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脊椎を理解する④腰椎の安定性を高める「腹横筋」を呼吸・筋連結の観点でアプローチする方法

脊椎のことをがっちり学び直そうという企画。四回目である今回は、腰椎について考えていきます。とはいえ、今回は腰椎という骨そのものについて扱うわけではありません。腰椎も含めて体幹全体を安定させる筋肉として紹介されることが多い、「腹横筋」をテーマとしたお話です。

腹横筋はコルセットじゃない?

腹横筋の起始部は非常に幅広く、第6~12肋軟骨の前面、胸腰筋膜、腸骨稜の内唇、鼠径靭帯の外側部とされています(停止部は腹直筋鞘。腹直筋鞘は腹直筋を包む扁平な腱膜で、外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の停止腱膜が正中線近くで癒合することで形成されています)。

よく腹横筋は「コルセット状に体幹部を覆っている」と表現されることが多いです。決して間違った説明でもないのですが、もっと正確にいうと、腹横筋は白線部と脊柱起立筋を境界線として、「右腹横筋」と「左腹横筋」とで左右に分けられる筋肉で、白線や剣状突起、恥骨結合、胸腰筋膜の深葉などに付着して、コアのかなり広い範囲を支えるインナーユニットとして機能しているのです。

また、腹横筋は上部・中部・下部に分けることもできます。全体としてコアスタビリティを高めたり、内臓を保護したりする役割は共通しています。その中で、上部は胸郭の安定性、下部は骨盤の安定性に関わっており、腰椎の安定性に寄与しているのは中部であると言われることが多いです。

体幹の回旋動作についても、作用する部位が若干異なります。具体的に言ううと、腹横筋上部は体幹の反対回旋で筋活動が高まりやすく、中部・下部は同側回旋で筋活動が高まりやすいです。体幹を右回旋すると、左腹横筋の上部と右腹横筋の中部・下部が活性化されるということですね。ちなみに、腹横筋のトレーニングの代表格であるドローインは、腹横筋の中部・下部を特に活性化できます。

ドローインをやりすぎると仙腸関節痛・腰痛になるのはホント?

腹横筋のトレーニングとして取り上げられるドローインを、クライアントへの宿題として課すトレーナーは非常に多いです。しかし、一説には「ドローインをやりすぎると、仙腸関節痛や腰痛を招きやすい」と言われています。これは本当なのでしょうか?

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