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テヘランでの甘いひと時。ケーキにコーヒー、暮らしは日本と変わらない?

.سلام

「アジザン。アジゼマノ〜」

(ああ、愛おしい、私の愛おしい人よ。)

父は昔から私をそう呼ぶんだ。他の誰でもない特別な感じがして、呼ばれるとお花畑の中にいる気分になれるこの言葉が大好きだった。そう、大好きだった。


街を歩いていると至る所にアイス屋がある。どこのお店もだいたい10種類以上の味のアイスが並んでいてそのカラフルさと店内の煌びやかな装飾に心からワックワクしてしまう。

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ここイランならではのピスタチオ味やクルミを使ったアイスは定番で、皆んなダブルコーンのうちひとつの味はどちらかの味を選ぶ。フラッと見かけたお店に入っても、味で外れることはないので安心だよ。

冒険心のない私は、いつも決まってダークチョコと酸味のあるベリーのアイスの組み合わせを選ぶ。

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サーティワンのロッキーロード。ダークチョコとマシュマロの食感がたまらないあの味には時たま想いを馳せる程度で、イランのアイスは全く負けていないんだ。それでいて、値段は大体60〜80円だ。食べないわけにはいられないよね。

前に並んでいた男性が先に頼む。

「アジザン。注文いいかい?」


イランでは週末になると親戚や友人を招き、食事に紅茶にと日付が変わるまで語り尽くす。そんな温かくて最高な時間を迎えるためには手土産が必須だ。急いでケーキ屋さんに立ち寄る。

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これもまた種類豊富な可愛らしいスイーツの数々にニヤニヤしてしまうよ。数年前まではただ甘いだけの印象だったが、ここ最近は何を頼んでも見た目と味のクオリティが高く、手が止まらない。

頼み方が独特で、個数を伝えるより、「〇〇キロ分」といったように、キロ単位でスイーツを注文をする人の方が多い。大体1キロ頼むが、それでも300円程度。毎度手土産を購入しに来ても金銭的な負担は特にない。

一緒に来ていた友人が代わりに頼んでくれた。

「アジザン。上の段を1キロ分頂戴。」


テヘランではカフェの数が以前にも増して多くなったので、ちょっとした休憩にカフェを利用しやすくなったんだ。外装・内装ともにデザインがお洒落でいて、かつどこのお店でも提供されるコーヒーやスイーツのレベルが格段に高い。

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ここは自宅からタクシーで10分程の所にあるカフェで、ニューヨークを彷彿させる内装が魅力的。ケーキにコーヒー、これで400円程度。イランのカフェにしては割高な方かもしれないが、良いことがあった日も悪いことがあった日もここに来る。そんな素敵な場所を見つけちゃった。


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父がご馳走してくれた。

「アジザン。注文いいかい?」


今日は預言者ムハンマドの生誕日なので祝日なんだ。用事を済ませて真っ直ぐ家に帰るなんて味気ないのでこれからまたどこかに寄ってみる。

街中で聞こえてくる「アジザン、アジザン....」

かつて私をお花畑に連れ出したこの特別な言葉は、どうやら誰にでも使うことができる汎用性の高い呼び名だったようだ。

知ってしまった現実はなんだか苦かったが、テヘランでのひと時はいつでも甘かった。

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