見出し画像

個人でM&Aをする時はここを気を付けよう!

こんにちは。スモールM&Aアドバイザーの北林です。

 昨日2020年9月22日(火)にテレビ東京系のガイアの夜明け「今なら会社買うでしょ! コロナで急増する個人M&A」が放送されていました。

 3人の個人の方が、M&Aマッチングサイトを利用して、以下の小規模の会社または事業を買収するという話でした。
  A)レンタルウェディングドレス店
  B)小規模の個人塾
  C)ショッピングセンター内のタピオカ&クレープ店
おそらくコロナ禍が本格化する直前に皆さん買収されたと思いますが、このコロナ禍を何とか乗り切って是非それぞれの目標を達成して欲しいと思います。

 当方も多くの個人M&Aの売手または買手のアドバイザーをさせて頂きました。マッチングサイトは個人でも手が届く案件が多く魅力的ですが、残念ながら手を出すのは危険または注意を要する案件も多々あるのが現実です。

 ですので今回は上記「ガイアの夜明け」の3事例について、買手側の立場として、当方だったらどこに気をつけるかを、シュミレーションしてみたいと思います。なおテレビと対象案件のサイト情報の限られた情報に基づいて考察しておりますので事実と異なる内容もある可能性があることもご了承下さい。
今後、個人M&Aを検討している方には是非ご参考頂ければと思います。


A)レンタルウェディングドレス店

(地域、サイト)東京、バトンズ
(スキーム)株式譲渡

(良い点)
・明確な売却理由。あやふやな理由の場合、交渉進める中で突然売手から「やっぱり売却自体やめます」のようなケースが交渉途中に起こることが多々ある。(交渉が最終段階あたりだと最悪です。)可能な限り詳細な売却理由を確認。
・売手の当該事業に対する深い思い入れ、愛着を感じる説明。売手の思いが強い会社・事業は魅力を感じる。
・社歴が長い点。長ければれば良いわけではないが、これまでの時間をかけて気づいたノウハウ、顧客、評判など、時間をかけなけいと、得にくい魅力的なものがある可能性が高い。まさにM&Aの醍醐味である「時間を買う」です。

(注意点)
・従業員数が0人(社長のみ)。理想は社長がいなくても現場が回る体制。ダイレクトに新社長の力量が業績に影響する。
・引継ぎ期間が1か月と異業種(看護師)からの参入にしては短すぎる。(マニュアル等の整備、管理システム等が充実している場合は問題なし。)段階的に引継ぎのための来社数を減らしていく条件等で3か月程度が理想。不安であれば3か月更新で別途顧問契約を前オーナーと締結し対応。
・実質のオーナー利益(税引後利益+役員報酬+減価償却費+旧オーナーの節税対策または私的費用)が、おそらく0円~赤字。新社長が、改善後の事業計画でどこまで利益を改善できるか作成し、3年で回収したいのであれば、改善後利益×3年+純資産(債務超過のため1円評価)が、買手として買収額の最大値として、今回の希望額の範囲に収まっているかどうか検討する。
・金融機関借入金の取り扱いは、希望譲渡額の中に含まれるのか?、それとも別なのか?旧オーナーの個人連帯保証の解除&新オーナーが個人連帯保証をするケースなのか?
・譲渡日における最低必要な運転資金(手元現金)は、資金繰り上、問題ないか。入金日、出金日をしっかり把握したうえで、譲渡日の現預金が適正かどうか確認。できれば最終契約書の中で、譲渡日における会社の現預金の残高を確保する文面を記載。
・売手にアドバイザーがいて、買手側にアドバイザーがいない場合、最終譲渡契約書の内容が一方的に売手側が巧者のため、買手が一方的に不利な契約書になる可能性がある。スポットでも良いから、お金を払って、別のアドバイザーや弁護士に最終契約書の内容について意見をもらう。
・建物の賃貸借契約書について、コベナンツ条項(オーナーチェンジが禁止等)がないか確認。あった場合は、退去&あたらしい店舗を探す必要がある。ただしコベナンツ条項があったとしても、売手と建物オーナーの関係が普段から良好であれば、概ね許可がでる場合が多いので、普段からの関係性をしっかり把握しておくこと。またできれば、早い段階で売手から建物オーナーへ根回し(今回M&Aを検討している旨)をしておくと、スムーズにいくので売手に早めに対応してもらう。
・株式100%譲渡=会社の過去の歴史を全て引き継ぐということを忘れずに。オーナーチェンジ後、過去の業務が原因で何か問題が起こったとしても、それは会社の責任=新オーナーの責任ということを心掛けておくこと。なお過去のことで問題が行った場合を想定した取り決めを、最終譲渡契約に盛り込むことも検討してリスクヘッジを考える。

例B)小規模の個人塾

(地域、サイト)神奈川、バトンズ
(スキーム)事業譲渡

(良い点)
・明確な売却理由。しっかりとした事業に関する説明。
・譲渡希望価格
・スキームが事業譲渡のため、簿外負債を引き継ぐ可能性は極めて低い。
・駅近で人材(大学生アルバイト)の確保が容易な環境。また在籍講師も十分確保している。
・規模に対する在籍講師数から、ある程度組織化・プログラム等がしっかりしていることが伺える点。
・立地。数少ない人口が増えている町であること。
・FC加盟が強制ではない点。FC加盟店を売却する場合、FC契約の中にM&A等の禁止に関する条項が多いケースもあり。よってFCオーナーから否認されるケースがありますので、早い段階で売手からFCオーナーにM&Aが可能かどうか要確認。

