとって飲食店プロデュースは初の試みだったこともあり、心残りや反省点は山積みなのですが、
養老乃瀧さんからも「大成功」というお言葉をいただけて、ひとまず、ホッとしています。

日経新聞、フジテレビ「ノンストップ」、多種多様なウェブメディア等で取り上げてもらい、
ジャンプ酒場とのコラボ、藤子不二雄A先生や河井リツ子先生(ハム太郎作者)のライブペイントなど、夢のような企画も実現できました。
お客さんからのリクエストにお応えして大阪での開催も計画が進んでいます。

年始からずっと慌ただしかったので、当面はゆっくりめに仕事をしよう、と思ってはいるものの、あれやこれやと次なる企画が動き始め、あっという間に二週間が経ってしまいました。
さまざまな企画が舞い込んでくるのは、ありがたいことですが、
「振り返る機会も持たずに流れていってはいかん!」と立ち止まりました。

サイバラ酒場の記憶が新しいうちに、今回の企画をかたちにしたことで得た知見、思いなどを、きちんとアウトプットしておこうと思います。

■なんで編集者が「飲食店プロデュース」をするのか

予想通りではありましたが、期間中も幾度となく「編集者がなんで飲食店に関わってんの??」という声が寄せられました。

私の回答は明確です。

「なんで、紙とウェブに、そんなこだわってんの??」

コンテンツ徒労の2010年代

お金は払ってもらえるけど、縮小している場
(既存の出版流通)

拡大しているけど、お金は払ってもらいにくい場
(例:ウェブメディア)
お金は払ってもらえるけど、他社が牛耳ってる場
(例:LINEスタンプ)
でなんとかしようと頑張ってみたけど、
あんまりうまくいってないのが、出版業界の2010年代でした。

漫画という出版業界において大きな市場でデジタルシフトが進んだため、
数値的にはデジタルが伸びてる感がありますが、
上記の図の方向で続けても未来がないことは明らかです。


私がここ最近取り組んでいること(飲食×コンテンツ、ハム太郎などライツ再活性化、クラウドファンディング等)の方針を図にすると以下のようになります。

コンテンツ×サービス

■より良い場所で展開する「嗅覚」

良書『アニメプロデューサーになろう! アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み 』(星海社新書) 福原 慶匡・著 は、
プロディーサーの仕事について、以下のように記しています。

プロディーサーの仕事は、お金を集めて増やして、
クリエイターに返すこと

短い言葉ながら、その役割を見事に表していると思います。

私は、編集者もこの意識をもっと持つべきだと考えています。

<クリエイティブを理解するだけでなく、
ビジネスと両立させる>
能力を持つ編集者が増えなくてはなりません。

その際に、これまであまり組んでこなかったところから、
より理想的なアライアンス先を見つけ出し、
お金を払ってもらいやすい場へ展開する「嗅覚」
が、
ますます必要になってくると思います。

■「誌面の編集」と「飲食提供物の編集」は地続き

ロッキング・オンが「フェスはメディア」と明言しています。

同感です。

飲食店の店舗デザイン、メニュー開発は、初めてだったので大変苦労しましたが、
その際に使っている脳みそ、思考回路は、
雑誌や本、漫画の構成を考えているときと、極めて近しいものでした。

「誌面の編集」「物語の編集」と、
「場の編集」「飲食提供物の編集」は地続き
です。

「飲食店もメディア」なのです。

そして、既存の出版流通やウェブよりも格段に「お金を払ってもらいやすいメディア」だと感じます。

■編集者だからできる飲食展開

先日、養老乃瀧さん(サイバラ酒場の店舗運営)とお話した際も、
「企画会社を通さずに、
出版社、とりわけ編集者と、直で展開」してみたメリットを強調されていました。

●話が早い

●「企画をどこまで攻めていいのか」のラインが明確

だからです。

企画会社が入ると、どうしてもワンクッション置かなくてはなりません。

このくらいならまずNGは出ないだろう、という「置きにいく」企画にならざるえないケースが大半です。


作者の意図、作品への想い、
ファンのニーズを常に肌身で感じている編集者

直接たずさわるからこそ、
ファンが喜び、作者も満足する店舗を作り出すことができます。


上に記したことは、飲食に限るわけではありません。

アパレルや家具、雑貨、遊戯場など、開拓の余地は大いにあると思います。

いずれの分野においても重要なのが
「お金を集めて増やしてクリエイターに返す」
という意識ではないでしょうか。


Twitterなどで時折見かける「出版社=中間搾取」みたいな言説が、いかに浅いか、つくづく感じていますが、
それらを毅然と弾き返せるだけの強靭な意識と行動が、今後ますます大事になってくるのではないかと考えています。

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