文字を持たなかった昭和 続・帰省余話33~まとめ「長寿の道」

 昭和の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さん(母)の来し方を軸にして庶民の暮らしぶりを綴ってきた。

 今度は、9月末から10月初旬の帰省の際のあれこれを記録しておくことにして、印象に残ったことのまとめやエピソードに続き、ミヨ子さんとのお出かけを振り返った。離島住まいのミヨ子さんの末妹も来てくれて楽しい時間を過ごした一方、宿泊先でトイレ方面のトラブルがあったり、脚力低下が進んだりと、ミヨ子さん自身は93歳――正確にはもうひとつ上――相応の変化というか衰えの途上にあることを、再確認する時間でもあった。デイサービスの皆さんの温かさやプロとしてのスキルの一端も垣間見た。

 もっとも需要なのは、日々を支えてくれるミヨ子さんにとってのお嫁さんである義姉の存在だろう。この人なしでは、ミヨ子さんのお世話はもちろん家そのものが回らない。家族の一人がそこまでのキーパーソンになってしまうことの是非はともかく、日本の家庭の多くは女性、それもお嫁さんの立場の人に頼っているのが現状だろうとも思う。

 ともあれ、たくさんの人に支えられてミヨ子さんは「長寿の道」を歩き続けている。その道がどこまで続くのか誰にもわからない。歩みはこの先もっとゆっくりに、あるいは覚束なくなるだろうし、いつかは息切れするだろう。娘としては、この道をできるだけ楽しく、穏やかに歩いていってほしいと願うばかりだ。

※前回の帰省(2023年2月)については「帰省余話」127

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