自慢の図書館メディコスと、“シビックプライドプレイス”
俳句と暮らす vol.12
一日中楽しめちゃう「みんなの森 ぎふメディアコスモス」
「わああっ、これが図書館?」
「すごーい!」
「こんなところが家の近くにあったら、入り浸っちゃいそう…!」
県外の友人に、どこかおすすめの場所に連れてって!と言われると、私には決まって案内する場所があります。
岐阜市の複合文化施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」です。
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」、通称“メディコス”。
岐阜市立中央図書館や、市民活動交流センター、ステージのある大きなホールなどを備えた複合文化施設で、設計は世界的に有名な建築家・伊東豊雄さんが手掛けています。
「複合文化施設」や「図書館」というよりも、私のイメージは「賑やかな、屋根のある公園」「自由に遊び倒せる本の森」という感じ。
通常、図書館は窓が少なめで少し暗めで、シーンとした静粛な空気感がありますが、大きな窓があるメディコスはとても明るく開放的な雰囲気。
小さな子どもの遊び場もあるので、キャッキャッと元気な声が響いています。
読書をする大人たちも、心穏やかに元気な子どもたちを見つめている、まるで地域で子育てをしているような優しい空間です。
また、館内や、外の広場などでは、おもしろいイベントやセミナー、マルシェなどもたくさん開催され、多くの市民が集っています。
ちなみに、この幻想的な写真は、メディコス2階の図書館で撮影した、“リフレクションフォト”。
リフレクションとは、水面やガラスなどの反射を利用してシンメトリーな写真を撮る技法のことで、図書館にはこうした写真が撮影できるガラス面のスポットがあります(カメラ好きのあいだでも密かな話題です)。
ぜひ、探してみてくださいね。
この春誕生した「シビックプライドプレイス」
2022年3月26日、メディコス館内に「シビックプライドプレイス」が誕生しました。
ここ最近、よく耳にするようになってきた「シビックプライド」。
一般的な解説によると、シビックプライドとは「都市に対する市民の誇り」と解説されますが、メディアコスモスではこんな解釈をしています。
そんなシビックプライドの“場所”として生まれたのが、このシビックプライドプレイスです。
長良川と“繭”をイメージした、ころんとかわいい空間
空間デザインのコンセプトは「長良川カウンターとコクーン」。
コクーンとは、蚕などの繭という意味です。
岐阜の長良川をイメージしたという、ゆるやかな曲線のカウンターがあり、川に架かる橋のような間隔で、タブレット端末やモニターが設置されています。
まっすぐなカウンターと違い、人が集いやすく、交流しやすい長良川カウンター。
そのカウンターをやさしく包み込むようなドーム空間「コクーン」が、ふたつ配されています。
繭のような繊細な被膜に包まれたこのドーム、秘密基地のようなわくわくする空間でありながら、コクーンの外とのつながりも感じられる、とても居心地の良い空間です。
今日の気分で、岐阜のまちをキュレーション
ふたつのコクーンは、「まち歩きステーション」と「ぎふ歴史ギャラリー」に分かれています。
「まち歩きステーション」では、史跡や店舗、施設など、周辺のおすすめスポットなどをさまざまな方法で検索できます。
「歴史を歩く」「ぎふの定番食」など、16の個性あふれるテーマから、その日の気分に合わせて探していきます。
気になるスポット、行きたい史跡などにチェックを入れていくと、自分だけのオリジナルさんぽ地図が完成。そのまま、スマホにダウンロードできます。
岐阜らしさを感じられる魅力的なスポットはもちろん、市民こそ知るレアスポットもたっぷり。
私も今回、情報提供側として、以前この「みたすくらす」の記事でもご紹介した天然鯛焼きの「福丸」さんの記事を書きました!
ちなみに、岐阜市内にたくさんある俳句の句碑をめぐる「松尾芭蕉句碑めぐり」というおすすめコースもあります。
「今日は史跡めぐり!」「今日はローカルフード三昧で」「今日は長良川の文化を深堀りしよう!」みたいな感じで、その日の気分で自由自在にキュレーションしてまちをあるく、そのスタート地点になってくれると思います。
かつての岐阜にタイムトリップできる
個人的にとてもおすすめなのが、「ぎふ歴史ギャラリー」。
ずっと触っていたい…、ここに張り付いて俳句をつくりたい…、と思うほど、楽しいスポットです。
ここでは、古地図に紐づけられた古写真や歴史的資料を、タッチパネル操作で表示することができます。
たとえば「岐阜城」を選択すると、現在の写真はもちろん、昭和、大正、明治、江戸時代…と、時代を遡って写真や資料を見比べることができます。
時間軸ではなく、場所を軸にして、さまざまな時代へタイムトリップしながら、歴史や文化を重層的に辿ることができます。
これが、名所旧跡だけではなく、商店街の一角や、橋のたもとなど、さまざまな場所でできてしまうのがおもしろいんです。
「ここに張り付いて俳句をつくりたい…」と言った理由はそれで、過去と現在の写真に、俳句づくりの種がたくさんあるから。
岐阜のあらゆる場所の、過去と現在を鮮明につないでくれるような資料の数々のおかげで、その土地のことをより深く知れるだけではなく、いにしえのときに思いを馳せ、あれこれ想像しながら、自分だけの詩にしたためていくのはとてもおもしろいです。
またそれが、未来へ残っていくこともおもしろい。
過去の記憶や、忘れてしまっていた思い出に出会うことができるだけではなく、その時代を知らなかった世代が写真を通じて「過去と出会う」場所でもあると思います。
岐阜の今の人、過去の人と出会う
「岐阜な人」は、岐阜で活躍する人と出会うことのできるコーナーです。
岐阜で現在活躍している人々の、職業名がずらり。
裏を見ると、その人の写真と顔、そしてQRコードが記載されています。
ちなみに、過去の人はキーワードで。
「岐阜を詠んだ俳聖」というのもありました!
この栞は持ち帰ることができるので、気になる人を探して持ち帰って、ぜひつながってみてください。
シビックプライドの種を蒔く場所
岐阜の歴史、ひと、文化の魅力を、ぎゅっと凝縮した「シビックプライドプレイス」。
図書館という、知の集積地だからこそできる拠点。これからが本当に楽しみです。
地域の宝のような情報をたくさん集積する場であると同時に、それぞれが「自分なりに使い倒す」「自分の目で見て、感じ、心で考える」ことができる場所でもあります。
それにより、自分と地域のつながりをより深く感じることができるはず。
人々が集い、新しい視点が生まれていくことで、集積される情報もどんどん分厚くなっていくでしょう。
地域への愛着や、誇り。
それがきっと、岐阜で暮らしていくことの、原動力になります。
それを「場」として可視化してくれたのが、シビックプライドプレイスだと感じています。
「私にとってのシビックプライド」の“種”をたくさん蒔いておける、ふかふかの畑のような場所かもしれません。
たくさんの地域の素材を真ん中に置いて、それを囲むように人と人が集い、対話し、アイデアや情報を交換し、語り合える場所になっていくことで、それぞれのシビックプライドの芽が出て茎が伸びて花が咲き、また新しい種をこぼしたら、このまちがもっともっと、おもしろくてカラフルになっていくんだと思います。
暮らしの一句
図書館の本に蒲公英の押し花 麻衣子