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#78|子どもが大切に思うものを、私も尊ぶ。親と子は別人格。

「ダメ!それ、捨てないで!」

さっさと片づけたい私を、娘(4)が制止する。


-え、捨てちゃダメなの?
「ダメ!それ、娘ちゃんが『作ったやつ』なの!」

-ええっ!?これ、『作ったやつ』なの?
「そうだよ!」


問題になっているのはこれ 。
画像では箱に入っているが、片付けていたときは床一面に散らかっていた「廃材工作の切れ端」だ。

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工作大好き娘。

サランラップやトイレットペーパーの芯、紙皿に紙コップ、大小さまざまな空き箱。いつでも使えるように、道具とともにストックしてある。

この日も保育園から帰ってくるなり、チョキチョキペタペタ。

出来上がった作品を「見てみて~~!」と鑑賞した、その後のことだった。



床に散らばった「切れ端」を、何の疑問も持たずに集め捨てようとする私。「捨てないで、それ『作ったやつ』なの!」と制止する娘。


作った

示唆に富む一言だった。

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大人はいつだって先入観と固定概念で決めつけている

あなたならどう思う?


カップスープの空き箱をチョキチョキ切った後、
床には散らばる、小さな切れ端たち。


十中八九、いやきっと日本中全ての親が「ゴミ」と思うだろう。


ところが娘はその切れ端に意味づけしていた。

作ったもの』なのだという。
自分がハサミで切るという行為をした際に『生み出したものたち』ということなんだろう。


なるほど、そうなのね。
そういう見方は私にはなかったな。
これはあなたにとって大切なものなのね。

ゴミと決めつけて捨てようとしたことを詫び、切れ端たちを材料ボックスに戻した。


拾い切れないくらい小さな切れ端は「これはゴミ」と言って捨てさせてくれた。娘なりに区別しているんだ。

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思春期に親子関係を破綻させないために

前職・学習塾に勤めていた時のこと。
特に中学生の3年間は、勉強だけでなく親子関係についての相談がとても多い。

親の話を聞かない
何を考えているかわからない
会話がない、家で何も話さない

親子関係に手を焼いた挙句、「先生から言ってやってください!」と塾で息巻く母親を何人見てきただろう。

10代前半特有の問題でもあると思う。
親子関係が成熟していく通過点の問題。


私たち塾講師は、親サイドから親子関係についての相談を受けると同時に、子ども本人からも話を聞くことができる。みんな、口を揃えてこういう。

自分の話を全く聞いてくれない

と。


娘との『切れ端』をめぐるやりとりで、そんな中学生たちを思い出した。



人生の経験値を子どもより多く持っている親という生き物は、つい「子どものために」あれこれと世話を焼く。

もちろん、必要な世話も多い。
「親が教えるべきこと」は、重要なものばかりだ。


ただ良かれと思って焼いた世話が、子どもにとっては余計なお世話になることも多い。古今東西、人類あるあるだろう。


親が持つ価値観や正しさの押しつけが程度を過ぎると、ある時点で子どもは親の言うことを聞かなくなる。

子どもからの発信をまともにとりあってくれず
「こうすべき」という価値観の押しつけが多く
コミュニケーションの不成立と自身に対する不理解に不満を抱き

そして最終的に「親に失望する」。
失望するから、言うことを聞かなくなる。

親は慌てて塾に相談する、「先生から話してやってくれませんか」…。



親子といえど、別の人格を持った人間だ。

聞く耳を持ってもらえなかったり、大切にしてもらえなかったり。
そんな経験が積み重なったら信頼できなくなって当然だろう。

反対に自分が大切にしていることを同じように大切にしてもらったり、丁寧に寄り添って話を聞いてくれたりしたら?

信頼が生まれ、あたたかな人間関係が維持できるはずだ。


本質はいたってシンプル。


子どもには子どもの世界がある。
人生経験は私たち大人には及ばないけれど、しかし彼らは「人格」と「何人にも侵されるべきでない価値観世界」を持っている。


人間関係の基本は、お互いに対する信頼感。

であれば、たとえ相手が子どもであろうとも、彼らが大切にしていることは尊重すべきだし、尊重できる親でありたいと思う。


廃材の切れ端を「ゴミ」と認識し、捨てたいのは私の都合だ(まあ、捨てたいけれど)。

制作者である娘が「それは作ったものだ」と主張するなら、それは大切な作品なのだ。私が勝手に作品を捨てられる理由はない。


娘が大切にするものを、大切にする
親子の信頼関係は、こうした地道なことの積み重ねで強くもなり、壊れもするのかもしれないなと思う。



こうして我が家は、わけのわからないものが今日も溜まっていく。

そんなのも娘が小さいうちだけだろうと思いつつ、子ども部屋の大掃除は毎年毎年、先延ばしだ。

まあ、いいか。


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