義肢のヒルコ 第36話

「俺は悪神だったヒルコだ。ヒルコは悪神でありながら善神として転生することができる存在だ。俺は、そのヒルコの力を受け継いでいる」

「ヒルコの……力……?」

「ヒルコは、あらゆるモノを殺す能力を持っている。それは悪神であろうとも殺せる能力だ。だが、それだけではなく、ヒルコは善神になることもできる。善神になったヒルコは、すべての神を殺し、神を滅ぼすことのできる能力を手に入れる」

「神を……殺す?」

「俺は悪神ヒルコであると同時に善神ヒルコでもある。悪神ヒルコの能力で神を滅ぼし、善神ヒルコの力で神の敵を倒す。だから、俺は神をも超えることができる」

「神を……超える……?」

「ああ、神を超えられる存在は、神しかいないだろう。だから、俺は神を超える存在になっているんだ」

タケミカヅチは理解できないのか、首を傾げていた。

「俺の能力は、それだけじゃないよ」

「……?」

「俺には、もう一つ、神を越える能力がある」

「まだ、あるのか?」

「ああ、俺が受け継いだヒルコには特殊能力があってね」

「特殊能力? ……なんだ、それは?」

「ヒルコには特殊な力が備わっているんだ。それは未来予測の術式といってね。俺は、この術式で未来のことを知った。だから、俺は最強と言われるタケミカヅチとの戦いでも勝利することができたんだ」

「……!」

「俺の未来予測の術式は、相手の動きを先読みできる能力だ。つまり、相手がどんな技を使ってくるのか、わかるんだ」

「俺の技を……知っていたのか」

「知っているよ。あなたが剣技を使うこともわかっていたし、それに、その剣技が必殺技だというのも、すでに知っていたからね」

「…………」

「俺は、この力で、あなたの攻撃を見切った。そして、俺は……この戦いに勝利するっ! ……超雷神斬っ!!」

「ぐあぁっ!」

俺はタケミカヅチに止めを刺す。

タケミカヅチは倒れて気絶した。

「ふう……次は誰が来るかな?」

俺は次の相手を待つ。

すると、アマテラスが姿を現した。

「ヒルコ兄さま……やりますわね」

「アマテラスか……俺の勝ちみたいだけど、どうする?」

「えぇ、そのようです。認めましょう。あなたは、善も悪も兼ね備えた最強の神であると」

「ということは、これ以上、戦っても無意味であることが理解できるだろう? なら、もう戦う必要はないはずだ」

「いいでしょう。戦いは終わりにしましょう。ただし、これからは、わたくしがあなたの妹になります」

「は? ……妹? ……どういうこと?」

「あなたの妹になることによって、あなたは最強の神々の一人となるのです。その力があれば、この世界を統一することも可能。そして、あなたが、この世界の頂点に立てば、あなたに従う神々が増えていき、いずれは世界を支配することができます」

「いやいや、そんな面倒なことはしないよ」

「どうしてですか? あなたは、この世界の覇者になりたいとは思わないのですか?」

「別に……興味はない」

「あなたほどの強さを持つ者が覇王となれば、この世界は平和になるというのに……?」

「その称号には興味ないってこと。この国を守り救うことが俺の使命であり目的だから」

「……!?」

「俺は、この国の人間を守る。そして、幸せにする。それが俺の目的であり使命なんだよ」

「…………」

「俺は、この世界で生きていく。それ以上は望まない」

「……わかりました。そこまで言うのであれば、わたくしも従います」

「じゃあ、仲間になってくれるのかい?」

「はい、よろしくお願いいたしますね……ヒルコ兄さま」

こうして俺はアマテラスを味方に引き入れることに成功したのだった。

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