(注意点)
・初期検討段階(サイト情報)で、売上高などの業績に関する概要がなく、譲渡価格の適正度がわかならい。または早い段階で売上高、営業利益は確認したい。その際、スキームが事業譲渡のため、学習塾部門だけの業績をもらうこと。(学習塾と関係がない事業の売上や経費と混在してるケースが多々あり。スモールM&Aでは、経営管理を毎月しっかり行っている会社は、かなり多いため、正確な資料が作れない・取得までかなりの時間を要するケースも多々ある。)
・スキームが事業譲渡のため、株式譲渡とは違い、契約が自動引き継ぎではない。つまり生徒・講師・取引先・家主など、すべての関係者と契約のまき直しを行わなければならず、手続きが煩雑になりがちであることに気を付ける。また、スモールM&Aでは、上記関係者と書面による契約書を交わしていない場合が多々あるため要注意。
・講師等の従業員は、一旦前のオーナーの学習塾をやめたうえ(会社都合)で、あらたに新オーナーの学習塾に雇われるという流れになるため、会社都合退職の場合は30日前にその旨伝えないと、解雇予告手当の発生する場合があるので要注意。
・講師等の従業員は、オーナーチェンジのタイミングで自主退職をする人もまれにいる。キーパーソンをしっかり把握し、もしキーパーソンが退職した場合の取り決めを最終譲渡契約に盛り込むなどして、いままで通り事業がまわるようにリスクヘッジをしておく。
・リース契約が引き継げないケースもあるので、重要なリース物は、早い段階でリース会社に引継ぎできるか確認。
・事業譲渡の場合は、基本、運転資金は買手が用意するのが一般的なので、買収資金以外に、運転資金の準備が必要であることに注意。できれば月間売上高の2~3か月分程度は準備したい。

例C)ショッピングセンター内のタピオカ&クレープ店

(地域、サイト)大阪、トランビ
(スキーム)事業譲渡

(良い点)
・オーナー(社長)が不在でも、現場が回る体制
・集客力のある立地
・明確な売却理由。
・スキームが事業譲渡のため、簿外負債を引き継ぐ可能性は極めて低い。
・直近の営業利益は黒字である点。直近の営業利益が確保できると判断できれば、売却希望額(580万円)は割安と判断可能。ただし本来対象事業の経費であるものが、別事業に計上されている(またはその逆)こともあるので、特に必要な経費は一通り計上されているか、DD等の段階でしっかり精査が必要。

(注意点)
・事業譲渡のため譲渡対象資産を簿価ベースでもよいのでしっかり把握すること。重要な機材は対象外や、資産リストにあって現場にないケースもあり。
・事業譲渡のため、譲渡費用以外に「運転資金、ショッピングモールへの敷金礼金、FC加盟料等」が必要の可能性が高いため、余裕のある資金を確保することが必要。ざっくりベースで最低500万円ぐらいは、別途資金が必要と想定される。
・ショッピングモールは、大手企業が運営しているケースが多く、入居するだけでも高額な敷金、礼金と、厳しい審査があるケースが多い。特にモールとの賃貸借契約書にはコベナンツ条項(オーナーチェンジ等の禁止)がほぼ含まれており、当方もモール運営会社から否認されたケースがあります。できれば早い段階でモール運営会社に確認ができるのがベスト。その場合、担当者ベースではなく、権限がある管理職レベルの確認が取れればなおよい。権限がない担当者のコメントは、上司に実は確認をとっていないケースも多く要注意。
・ショッピングモールは、売上に応じてインセンティブを、モール運営会社に支払う契約となっているケースが多く、一般的な店舗よりもコストが多い。しっかり現状のコスト構造を分析することが必要。
・FC加盟店を売却する場合、FC契約の中にM&A等の禁止に関する条項が多いケースがある。よってFCオーナーから否認されるケースもあるので、早い段階で売手からFCオーナーにM&Aが可能かどうか要確認。
・売手にアドバイザーがいて、買手側にアドバイザーがいない場合、最終譲渡契約書の内容が一方的に売手側が巧者のため、買手が一方的に不利な契約書になる可能性がある。スポットでも良いから、お金を払って、別のアドバイザーや弁護士に最終契約書の内容について意見をもらう。


以上、簡単ではありますが、個人M&A案件の買手側としての注意点をシュミレーションしてみました。
個人がM&Aを行う案件の、金額規模は、実際は0円~500万円の範囲が多いと思います。その場合、M&Aアドバイザーを付けるのは費用的にも厳しく、全て自分で行う方も多いと思います。そんな方々の参考に少しでもなればと思いますが、できれば交渉の重要な各局面では、M&Aに精通した専門家の意見を聞いた上で決断して頂くことをおすすめします。

そしてM&Aは会社・事業規模の大きさに関係なく、大なり小なりリスクがあります。そのリスクをどこまで自分が許容できるか、低減できるかを考えながらM&Aに挑戦いただければと思います。

弊社に興味がある方はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?