小さな旅・思い立つ旅|根のある暮らし[島根の民藝と衣・食・住]篇
流行も仲介者もない「消費の基本」に出会う
窯元に訪れるのはとても楽しい。観光地でもなく、アクセスが良くないことも多い。その上、小さな窯元であれば、お店のように店員さんやレジがあるわけでもない。
そんな窯元で、つくり手であるご本人と雑談しながら、その土地で生まれたモノを、自分の目と手でしっかり確かめて、ずっと使いたいと思えるモノを、納得できる値段で購入する。
流行や評判を知らせる広告もない。
仲介者もネットもない。
“消費の基本”が、そこにある。
と、いうことで秋分も過ぎ厳しい暑さが和らぐ季節に、窯元と“根のある暮らし”を巡る旅でもどうでしょう?という話。
民藝の窯元と島根
全国各地に窯場は数あれど、民藝の精神を受け継ぐ窯元はほんの一握り。全国に満遍なく窯元があるかというと、そうでもない。では、どこに多くの民藝の窯元があるか?
出西、湯町、布志名、袖師、温泉津、、
なんと、島根が全国で一番多くの民窯をかかえている。地図は1970年につくられたものなので、情報は古い。でも、窯元の名前を見ても現存しているところは多く、今でもまったく違和感はない。いずれも豊かな自然と暮らしに根ざす、美しい手仕事に出会える場所。
“根のある暮らし”
石見銀山のある人口400人ほどの小さな町にある「群言堂」が提唱する、とてもいい言葉。今回はこの言葉にぴったりの衣、食、住を巡る島根の旅をご紹介。
出西窯|斐川
現代の暮らしに寄り添う「用の美」が息づく器
小さなころから慣れ親しんだ実家近所の窯元が、まさかこんなに有名になるなんて。。他府県ナンバーの車がずらりと並ぶ光景も、今では当たり前の風景に。
青色の釉薬がとても印象的なうつわ。使いやすく、丈夫で、とてもきれい。柳宗理が父の骨壷をつくったのも、この出西窯。
湯町窯|玉湯
英国の気品まとうエッグベーカーは民藝の名品
ぽってりと素朴なうつわ。日常使いでまったく壊れる気配がしないほど丈夫な代物。何より窯主の福間さんの人柄がとてもよく、何度でも立ち寄りたくなる素敵なところ。
イギリスのガレナ釉に似た黄色の釉薬が、丸みのあるカタチと相まって、なんとも愛らしい。
舩木窯|布志名
江戸時代後期から六代続く布志名の名窯
布志名焼の祖。スリップウェアの技法を用いるところは湯町窯と同じ。でも、こちらは素朴さよりも、洗練された気品ある雰囲気が漂う。
安部太一|松江
民藝を飛び越え、西洋絵画から影響を受ける器
唯一無二のうつわ。絵画から出てきたような、アンティークのような佇まい。民藝なのか違うのか、という問いに意味はない。ご本人曰く、ジャンル分けは可能性を狭めるだけ、と。
ひぐらしの鳴く森の中にある安部宏さんの窯元。当時は太一さんの作品も並べてあり、親子の器を見比べられたんだけど、今はどうだろう?
群言堂|大森
土地に根ざし、生き方・暮らし方をデザインする
暮らしの中で受け継がれてきた精神や技術を生かしながら、現代に合ったものをつくる「復古創新」の考えを提唱。土地に根ざした「衣・食・住・美」のあり方を追求している暮らしのお店。
來間屋生姜糖本舗|平田
創業300年の生姜糖のお菓子
この地で取れる出西生姜を原料に、昔と変わらぬ製法でつくられる素朴なお菓子。生姜の絞り汁と砂糖を炭火で煮立てて、銅製の型に流し込んで固める製法。
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