日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき――プロローグ T大学総長の疑惑の合金事件 1


 2015年6月の休日、私は「週刊K曜日」編集部を訪れた。
「大学の研究不正に興味はありませんか」
 数日前に編集部からそんな企画提案が電話であった。
「T大学総長の研究に不正の疑いが浮上した。教員有志が厳しく追及していたところ、名誉毀損で訴えられてしまった。一審二審で敗訴、最高裁に上告中だ。ぜひ取り上げてほしい。そんな話が大学関係者からきている。そんな話ですがご興味ありますか」
 論文の不正というのは手がけたことがない。面白そうだった。

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