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連続小説「東京恋物語」

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青年タクシードライバーが出会った女性は、なんと超有名な女優だった。偶然の出逢いが巻き起こす恋の行方は・・・。恋は心のオアシス。そして無敵!
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#小説

「東京恋物語」第一話:意外な乗客

【あらすじ】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 三年前、都内の有名私立大学を卒業した小嶋祐太郎は、父親である正一郎が経営するメトロキャブに入社し、都内でタクシードライバーをしている。ある日、祐太郎は東京駅付近で、手を上げた女性客を車に乗せるが、彼女は、テレビで見ない日がないほど有名な女優、新藤奈々子だった。程なく、車内のテレビ画面に奈々子が失踪したというニュースが流れ始めるが、その裏側には、IT起業家として有名な宮野浩介の存在があることを奈々子から聞かさ

「東京恋物語」第二話:迷宮の中へ

爽やかな風とともに、桜の花びらが路面に舞う午後の青山通り。 赤坂郵便局を右折し、六本木交差点へ向かう白いベンツは、ゆっくりとスピードを落とし、左に見えるオフィスビルの玄関口で停まった。そこには、宮野浩介が経営するIT会社、エムケーフォースが入居している。 専属運転手の坂本憲次は、車を降りると手なれた動きで、後部座席のドアを開けた。そして間もなく、待っていたかのように、白いピンストライプが印象的な濃紺のスーツを着こなした細身の男性が、携帯電話を耳にあてながら現れた。宮野である。

「東京恋物語」第三話:謎多き恋と影

都心から西へ世田谷通りを川崎方面に進むと、閑静な住宅街が広がる中に狛江市役所がある。市役所の門をくぐった先には、早朝にもかかわらず、すでに多くの機材や衣装、小道具を積んだトラック、そしてマイクロバスが数台停車していた。 ロケ用にフロアを貸し切っている市役所二階の執務エリアでは、多くのスタッフが慣れた手つきでデスク周りやロッカーなどを、持参した書類や小物、ポスターなどを使い、リアルな撮影現場へと作り上げている。 「おはようございます」 奈々子が、撮影カメラをチェックしている監督

「東京恋物語」第四話:未知への船出

六本木ヒルズにあるFMラジオ局。 夕方の番組にゲストで生出演していた奈々子は、その仕事を終えると、一階エントランス前に待機していた事務所のワゴン車に乗り、二番町の自宅へと向かっていた。 そして、奈々子を乗せたワゴン車は、六本木通りを溜池へと走っている。 「ごめんなさい、ちょっと行き先を虎ノ門に変更して下さい」 腕時計の時間が午後六時半を示しているのを確かめると、奈々子は運転手にそう告げた。一か月ほど前から、奈々子は週に一、二度のペースで、虎ノ門にある総合病院を訪問するようにし

「東京恋物語」第五話:動き出す歯車

四月中旬に奈々子と出逢い、これからのミッションともいえる行動計画を練った、あの甘美でもあり、男として覚悟を決めた日から、すでに二週間ほどが過ぎていた。そんな四月も末にさしかかった平日の午後、いつも通りの日常を過ごしていた祐太郎は、自分の乗務する車を回送表示にして、西早稲田にある本社パーキングビルの六階に車を停めた。そして、遅い昼食をとるため、休憩室へと入って行った。 休憩室の奥にあるテレビには、お決まりのように多くのCMが流れている。 「すみません、ちょっとチャンネルを変えて

「東京恋物語」第六話:ホストへの道

昨日、白いベンツの追跡をバスタ新宿で振り切り、その後、奈々子を自分のワンルームマンションに送り届けた祐太郎は、そのままタクシードライバーとして最後となる業務を続けて、午前四時半に終了した。これからは、半年間の休職に入り、学生時代から住む大久保の小さな部屋で、短い間だが奈々子と暮らすことになる。 祐太郎は、午前六時に最後の営業精算報告を終えた後、その三十分後には自宅ワンルームマンションの部屋の前に立っていた。そして、入口ドアにある呼鈴ボタンを押そうとしたが、すぐにその手を止めて

「東京恋物語」第七話:秘密の錬金術

午後六時。 祐太郎は、ホストクラブ・ゼウスのカウンターにある機械にタイムカード差し込むと、内勤のトシヤから、今日もトイレ掃除から仕事を始めるように指示された。 「ユウ、昨日と全然イメージ変わったじゃん。それじゃあ、初回の女の子が来たら、ユウには多めに接客チャンスあげるから、飲み直しで指名入るように頑張れよ」 飲み直しとは、格安料金で入った女性客が、制限時間終了後も、ホストを指名して飲み続けることを意味する。つけ回し担当であるトシヤは、そう言うと、祐太郎の背中を軽く叩いた。 軽

「東京恋物語」第八話:見えない傷跡

エスプリグループの旗艦店であるアポロンで、初出勤というデビュー当日を無事にを終えた祐太郎は、担当する数人の女性からアフターへと誘いを受けていた。しかし、祐太郎は、それらの誘いを程よく断って、橘新之助のグループが高級焼肉店でアフターをするという誘いを選んだのだった。それはもちろん、情報収集のためである。そして、小一時間ほど食事をして大久保の自宅へ戻った時、時計の針は既に午前二時をまわっていた。 ほとんどシラフの状態だった祐太郎は、奈々子がすでに眠っていることを考えて自宅のドアを

「東京恋物語」第九話:落日への予感

エスプリグループ総代表である美月との会話で、一週間後にはホストを辞める話しになった翌朝九時過ぎ、祐太郎と奈々子は、ふたり向き合うように狭いセミダブルベッドの中で熟睡していた。 「ブーブーブー」 携帯電話の着信を告げるバイブレーション音で目を覚ました祐太郎は、奈々子を気遣って、ゆっくりベッドから起き上るとローテーブルに手を延ばした。 携帯電話の着信表示は、メトロキャブの相談役である長谷川となっている。 「はい、祐太郎です。五郎さん、何かありました?」 祐太郎は、寝起きと悟られな

「東京恋物語」第十話:恋は無敵!

七月に入ると、テレビのワイドショーではエムケーフォースの脱税疑惑が実名で報道されるという状況にまでなっていた。そして、東西証券の河波が言っていたとおり、国税局による査察も近いのではないかと、番組の中で発言する経済評論家やコメンテーターもいる。そんな状況下、エムケーフォース代表取締役である宮野は、ホストである橘新之助と橘を指名する常連客の真由子を引き連れて、夜の新宿歌舞伎町を歩いていた。 「宮野さん、今日はいつもと違って珍しく酔ってない?」 真由子が心配そうに、ふらつきながら歩

あとがき(東京恋物語)

合計10話に及ぶ連続小説をアップさせていただきました。読まれた方はお分かりのとおり、当小説の書き出し場面は、千代田区エリアを舞台にしています。というのも昨年、ちよだ文学賞という公募に向けて書き始めた小説だったからです。しかし、締め切りに間に合いそうもない状況から結果的に応募することなく、ここで掲載することにした次第です。 「恋」は魅力的で素敵な言葉。 人それぞれに、いろんな「恋」のカタチがあるからこそ、小説やドラマなどで感動的なストーリーが生まれるのでしょうね。この小説に