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名人芸にニヤニヤニヤ


先日こんな記事を書いた。

あの後同僚からは、好感触を得ている。まだ全部を読み終えてはないらしいが、めちゃくちゃ面白いですという言葉をもらい、私は独り「ヨッシャー!」となっている。そんな伊坂幸太郎の新作、とにかく本人も言ってる通り、伊坂幸太郎らしさ、しかない。(本に挟まってたポストカード↓)

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本人からこんな宣言されたら、伊坂幸太郎ファンである私は読む前も読み始めてからも、常にニヤニヤが止まらなかった。なんなら読み終えるのが惜しくなって、最後の何ページかを残して何日もそのまま放置したくらいに、とにかく伊坂伊坂いさかいさかした作品だった。


ペッパーズ・ゴースト/伊坂幸太郎


まず、主人公の国語教師はちょっとした予知能力を持っている。それを誰かの役に立てるためにはちょっとした嘘をつくなど、工夫が必要になるし、のちのちそのことが自分の首を締めることにもなる。こういう、人の良い気弱な主人公が最終的にヒーローになるのが伊坂幸太郎の得意技だ。本作は、その主人公の物語と交互に、もう一つ別のパートが出てくる。それは、主人公の教え子である女生徒が書いた“小説”パート、つまり作中作だ。猫を虐待したネット動画を面白がった人たちを見つけては粛清している2人組の物語。この2人が真逆の性格で、2人のコミカルでテンポの良い会話は伊坂幸太郎の真骨頂だ。


そんな2つの物語、どちらも伊坂幸太郎らしさが満載。1粒で2度美味しいとはこのことではなかろうか。伊坂さん、もうニヤニヤが止まりませんってば。とはいえ、どちらの物語もそこに描かれているのは楽しい話ではない。世の中の理不尽や絶望感に立ち向かうのだ。次々と現れる障害に阻まれながらも進むべき道を進む。偶然や選択の積み重ねこそ、伊坂幸太郎いうところの“神様のレシピ”なのだろう。どんなに酷い話でも最後に希望が見えるのが伊坂幸太郎ってもんだ。


というわけで、読後はいつも通りに清々しい。
この本を読んだ後に再び本屋さんに行った際、書棚にこんなメッセージが貼ってあるのを見つけた。

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えぇえぇ、楽しみましたとも。本を読むのがこんなに楽しいってことを私に教えてくれたのは伊坂幸太郎さん、貴方ですから。勇気、もらえました。え、落ち着いたら会えるんですか?会いたいです。そんな独り言を心の中で呟きながら、またニヤニヤしてしまう。そしてまた数日後、ある新聞の書評にこんな文章があった。まさにその通り!とまたも独り快哉を叫んでニヤニヤしてしまった。

文芸が〈文章の芸〉であるならば伊坂幸太郎は一流の芸人だ。その名人芸に心ゆくまで酔っていただきたい。(朝日新聞より)

名人芸を楽しみたまえ!



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