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文庫本頭陀袋

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#こんな本を買った

文房具を買いに 片岡義男 角川文庫



若い頃、書店の角川文庫の棚には、ズラッと片岡義男が並んでいた。壮観だった。ただし、その棚のから本を抜き出して手にとってみたことはなかった、と思う。
アメリカのポップな音楽、映画、小説、そういうものに興味が向いていなかったから、それと同じような匂いがする片岡義男の作品にも興味を惹かれなかったのだろう。読みたい本はたくさんあって、でも、限られたお小遣いの中からそれらを手に入れるためには、寄り道をし

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町子かぶき迷作集 長谷川町子 朝日文庫



Twitterに100日サザエさんというアカウントが登場、という記事を見かけて、「へぇ〜」と思った。なんで「100日サザエさん」?と思ったら、今年が長谷川町子生誕100周年にあたるからだそうだ。

「100日サザエさん」のツイートは、今年1月に復刊した幻のオリジナル漫画『サザエさん』全68巻の中から、アップする日と同じ月日を選んで毎日公開します。100日目は11月14日。その日に特別プレゼント

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焼き鳥の丸かじり 東海林さだお 文春文庫



東海林さだおの「丸かじりシリーズ」第40弾!?(単行本はすでに第42弾まで刊行されている、と荻原浩の解説)
しかも、この巻(『焼き鳥の丸かじり』)の連載中に肝細胞癌の手術を受けるため、入院したことを、客観的にサラッと報告。そしてその入院中の病院食を見事にネタにしてしまう。
病院食に足りない塩気を、ある日出たパック納豆のタレで、久しぶりのたっぷり塩気に狂喜乱舞する。その描写は漫画と文章で微に入り

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京都深掘りさんぽ グレゴリ青山 小学館文庫



著者の「グレゴリ青山」という名前と絵柄は、うっすら覚えていた。「ブンブン堂のグレちゃん」という古本屋を舞台にした漫画。「本の雑誌」だと思っていたら、「彷書月刊」の連載だったのか! 笑に「グレゴリ」というペンネームから、男性だと思い込んでいたが、女性だった。

先月、丸善日本橋本店で、文庫新刊チェックをしていた時に出会ったのが、グレゴリ青山『京都深掘りさんぽ』(小学館文庫)。普段、コミックコーナ

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装丁物語 和田誠 中公文庫



振り返ってみると、本については文字通りの「ジャケ買い」というのはほぼしたことがない。好きな著者の本の装丁が素敵だった、ということはあるし、本屋さんでパッと見て「あ、この本は面白そう」「気になる」と思うことも、よくある。
だが、全く見ず知らずの著者の本を、装丁だけで買った、という記憶はない。

和田誠『装丁物語』(中公文庫)を書店で手にとって、パラパラとページをめくっていると、見覚えのある書影が

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すき焼きを浅草で 平松洋子 画・下田昌克  文春文庫



ある一時期、平松洋子のエッセイを熱心に読んでいた。
いわば「趣味の自炊」にはまっていた頃、レシピ本を探していた本屋さんの料理書の棚で出会ったのが、平松洋子だった。

『忙しい日でもおなかは空く』、『世の中で一番おいしいのはつまみ食いである』『おいしい日常』『夜中にジャムを煮る』『おとなの味』『平松洋子の台所』『買い物71番勝負』『買えない味』『おんなのひとりごはん』『おもたせ暦』など。結構読ん

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「文庫本を狙え!」星取表〜『文庫本宝船』以後の



『文庫本宝船』を読み終えたのが4月30日。この後の分の「文庫本を狙え!」は、緊急事態宣言が解除されたら、図書館で「週刊文春」のバックナンバーに当たろう、と思った。

それまでに、せめて、お題本をチェックする方法はないだろうか?と考える。
週刊文春のWebサイトで目次だけでも読めるのでは? と見てみたが、目次にお題までは記載されていなかった。
次に、Dマガジンで「週刊文春」のバックナンバーを調べ

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上方落語ノート 第三集 桂米朝 岩波現代文庫



昨年、青蛙房から出ていた元本の第一集と第三集をゾッキで入手した。
例によって積ん読しているうちに、岩波現代文庫化が決定してしまった(汗)。
元本と比べてみたが、巻頭グラビアも、本文中の資料写真なども全て文庫版にも入っている。
文庫版にはカバーに米朝さんの写真が使われていて、解説(第三集は廓正子氏)がついている、というのが違いだ。とはいえ、文庫本好きなので、結局ダブりを承知で、全巻購入(第四集は

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あのころ、早稲田で 中野翠 文春文庫



仕事の師匠から、昭和史をテーマにした仕事をすることになって、打ち合わせをしていると、学生運動や安保闘争について、よく「そんなことも知らないのか?」と言われた。

私はちょっと特殊な単科大学で学生時代を送った。だからか、大学の教職員も含めた周囲に、学生運動や安保闘争に携わったことのある人(少なくとも、そう公言する人)はいなかった。

あさま山荘事件は、テレビ中継の映像を覚えている。叔父が警察官で

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喫茶店の時代 林哲夫 ちくま文庫



喫茶店という言葉からまず思い出すお店は、表参道にあった大坊珈琲店だ。記憶をさかのぼっていくと、建て替え前の東銀座の文明堂、アリス、移転する前のYOU。学生時代に入り浸っていた名前が思い出せないけれど店の内装やオーナーの顔は思い出せる2軒の店。
これらの店には、そこへよく一緒に行った人との思い出の場所という面、店のマスターやママさん、常連さんと行った人との思い出の2種類がある。いずれにしても、人

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銀座アルプス 寺田寅彦 角川ソフィア文庫



以前から寺田寅彦の随筆を読みたいなと思っていたのだけれど、岩波文庫はどうも紙面に馴染めなくて、書店で岩波文庫の棚から寺田寅彦随筆集を抜いてはまた元に戻す、ということを繰り返していた。

寺田寅彦といえば「科学随筆」というイメージが植え付けられていて、その「科学」というワードにひるむものもあった。
これは、中谷宇吉郎や岡潔といった”理系”の作者に対しても持っているのだけれど。

紀伊国屋書店新宿

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