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『外の道』 イキウメ

2021年6月6日(日) 13時開演
@シアタートラム
¥6,000

昨年上演予定だったこの作品、チケットを買って楽しみにしていたけれど、例に漏れず中止になった。まるっと一年の延期となったが、しかも結局世の中の状況はまったく好転していないけれど、なんとか開催できてよかった。

《introduction》
同級生の寺泊満と山鳥芽衣は、偶然同じ町に住んでいることを知り、二十数年ぶりの再会を果たす。
しかし二人には盛り上がるような思い出もなかった。
語り合ううちに、お互いに奇妙な問題を抱えていることが分かってくる。
寺泊はある手品師との出会いによって、世界の見え方が変わり、妻が別人のように思えてくる。
新しい目を手に入れたと自負する寺泊は、仕事でも逸脱を繰り返すようになる。
芽衣は品名に「無」と書かれた荷物を受け取ったことで日常が一変する。
無は光の届かない闇として物理的に芽衣の生活を侵食し、芽衣の過去を改変していく。
二人にとって、この世界は秩序を失いつつあった…。

うわーーー、怖かった・・・!
毎回、イキウメの舞台は不思議だったりゾッとしたり、それでいてクスッと笑える部分もあったりする。今回もその総てがあったけど、特に「ゾッとする」感じが強くてアタシのなかのイキウメ体験上、1・2を争う怖さだった。と言ってもアタシがイキウメを観初めてまだ10年だけど。

古い倉庫のような、カフェのような、ガランと大きな部屋。舞台奥は壁面いっぱいの大きな曇りガラスの窓。上手には斜めに傾いだ木製のドアがあり、そこから出演者がひとりひとり入ってきて、無言のまま靴音だけを響かせて椅子に腰掛けていく。このオープニングですでにちょっと不思議怖いんだよね。
例によってアタシの脆弱な脳みそではこの話をキチンと理解はできないんだけど、「正解」というようなものは明示されないんだってことは判った。判ったと、自分では思っている。

なーんてつい、周りくどい言い方をしてしまう。そういう内容だったんだよね。認知というものが危ういというか。量子力学みたい。量子力学がまず解ってないんだけどw(何回説明聞いても???で終わってしまう)

同級生とはいえ特に共有するような思い出もなかったふたり。けれど・・・
政治家の頭の中から見つかったビール瓶の欠片はやはりマスターの仕業で、寺泊は氷を頭に入れられたんだろうか。そのせいで「新しい目」を手に入れ、今までとは世界の見え方が変わったのだろうか。それで妻の美しさに気づき慄いたのか。
几帳面な性質も変わり、宅配の仕事は誤配だらけになってしまう。

妻が浮気をしているというのはただの寺泊の思い込みなのか。
宅配便で「無」を受け取った山鳥は「無」が見えるようになり、部屋が「無」に飲み込まれたりする。(この無に飲み込まれるシーンがおそろしく、劇場中の灯りが消えて真の闇になる。目を閉じても開いても、ただ一面の黒! そこに池谷のぶえさんの声だけが響きわたるのだ)
突如家に現れた見知らぬ少年・三太が「あなたの養子だ」と言い出す。

観ていてテラ(寺泊)の方は、その変化が「テラがおかしくなった」様に感じたけれど、メイ(山鳥)の方は「周囲がおかしくなった」と感じた。実際三太が「気づいたらここにいた」「それ以前の記憶はない」と言ったからだろう。だけど養子縁組の公式な書類はあるし。過去に撮った写真に一緒に写り込んでいる。はたして、「おかしい」のはどちらだろう。

だいたい無は無なんだから「見えるようになる」ってこと自体が不条理だし、自分を17歳だとおもっているメイの母は70代なのに、三太には17歳に見えているらしい。どういう訳だろう。
時折り聞こえる「空鳴り」とはいったい何なのか。怪獣の咆哮としか思えない恐ろしい音(声?)なのに、まるでよくある雷や自然現象ような扱いなのも奇妙。

ワカランづくしで「これが正解」ってものは与えられず、故に落ち着かない気分だけど・・・圧倒的におもしろくてめちゃくちゃ怖くて、役者さんすべての演技が素晴らしくて、観終わった後はものすごい満足感。お客さんの拍手も、いつもより心なしか熱かった気がする。
ご時世なので観劇後に飲むって訳にもいかず、友だちとは軽食を食べて日のあるうちに帰った。本当ならペローニの置いてあるイタリアンバルにでも行きたいところよね。



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