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小さな旅・思い立つ旅|根のある暮らし[島根の民藝と衣・食・住]篇

流行も仲介者もない「消費の基本」に出会う

窯元に訪れるのはとても楽しい。観光地でもなく、アクセスが良くないことも多い。その上、小さな窯元であれば、お店のように店員さんやレジがあるわけでもない。

宍道湖畔に建つ舩木窯

そんな窯元で、つくり手であるご本人と雑談しながら、その土地で生まれたモノを、自分の目と手でしっかり確かめて、ずっと使いたいと思えるモノを、納得できる値段で購入する。

流行や評判を知らせる広告もない。
仲介者もネットもない。
“消費の基本”が、そこにある。

と、いうことで秋分も過ぎ厳しい暑さが和らぐ季節に、窯元と“根のある暮らしを巡る旅でもどうでしょう?という話。


民藝の窯元と島根

43〜52が島根で一番多くの窯元がある

全国各地に窯場は数あれど、民藝の精神を受け継ぐ窯元はほんの一握り。全国に満遍なく窯元があるかというと、そうでもない。では、どこに多くの民藝の窯元があるか?

出西、湯町、布志名、袖師、温泉津、、

なんと、島根が全国で一番多くの民窯をかかえている。地図は1970年につくられたものなので、情報は古い。でも、窯元の名前を見ても現存しているところは多く、今でもまったく違和感はない。いずれも豊かな自然と暮らしに根ざす、美しい手仕事に出会える場所。

“根のある暮らし”

石見銀山のある人口400人ほどの小さな町にある「群言堂」が提唱する、とてもいい言葉。今回はこの言葉にぴったりの衣、食、住を巡る島根の旅をご紹介。


出西窯|斐川

現代の暮らしに寄り添う「用の美」が息づく器

無自性館:河井寛次郎記念館を手本とした米蔵改修

小さなころから慣れ親しんだ実家近所の窯元が、まさかこんなに有名になるなんて。。他府県ナンバーの車がずらりと並ぶ光景も、今では当たり前の風景に。

青色の釉薬がとても印象的なうつわ。使いやすく、丈夫で、とてもきれい。柳宗理が父の骨壷をつくったのも、この出西窯。

“出西ブルー”と呼ばれる青色釉薬の器
Bshopもできて、窯元から「くらしのvillage」に進化中


湯町窯|玉湯

英国の気品まとうエッグベーカーは民藝の名品

玉造温泉街のほど近くにある窯元

ぽってりと素朴なうつわ。日常使いでまったく壊れる気配がしないほど丈夫な代物。何より窯主の福間さんの人柄がとてもよく、何度でも立ち寄りたくなる素敵なところ。

イギリスのガレナ釉に似た黄色の釉薬が、丸みのあるカタチと相まって、なんとも愛らしい。

バーナード・リーチ直伝の「スリップウェア」


舩木窯|布志名

江戸時代後期から六代続く布志名の名窯

和と洋、伝統と現代が融合するうつわ

布志名焼の祖。スリップウェアの技法を用いるところは湯町窯と同じ。でも、こちらは素朴さよりも、洗練された気品ある雰囲気が漂う。

宍道湖畔に建つ大正時代の建物はとても気品ある佇まい
お店ではなく、完全にご自宅にお邪魔している感じ。


安部太一|松江

民藝を飛び越え、西洋絵画から影響を受ける器

青色でもなく、緑色でもない、独特な深みのある釉薬

唯一無二のうつわ絵画から出てきたような、アンティークのような佇まい。民藝なのか違うのか、という問いに意味はない。ご本人曰く、ジャンル分けは可能性を狭めるだけ、と。

日常の中で、ピンと張り詰める緊張感と風格がある
こちらは安部太一さんのお父さんの窯元にて

ひぐらしの鳴く森の中にある安部宏さんの窯元。当時は太一さんの作品も並べてあり、親子の器を見比べられたんだけど、今はどうだろう?


群言堂|大森

土地に根ざし、生き方・暮らし方をデザインする

暮らしの中で受け継がれてきた精神や技術を生かしながら、現代に合ったものをつくる「復古創新」の考えを提唱。土地に根ざした「衣・食・住・美」のあり方を追求している暮らしのお店。

根のある暮らしを体現するお店
古民家を改装した宿泊施設「他郷阿部家」


來間屋生姜糖本舗|平田

創業300年の生姜糖のお菓子

この地で取れる出西生姜を原料に、昔と変わらぬ製法でつくられる素朴なお菓子。生姜の絞り汁と砂糖を炭火で煮立てて、銅製の型に流し込んで固める製法。

昔と変わらぬパッケージデザイン
甘味と辛味のバランスが絶妙で珈琲のお供に最適

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