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寂しいのち、曇りの兎
澄んだ空の下で洗濯物を取り込みながら、僕は大学の後輩のウサギについて考えていた。彼女はくしゃっと笑い、掴みどころのない人物で僕が知る限り19歳まで貞操を守っていた。
ウサギとは大学二年生の後期にイギリス文学史の授業で知り合った。確か、ディストピア文学の講義でトーマスモアについて教授が熱弁しているのを数名を除いて全ての学生が聞き流していた。授業後、ウサギは僕に話しかけてきた。
「タグチくん、でしょ
寂しいのち、曇りの兎 β
よく澄んだ空に登る太陽が少し傾いてきた頃、僕はカッターシャツにアイロンを掛けながら大学の後輩であるウサギについて考えていた。12年前、彼女は夏のよく晴れた日に降り注いだ雨のように僕の前から跡も残さず消えた。
彼女とは大学の喫煙所で知り合った。その喫煙所はサークル棟としてしか活用されてない7号館の近くにあり、ずっとサークル室に入り浸ってる大学に来ているだけの学生か、意図的に少し独りになりたいと
赤と白に散らつく雨粒
私にとってそれが初めての失恋だった。中学時代にも勿論恋愛感情というものはなんとなく持ち合わせていたはずだが、それが上級生の憧れの先輩へ向けている感情と何が違うのかをきちんと説明しきれなかった。
高校に入学して、オリエンテーションで千葉にある牧場に行くことになっていた。その時は出席番号順で適当にグルーピングされた男女数名を班という括りで指定された場所を周回させられた。そのオリエンテーションで同じ班