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ナポリタン

喫茶店が恋しくてナポリタンを作った。

喫茶店のメニューといえば、コーヒー、ホットケーキ、それからナポリタンが思い浮かぶ。ナポリタンは簡単そうだが、意外と家では作らない。親しみがあるのに特別感のある不思議な食べ物。それがナポリタンなのだ。そんなナポリタンに唯一出会えるのが喫茶店である。

喫茶店で食べるナポリタンはすこしだけべたついていて、甘ったるい。具材はソーセージかベーコン、玉ねぎ、ピーマン。野菜は芯が残っていてまだシャキシャキしている。ケチャップをあともうひと回ししたい、と思うような淡い朱色に染まったそんなナポリタンが食べたくなった。

スマートフォンでナポリタンの作り方を検索する。いくつか見て、いちばん美味しそうな写真のレシピで作ることにした。具材はやっぱり、ベーコン、玉ねぎ、ピーマンの三種類だったが、冷蔵庫にピーマンが入っていなかったので、代わりにソーセージを入れることにした(なんでだろう)緑なし茶色ばかりのナポリタンが出来上がることが確定した。

パスタを茹でている間に、ベーコン、ソーセージ、玉ねぎを炒めていく。玉ねぎに火が通りしなしなになったら、具材をフライパンの端に寄せて、ケチャップをたっぷり投入する。そのままケチャップを加熱して、煮立たせていく。こうすることで、酸味が飛んで、甘さが増すようだ。ケチャップが煮えたら、バターとパスタを加えて混ぜ合わせる。

するとあっという間に、ナポリタンが完成した。どうだわたしだってナポリタンくらい作れるのだ。喫茶店いらずではないか。しかしながら出来上がったのは、想像していたよりも、赤いナポリタンだった。想定していたナポリタンがフィルムカメラなら、出来上がったナポリタンは一眼レフで撮った写真みたいに鮮やかだった。

食べてみると、なんだかとっても豪華な味がする。なんだこれ。圧倒的コレジャナイ感だ。もっと色素が薄くて噛んでいるとじんわりケチャップの味がしてくるあの感じが欲しいのに、口いっぱいにトマトが広がってくる。

ケチャップをよく見ると、リコピンが濃厚なタイプであった。さらにわたしの参考にしたレシピはシェフ直伝のレベルアップしたナポリタンだった。ああ、とても美味しい。まるでレストランに出てくるようなきちんとしたナポリタンだ。

しかし、わたしが求めていたのはこれではないのだ。素朴で食べていると、祖母の顔が浮かぶようなそんな親しみのあるナポリタンなのだ。わたしの求めるただしいナポリタンは今、何処。ナポリタンを求めて、喫茶店を彷徨いたい。

参考:贅沢なナポリタンをご所望の方はぜひお試しください。普段、料理をしないわたしでもとっても美味しく仕上がりました。




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