日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(7) 1章 「奨学金問題対策全国会議」入会拒否事件 1
大内裕和教授と面識をはじめてもったのは、T大学の「研究不正事件」の取材をはじめる約2年前、2013年3月のことだ。当時私は彼の名前を知らなかった。「奨学金問題対策全国会議」という市民団体がつくられ、私は入会した。この会の代表が大内氏だった。全国会議の母体は「クレサラ対協」(「クレジットサラ金問題対策協議会」=後に「全国クレサラ・生活再建問題対策協議会」と名称変更)という多重債務問題に取り組む法律家や自助グループの団体だ。ヤミ金融やサラ金問題の取材を通じて、私は2003年ごろからつきあいがある。武富士に訴えられた際には力強い支援を得た。奨学金問題対策全国会議の設立もクレサラ対協の活動の一環だった。
サラ金問題はグレーゾーンの撤廃で大きな「勝利」を得たが、次は公的な組織がサラ金のように牙をむいてくるのではないかとの予感がした。そこで「奨学金問題」※の取材をはじめ、この予感が当っているとの感触を得た。いくつか記事を書き、2010年に刊行した拙著『債鬼は眠らず サラ金崩壊時代の収奪産業レポート』(同時代社)という本に収録した。全国会議の関係者から直接入会を求められたかどうかは記憶が定かではないが、すくなくとも入会を期待されており、入会するのが当然視されていたことはまちがいない。
なお、後になって全国会議と私は裁判を争うことになるが、そこで全国会議は「三宅は自分から勝手に入ってきた。勧誘したことはない」という趣旨のことを主張する。
※「奨学金」は本来無償のものを意味し、貸しつけるものは「学生ローン」というべきだとの考えから、後者を意味するときは、カギかっこをつけて「奨学金」または奨学金ローンと表記する。奨学金ローンの語源については後述する。
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