日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(9) 1章 「奨学金問題対策全国会議」入会拒否事件 3



       

 私は別の質問をすることにした。
「5条4項を適用した後、たとえば支払督促(裁判)をした。その後連絡がついて、明らかに支払能力がないことがわかった。支払猶予制度を申請すれば適用できる状態だとわかった。こういう場合、5条4項を撤回することは制度上可能ですか」。
「それはいま回答できないですね」
 日本学生支援機構の広報課員はそう答えた。私は質問を重ねる。
「わからないまま運用されているんですか」
「その細かい個別具体的な話はできない」
 広報課員の語調が頑なになってきた。
「即答できない?」 
「部署が違うので確認したい」
「すぐ答えられないんですね」
「...」
 言葉を濁す課員に私は不誠実さを覚えた。支払能力不問で「一括請求」を行い、支払能力がないことがわかってもなおそれを撤回しない回収行為の持つ矛盾の大きさについて、あらためて説明をした。
「請求されている人たちは待ったなしなんですがね。残元金何百万円に対して日々年利10%、4月から5%の延滞金がついている。年間何十万円。早く和解しなければどんどん増えています」
「ええ」
「そこで、もし支払能力がないということがわかれば元に戻せますよとなればすぐに対応できるじゃないですか。でも今のお話だと『わからない』と」
 返還猶予の適用について口を濁していた課員は、まるで言い訳をするように分割和解の話をはじめた。

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