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味を盗む②


以前結婚した長女とランチに行った時、長女がお店が出すお料理を家庭でも作ってみたりすると話すのを聞いて、娘の成長を喜んだことがある。

お料理をすることは嫌いではない。娘夫婦を我が家に呼んで一緒に夕ごはんを食べようってんだから、嫌いなはずがない。ただ、飽きる。自分が作る物に飽きる。毎週買い出しに行っても、買う物は毎回同じようなものばかり。レパートリーが少ないのだ。料理本を真似てやってみたり、noteで他のクリエイターさんのレシピを参考にしたりするが、結局はそれらもいつも作っているような物に少しアレンジを加えたりするだけに留まる。全く作ったこともないようなお料理に挑戦しようなんて、そこまでの気力がない。


先日、買い出しのついでに旦那さんとランチした。よく行くパン屋さんの近くに去年出来た和食屋さん。いつも行列ができているのを、横目で見ながら通り過ぎていた。お魚料理がメインで、お持ち帰り用のお惣菜も売っているらしい。近所に住む同僚にお店の評判を聞いてみたら、男性には少し量が少ないかもしれないけど、味は良い、とのこと。そのうち行ってみたいと思っていたらチャンスがきた。その日そのお店の前を通った時はまだ開店前だった。駐車場には既に何台か車が停まっていたが、今ならまだ待たずして入店できそうだ。開店まであと8分ほど、丁度良い。駐車場に入って車を停めて時計とにらめっこ。まだ早い、あと少し。そう思っていたら、車中で待っていた他のお客さんがおもむろに車を降りて、お店の入り口に並び始めた。どうする?私はそんなに並ばなくてもこの人数なら大丈夫だと思ったけど、こういう時旦那さんはすぐに並びたい人だ。仕方なく私も車を降りて列に並んだ。


開店。一組ずつ席に案内される。私たちは4組めだった。中に入ると意外と座席数が少ない。私たちの2組あとの人で、一旦満席になった。まだ、外には並んでいる人たちがいる。開店前に並んでよかったみたい。一歩間違えたら、席が空くまで待つことになっただろう。さて、とりあえず初めて行くお店では、有ればそのお店の名前が付いたメニューを頼むことにしている。あった。ランチ限定、1000円の御膳を2つ注文した。評判に違わず美味しかった。中でも私が気に入ったのは、玉ねぎとちくわとスナップエンドウに、ドレッシングがかかってるサラダ。サラダというのか、和えものというのか。とにかくそれが、不思議なくらい美味しかった。玉ねぎもちくわもスナップエンドウもよく使う食材だが、この組み合わせは考えたことがなかった。見た目も春らしい色目だし、何より簡単に作れそうだ。これ、いただき。数日後の我が家の食卓に、それが並んだ。

ドレッシングは、我が家の冷蔵庫にあった市販のものに、お砂糖やお醤油などを加えて、舌の記憶に近づけたつもり。市販のものそのままだと、少し酸味が強い気がした。まあまあな出来。ただ、普段私のレパートリーが少ないせいで、たまに変わったものを出すと家族が警戒する。「何これ?」「どういうもの?」「美味しいの?」まぁそう言わずに食べてみ。


評判は‥娘たちにはいまいちだった。私が、とりあえずまだ試作だからというと、長女は「そんな試作の段階のものを、客に食べさせるとは」なんて言う。客って。長女夫婦は客だったのか。まあ確かに試作みたいなもんだけど、私的には美味しくできたと思うから。うちの旦那さんは黙って食べてくれたし、長女の旦那さんは「僕は好きかも」と言ってくれた。「これって、わざと玉ねぎの食感を残してるんですよね?」「そうなのよーわかる?」「はい。そこが良いですね。」気遣い?いや、そんなことは考えないことにして、素直に受け止めておく。


よし、次は新玉ねぎでやってみよう。ドレッシングも研究しよう。だって、私、これ気に入ったんだもの。



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