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#3【世界を風靡するHIP-HOP。ルーツと世界史。ガーナ🇬🇭にその秘密がある。】

音楽ファンのみなさん、こんにちは。

はじめまして。25歳から海外でプロドラマーとして活動し、世界の5つ星ホテルやJazz/Bluesフェスティバルでメインドラマーを務め、🇺🇸グラミー賞受賞アーティストと共演してきたMiyukiです。

皆さん、世界の音楽ジャンルが"リズムパターン"の違いで分かれていることをご存知でしたか? 音階の違いだけでなく、多くの音楽はリズムパターンの違いによってジャンルが分かれているのです。
前回記事:その"リズムの取り方"が日本の音楽とK-POPの大きな違い

ガーナでの滞在経験を振り返りながら、今日は"ジャズ、ヒップホップのルーツ"について書いていきましょう。今日もディープな内容になります(笑)

▼音楽記事の振り返り
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これまでの記事では、日本の音楽とK-POPの違いを"音階"、"リズム"、"音質"の3つの観点から分析してきました。"リズム"の点では、日本人は4ビート、欧米人は8ビートを音楽のルーツに持っており、母国語(日本語/英語)のリズムが音楽に大きく関わっていることが分かりました。

日本語や韓国語は上から下に踏みつけるような4ビートのリズム(田植えや和太鼓のリズム)があり、英語は下から上に跳ね上がるような8ビートのリズム(馬車の足音のような)があります。

このように"言語の持つリズム"が日本語と英語で異なるため、洋楽の8ビートに日本語歌詞を乗せると、変なところで歌詞が切れたり、日本語の高低アクセントがずれて歌詞が聞き取りにくくなります。一方で、BTSなどのK-POPアーティストは"世界(欧米)の音楽と交わり、ハイブリッド・ミュージック"を生み出すことで世界中にファンを作っているのです。

▼現代音楽のリズムは大きく4種類
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ちなみに、現代音楽のリズムには大きく分けて4つのビートがあります。

4拍子のリズム(4ビート)→日本語、韓国語
8拍子のリズム(8ビート)→英語
3拍子のリズム(シャッフルビート、スィング等)
16拍子のリズム(16ビート)


ここで勘のいい方は「3ビートのリズムと関わりがある言語は?」「16ビートのリズムと関わりがある言語は?」と思ったでしょう。今日はこの"3ビートのリズム"と、"ジャズ、ヒップホップのルーツ"の深い関係について解説していきます。

▼3拍子のビートを持つジャズ、HIPHOP
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ジャズやヒップホップは"3拍子のビートを持つリズム"を持つ音楽ジャンルなのです。これらはブルース、ファンクなどと共に、アフリカ人の方々が生み出した"アフリカ系音楽"で、ルーツはアフリカにあります。

※「3拍子」はワルツやポップ・ミュージックにたくさんありますが、ここでは「3拍子の"ビート"を持つジャンル」と定義します!

▼世界史と音楽<奴隷貿易の歴史>
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ただし注意が必要なのは、ブルース、ジャズ、ヒップホップなどの発祥地はアフリカではなく、"アメリカ"なのです。主に15世紀後半から始まった欧州の奴隷貿易は、数世紀にわたって続き、主にアフリカからアメリカ大陸への人々の輸送が行われました。奴隷貿易のピークは18世紀に達し、多くのアフリカ人が強制的にアメリカ大陸へ運ばれ、厳しい労働を強いられていました。

アフリカの中でもガーナから多くの人々が連行されたそうです。オバマ大統領の祖先の地でもあるガーナ。その彼らが生み出した音楽が、ブルース、ジャズ、ヒップホップなどのアフリカ人音楽につながっていきます。

以下は専門的な内容になりますが、ガーナの音楽文化について私が現地で得た経験を踏まえてお話しします。

▼「アメリカ奴隷貿易の歴史」(※歴史が苦手な方は読み飛ばしOK)

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遡ること15世紀。
ガーナの海岸周辺で「金」が発掘されたのを期に、ガーナは「黄金海岸」と呼ばれていました。当時世界で力を持っていたポルトガルは、ガーナを「貿易拠点」として海岸に「強固な城塞」を設けたのです。

ポルトガル、オランダ、スウェーデンが黄金の権益をめぐって争ったのちに、イギリスが1664年にガーナを植民地化。(ガーナの周辺はフランス植民地)

イギリスは、ポルトガルが貿易拠点として建設した城塞を、西アフリカ最大の「奴隷収容*城塞」として利用し、奴隷貿易を盛んに行ないました。
 (*城塞=見た目はお城で、中は劣悪な奴隷収容施設。)

                                     出典:Miyuki


ガーナをはじめとする西アフリカの国々からたくさんの奴隷がここに集められました。ガーナは過去に内戦が一度もない平和な国で、国民は、性格が温厚で、優しく、気が長い、相手の空気を読む人たちでした。

気性の荒い人が多いアフリカでは、珍しい気質の民族だと感じます。そして、彼らは独自の文化を持っていました。

▼ガーナの音楽、言語、子守唄
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そもそもアフリカには多くの少数民族が住み、それぞれが言語と文化を持っていました。ガーナも同様で、細かく民族が分かれていますが、イギリスの植民地時代から公用語は英語です。

しかし彼らの英語には独特のアクセントがあり、"3拍子ビートのリズム"のようなハネた感じがします。その他にも"ツウィー語"という現地の言語があり、独特のリズムをもっています。(私は趣味で習得しました!)

そしてガーナの国民的音楽"ハイライフ"は、大編成のジャズのようなものなのですが、しっかりとした"3拍子ビートのリズム"を基調にしています。さらに驚くべきことに、ガーナの子守唄から漁業の歌に至るまで、どれも3拍子ビートのリズムなのです。

↓ よかったら、実際に音源を聴いてみてください!

◆ガーナの漁業の歌


◆ガーナの生活の歌

子守唄は0:55-0:59あたり。お母さんが赤ちゃんの背中を叩くリズムが1,2,3、1,2,3 になっています!
→ガーナの方々の独特の英語リズムにも注目

◆ガーナ発祥の音楽「ハイライフ」



つまり、アメリカで生まれたブルース、ジャズ、ヒップホップなどの"アフリカ人音楽"は、西アフリカ・ガーナの"3拍子ビートのリズム文化"に深くルーツを持っていることがわかります。日本人には馴染みのないこのリズムは、奴隷としてアメリカに渡った彼らの音楽文化から生まれたのです。

音楽を深く理解するには、世界史、言語、民俗学なども併せて学ぶと、より一層楽しめます

次は16ビートのルーツも探ってみたいと思います。
音楽を通して多様な文化に触れられることは、素晴らしいですよね!

それでは、良い一日を!オチナー。
ツウィー語でまた明日。

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