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『イキウメの金輪町コレクション 乙』

2021年2月17日(水)13:00開演
@東京芸術劇場シアターウエスト
¥6,000

書きそびれたまま半年経ってしまいましたが、せっかくシリーズ甲・丙とアップしたので、乙も上げておきます〜。これでコンプ!!

この2月はイキウメ祭りとでも言いましょうか。金輪町シリーズを3本観劇し、『迷子の時間』の配信も見て、めちゃくちゃ濃ゆい日々でした。しかも『ポー』の配信鑑賞と生観劇もしているのだ。特に13〜17日までの5日間に5本の観劇なんて、うち2本は配信とは言え未だかつてない濃密さ。よく脳みそ溶けなかったなあ。

金輪町シリーズ・甲乙丙プログラム、3本立てのラスト一本。(甲プロ丙プロの記事もよかったらドーゾ)
一本と言いつつ短編4本のオムニバスになっていて、そのうちふたつは初見、ふたつは既見(造語?)でした。

『輪廻TM』

ある寺に棲みついた男たちは、夜な夜な地下室で秘密の実験を繰り返していた。
終に完成したその装置で、彼らは時空を超えて虫になる。
「輪廻の終わりをのぞいてみよう」

これは初見。車椅子のようなその装置というのは、過去や未来の映像を視聴できる一種のタイムマシンだという。一人は開発者、ひとりは助手であるらしい。
そこに佐久間一郎という被験者がやってきて「自分は男ではない。現世での寿命を全うするために来世を見たい」と言う。マシンを使って前世を確認し、生きながらえることに納得する佐久間。
被験者が無事なのに安心し、助手もマシンを使用して前世を見るが、人間ではないと知り落ち込む。
開発者は56億7千万年後を見ようとするが・・・

果たして56億年後は弥勒菩薩の下生があったんでしょうかね? どうなったか、という決定的なオチというか「結果」を見せずに幕ってのがイキウメ的な気がする。「あー!気になる!」ってなるんだけど、それもまたいいよね。
そして佐久間一郎が男の姿なのに「男じゃない」って言うのでトランスジェンダーか、と思ったらそういうことじゃなく。

『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』

投身自殺寸前の女の前に現れた二人組。自殺を止める気はなさそうだ。
「どうせ死ぬなら体と記憶、そして残った寿命を回収したい。どうかご協力を」

これも初見。会社の金を使い込んだあげく、共犯の同僚を自室で殺害してしまったという女。ビルの屋上にやってきた黒ずくめの男ふたりは、死神なのかあの世の使いか不明だが、彼女が寿命を全うしたら来世は女性天皇だと言う。そのために彼女の魂?を殺した同僚・佐久間一郎の体に移し、彼女の体は二人組のうちのひとりが乗り移って寿命を全うさせるという(ややこしい)手段に!

ややこしいけど、佐久間一郎の中身が女性だったのはそーゆーことか!とカタルシス〜な気持ち。
しかし女性天皇、いいじゃん。これから先実現したら面白い。むか〜しは推古天皇とか持統天皇とかいたんだしね。

『許さない十字路』

噂:ごく普通の住宅地の十字路。十字路に接する4軒に起きた悲惨な事件から、いつの間にか「許さない十字路」と呼ばれるようになった。(「片鱗」より)

『片鱗』は2013年に観ている。それのごく一部を切り取ったもの。
ご近所の夕食に招かれた佐久間一郎は、何を話しかけられても何故か「許さないからな」としか言わない。あまりに「許さない」と言い続けるので、ホスト夫妻の夫の方がつい「蘭ちゃんと不倫した」と謝罪するが、佐久間はそのことではないと。しかし夫妻の間に亀裂が入り、今度は妻が「許さないから」と言い続けるのだった・・・

めっちゃホラーだけど、『片鱗』のときはもっと怖かったと思う。この乙プロは割とコミカルなラインナップなのに、この話だけちょっと異色でゾクっとする感じ。
佐久間一郎がここでも出てくるけど、前の二篇との繋がりはなさそう・・・?

『賽の河原で踊りまくる「亡霊」』乙バージョン

賽の河原で働く鬼は、最近腰が悪い。愛用の金棒は重いので、チタン製のゴルフクラブを購入。豪快に亡者の積み石を弾き飛ばす。積んでは崩す、その不毛なゲーム に終わりはあるのか。
「考えるな、感じろ」

これも2012年の『The Library of Lifeまとめ*図書館的人生(上)』で観ているし、つい数日前に丙バージョンも観たしね。
なので筋は判って観てるけどやっぱり面白い。キャストが違うとまた面白さも違う。
そして乙プロではこの話にだけ佐久間一郎が登場しないんだけど、もしかして亡者4人のうち誰かが佐久間一郎なのでは? それとも鬼がもと佐久間だったのかも。『ゴッド〜』で佐久間は殺された訳だし、亡者としてここに来てるって可能性、あるよね。などといろいろ考えちゃった。

あーー、面白かったなあ。
金輪町コレクション、3つのプログラムのうち、この乙プロが「ザ・イキウメ」って感じがしてアタシは一番好きだなあとおもった。いや、それぞれ皆おもしろかったけどね。
やっぱりイキウメは外さないな。
次の本公演『外の道』もすでに観ているわけだけど、むちゃ怖くてむっちゃおもしろかった! コロナ禍で一年延期になった公演だけど、実際去年上演予定だったものとはだいぶ変わったらしい。変わる前の『外の道』がどんなだったのかがすごく気になるわあ。

もしよかったらこちらも→『外の道』


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