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面白い本・好きな本|静かに、ゆっくり、聴く[Quiet,Slowdown,Listen]

ドリップコーヒーは茶道に通じる

世界的にはエスプレッソが主流なのに、なぜ日本ではドリップコーヒーが好まれるのか。ずっと疑問だったので、「茶道に通じる」と聞いて、ようやく長年のモヤモヤが晴れる。

ドリップコーヒーは、手作業で丁寧に淹れる。挽いた豆に、お湯を細く注ぐ。蒸らしながら、時間をかけて、抽出していく。

茶道も同様に、手作業で丁寧に点てる。碾茶を挽いた抹茶に、お湯を静かに注ぐ。茶筅でゆっくり混ぜて、お茶を点てる。

どちらも、飲むまでの動きに儀式的な要素を感じることができる。心を落ち着け、目の前のものに集中する。静かに、ゆっくり、淹れる音、点てる音を聴く。

短時間で一気に抽出するエスプレッソでは味わえない禅の精神が、ドリップコーヒーにはあるのかも。

ということで、"静かに、ゆっくり、聴く"ことの大切さに気づくことができる本をご紹介。いずれも洋書の翻訳なんだけど、禅の精神にも通じる良書たち。

「すぐ行動、声は大きく」が正しいか?

成功者の象徴がTEDで話す。ソーシャルメディアでインフルエンサーが情報を配信する。迷わず、すぐ行動。声は大きく、存在をアピールする。成功するにはこれしかない。

でも、それ本当?

静かにしているのは間違いか。
加速から減速にシフトするのは負けか。
話すより聴くことは後回しか。

肉食系と草食系。アウトドア派とインドア派。外交的と内向的。体育会系と文化系。陽キャと陰キャ。
常に対の概念で比較されるけど、「静かに、ゆっくり、聴く」の切り口で見てみると、また違った側面が見えてくる...

静かにゆったり時が流れるリーチバー


Quiet|静かな人の戦略書

静かな羊がライオンを導く

聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼……「静かで控えめ」は賢者の戦略。外向型が優位な世界で、内向型がその魅力を最大限に発揮する方法とは? 

内向型はじっくり考える。考えごとに時間がかかり、黙っている時間が長い。なんでもきちんと準備をしないと気がすまない。記憶力は優れているが、思い出すのに時間がかかる。話すよりも書くほうが、言いたいことを明確にできる。

優れた表現力と社交力があれば、人は成功する」という通念が浸透している世の中で、外交型のほうが優れたリーダーであるという根拠はない、と著者はいう。

内向型には内向型の強みがあり、その強みをよく理解する。個性の異なる外交型と組み、チームの力を最大化する。

静かな羊がライオンを導く


Slowdown|減速する素晴らしき世界

スローダウンはとてもよいこと

人口、経済、情報、テクノロジー、債務・・・・・・
スローダウンはすでに始まっている。オックスフォード大学の地理学者が、膨大なデータと事実で明らかにした「加速時代の終焉」を示す。「直感に反する現実」と「人類の未来」とは?

ひたすらエビデンスをもとに“減速する”世界を提示する。人口、物価、寿命、技術革新、GDP、あらゆるものが減速へ向かっている事実を突きつけてくる。

減速や停滞が悪いものだとする価値観は間違っている。本書は副題に「素晴らしき世界」と入っているように、著者は決して「悪いもの」という立場をとらない。

大加速時代の終焉。そして、そのファーストケースが「日本」というのも面白い。素晴らしき日本。

唯一の例外は「気温

これだけは、まったく減速せず、破壊的加速を続けているという事実がとても印象的。


LISTEN|知性豊かで創造力がある人になれる

沈黙を恐れない

耳を傾けることは、話すことよりもずっと大切である。カウンセラーから人質交渉人まで、聞くことの重要性を明らかにし、聞く姿勢とスキルを身につけることが、多種多様な課題の解決に役立つ。

能動的に相手に注意を向けて聴く姿勢には、2種類あるという。ひとつは、聴きながら、次に何を話すか考えながら聴く姿勢。もうひとつは、いったん自分の判断を保留して話し手の見ている景色や感じている感覚に意識を集中させる姿勢。

本書では、後者の重要性を解く。

相槌を打つ、おうむ返しをする、アイコンタウトをする。こんな小手先のテクニックは意味がない。

聴く」ことは「関心」をもつこと。自分に関心をもってもらうことより、相手に関心をもつこと。好奇心をもって、思い込みをもたない。

宗教は「沈黙」を大事にしている

瞑想、沈黙を取り入れ、信者は神の声を聴き、自分の中のいちばん尊い部分の声に耳をあてる。

「聴くこと」は最高の知性


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