日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(11) 1章 「奨学金問題対策全国会議」入会拒否事件 5

         10 12

 クレサラ対協のメーリングリストを通じて一冊の資料集が流れてきたのは2019年の夏のことだった。資料集の中に奨学金問題対策全国会議の報告書が入っていた。40頁もある本格的なものだ。ざっと目を通した私は、「一括請求」の文字を見つけ、思わず読み入った。

 違法な繰り上げ一括請求
 機構の貸与型奨学金は、毎月又は毎年などの割賦金として返済をするが、返済が滞ると、約定の返済期日が将来の割賦金についても一括で請求されることがある。ただでさえ返済が困難であるのに、将来分も一括で請求され、これに延滞金を課されれば、返しても返しても、返済金は延滞金に吸収され、益々負債から逃れることができなくなる。 
 実は、このいわゆる「この繰り上げ一括請求」については、政令5条4項が次のように定めている。
「学資金の貸与を受けた者が、支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは、(中略)その者は、機構の請求に基づき、その指定する日までに返還未済額の全部を返還しなければならない。」 
 つまり、制度上は、このようにごく限られた場合にのみ繰り上げ一括請求が許されることになっている。
 しかし、実際には、明らかに支払能力のない人や著しく支払いを怠ったとはいえない人に対しても、機構は繰り上げ一括請求をしている。これについて機構は、連絡もなく救済制度の申請もしない者は、支払能力があると認識せざるを得ない旨説明するが、乱暴というほかない。

ここから先は

2,872字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?