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リンクの墓

彼女の名はたしかゼルダ。

金髪の太陽のような。野に咲く黄色い花のような。

歌声は可愛く、その姿と声で人の心を癒す存在だった。

それが彼女を縛り付けた?

しかし彼女は

ちょっと目を離したすきに「あたしはこんな狭い所じゃ嫌なの。自由に飛び立ちたいの。」といって飛び出していってしまった。

鉄格子の中残されたリンク。

洗礼された水色の容姿。時折見せる油断した仕草。彼は彼で魅力的だった。

ゼルダのいなくなったあとは嘆きの歌を歌っていたとかいないとか。

陳腐な汚ない生物に毎日覗かれ継ぎ足される

エサを喰らうしかない毎日。

いつしか陳腐な生き物はゼルダのように可愛く鳴かないリンクに興味を示さなくなった。

陳腐な生き物は残酷な子供。

リンクは喉が乾いた。

今日は水がない。

次の日になっても水がない。

残酷な子供は彼を見向きもしなかった。

玄関を開けるたびに金木犀のいい匂いがした。

子供の顔が少し和らぐ。

でもこちらを見ようとはしない。

ドックフードを喰らう子供。それは犬の食べ物じゃないのかい?

犬がどんなものかもわからないけれど。

産まれてこのかた、鉄格子の中のリンク。

羽ばたいていったゼルダに想いを馳せていたとかいないとか。

そんなことを考えてるうちにリンクは息絶えた。

水がなかったから。

残酷は子供。

興味のないものには見向きもしない。

ごめんね、あたしも生きるのに精一杯だったから。

募る罪悪感。それでも子供は子供。

自分の食べたアイスの棒に「リンクの墓」と油性マジックで書いたよね。

そして大好きな金木犀の木の下に埋めたの。

ごめんね、リンク。

あたしがもっと早くに気づいてあげられたら

羽ばたいていったゼルダは自由に水を飲んでるかしら?

アイスの棒の「リンクの墓」

ランドセルを背負って走るたびに香る金木犀。

今日も生きたくないけど生きなきゃならない。

残酷な子供の過ち。募る罪悪感。

ゼルダは自由な黄色い小鳥。

リンクは水色の素敵な小鳥。

どんなにちっちゃくたって命は命なんだよ。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。



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