日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(14) 2章 「O教授の“丸写し“発覚する」3


         10 11 12 13


 自分の書いた文章をすべて暗記することは私にはできない。しかし、他人の文章のなかに自分が書いたものがあれば気がつく。文章を書くという作業は考える作業だから、思考の過程を喚起するのかもしれない。私は、過去に自分が書いた記事のスクラップを調べてみた。やはりそうだ。O教授が引用した「講演レジメ」は、2012年4月発行の雑誌『選択』に私が無署名で書いた次の記事と瓜二つだった。

「10年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている」

『選択』2012年4月 三宅著


 あえて違いを探すなら、『選択』記事の「へ消えている」がO教授の講演要旨では「に行く」となっている。それくらいで、あとは完全に一致している。「盗用・剽窃」を否定する証拠どころではない。「証拠」にもまた別の「盗用・剽窃」があるではないか。
 O教授の回答には、盗用・剽窃を否定する根拠として、別の「証拠」も示されていた。私との共著『日本の奨学金はこれでいいのか』の大内氏執筆部分(1章)の引用だ。

「2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達します。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行っています。」

『日本の奨学金はこれでいいのか!』第1章 O教授

 これも先の「講演レジメ」とほぼ同じ内容である。すぐにO教授が引用している『日本の奨学金はこれでいいのか!』の該当箇所を、その前後を含めて読んでみた。

ここから先は

4,349字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?