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日々の生活にちょっと疲れたので「大路池」へ散歩に行ってきました。

伊豆諸島最大の湖「大路池」

都会の雑踏、例えば、休日の渋谷のスクランブル交差点や新宿駅の東口なんかにいたとして、周りは建物だし、聞こえてくるものは自動車や電車の走る音だったり、人の声だったり。たまにカラスは鳴いていますが。ほとんどが“人間がつくりだした世界”で、他人の声は(中には、下世話に興味深い話も耳にするものの)かえってわずらわしさを感じてしまったりします。
多くの人や人工物に囲まれていること。それは、決して絶対に悪いものではないし、若い頃は、そういった世界に浸ることにも憧れました。
でも、ずっと、それが続くのもね・・。
 
三宅島には大路池(たいろいけ)と呼ばれる湖があります。約2,500年前の噴火によってできた噴火口によるものです。
周囲2.1kmほど、伊豆諸島最大の湖で、島の南側、静かな森の中にあります。
静かな・・そう書きましたが、確かに、人工の音は聞こえてきません。大路池周辺は「日本一のさえずりの小径」と呼ばれるほど、野鳥の声が至る所から聞こえてくる場所なのです。
三宅島は多くの野鳥が多く生息する「バードアイランド」。多くの野鳥好きの方が来島されますが、特に人気のスポットになっています。
 
また、大路池に生息する「大路藻」という藻が、三宅村の天然記念物になっています。

大路池へ行ってみよう

都道からは、この看板を目印に大路池へつながる村道へと入っていきます。

バスで行くなら「大路池」バス停を下車。
すぐ近くには、「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」があります。特色ある三宅島の自然を将来へと受け継ぎ、自然と触れ合う拠点として開設された施設です。大路池をはじめとした三宅島の自然を学ぶことができます。今回は、ここから大路池へ歩いていきましょう。

アカコッコ館の横の道を抜けて下っていくと、先ほどの村道に合流。
目の前に標識があります。広い道を進んでいくと北側桟橋、細い道を下っていくと南側桟橋へ続いていきます。

北側桟橋へ

ここから、湖畔までゆっくりと下る砂利道をのんびりと進んでいきます。この道を通って湖畔の駐車場まで車で行くこともできますが、それほど道は広くないので注意です。
擁壁のコケや、道端の花も楽しみましょう。ピンク色のアジサイを発見。
アジサイってそれぞれ色が異なるので見ていて楽しいですよね。

しばらく歩いていくと、視界が開け、湖が見渡せる場所に着きました。撮影でよく使われる場所です。みんなが撮影するお約束のスポットって、撮影者の技量を問われる気が・・(汗)ここで一枚。うまく撮れたかな?

途中で、また、分岐があります。

ここはぜひ、「迷子椎」方面へ。
さらに進んでいくと、ひときわ立派な巨木が!

迷子椎

噴火を司る神が宿る木ともいわれ、みだりに近づくことが禁じられていた一方、森の中で迷子になったときは、この迷子椎を頼りにしたらしいです。
最近はカシノナガキクイムシという害虫によるダメージも受けてしまいましたが、どうですか?この堂々とした姿。三宅島のシンボルといってもいい巨木です!
 
では、さらに進んでいきましょう。
 
森の中では、こんな珍しい木の姿にも出会えます。

そしていよいよ、北側桟橋へ到着。南側桟橋との分岐から歩いて15分くらいでしょうか?桟橋のすぐ近くには駐車場とトイレがあります。
桟橋からは木々の緑と湖ですてきな景色を楽しめます。

チッチッ、トュルルル、ホーホケッ、フウゥー・・・360度あらゆるところからの、たくさんの鳥のさえずり。というか、鳥のさえずりしか聞こえません!
この時期、周辺の森にはあのアカコッコをはじめ、イイジマムシクイ、カラスバト、シチトウメジロ、ミヤケコゲラなどの鳥がいます。湖面にはサギの仲間を見かけることも。
風がそよいで、時々湖面を魚が跳ねます。静寂ではない、静寂。
人間は、一人しかいない、別世界。
さきほど紹介したアジサイのほか、小さな花があちらこちらに咲いています。トンボも発見。

あずまやがあるので、湖を眺めながらしばし休憩。

寄り道して遊歩道へ

北側桟橋からは、遊歩道も整備されています。こちらに行ってみましょう。木漏れ日が気持ち良く注ぎ、緑に囲まれた道を散歩できます。平坦なのでラクチンです。大きな木だけではなく、芽をはやしたばかりの小さな木を見つけたり、木や石にコケが生えていたり。いろいろな植物の姿を見ることができます。
鳥や植物の名前を多く知っていれば、森の散策ももっと楽しいのかも。知識の無さを反省。

そういえば、マスクをつけながら歩いていました。ちょっとマスクを外して水分補給。息を吸い込んだら、あ、森の匂い。やっぱり、マスクのいらない生活に戻りたい。
 
大路池周辺には、木叢の椎(こむらのしい)や補陀落(ふだらくのしい)となづけられた巨木もあり、力強い自然のエネルギーを身近に感じることができます。写真は裏側から見た補陀落の椎。

南側桟橋

さて、最初の南側桟橋との分岐点に戻りました。ここから階段状の細い道を降りていき南側桟橋に向かいます。こちらは湖畔まで、1か所大木をくぐって進んで5分もかからないくらいです。
途中には大路池のご神木ともいわれる巨木「南岸の大椎」を見ることができます。
南側桟橋は、あずまやなどはありませんが、背後に森が迫り、より静かな雰囲気に浸ることができます。個人的には南側桟橋のほうが好み。

太宰治も来ていた!

ところで、この大路池、作家の太宰治も昭和12年に訪問しています。
 
その頃の太宰は前年に芥川賞に落選、パビナール(当時の鎮痛剤)中毒治療のために入院、長年連れ添っていた内縁の女性といろいろあって心中を図るも未遂に終わり、その女性とも別れ・・執筆活動も盛んではなかった時期のようです。
そんな彼を心配した師匠格の井伏鱒二が、予定していた三宅島旅行に誘ったのがいきさつとのこと。
 
一行が訪問していたのは、ちょうど5月。彼もこの季節のこのような景色を見たのでしょうね。
それから一年後、太宰は本格的に執筆活動を再開します。
 
「小さなアルバム」(昭和17年)という作品の中に、主人公が訪問客に(大路池で写されたという)写真を見せながら語る場面が出てきます。
 
北側桟橋には太宰の訪問を解説する案内看板が設置されていますよ!

6月19日は「桜桃忌」。ダザイ好きの皆さん、いつか、大路池にも来てみてくださいね!
 
太宰治は、作品にあるとおり、淋しい気持ちで湖を眺めていたかもしれませんが、鳥の鳴き声しか聞こえない湖畔で、考え事を巡らせたり、気持ちを休めるのもいいかもしれません。悩み事は大路池に聞け!?
 
こんな湖が生活の身近にある島暮らしの贅沢。
この先、きっと、何度となく訪れるんだろうと思います。
 
毎日の生活からちょっとだけ逃れ、森の中でゆっくりと疲れをとりたい。そんなあなたに大路池、おススメです。

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