海の農業:海苔の生産現場を見学した(後編) 週末は愛菜家 vol.09
アーティストの矢田勝美さんに協力いただいて実現した海苔漁(海苔養殖)の現場見学。
前編では摘採(収穫)の様子をメインで紹介しましたが、後編では生海苔が加工されて馴染み深い板海苔に加工されていく様子を紹介していきます。
今回もできるだけ現場の様子をリアルに感じられるよう、動画多めでまいります!
海苔漁を手がける泰一(やすかず)さん
矢田勝美さんの弟、泰一さん。
海苔漁をはじめアサリ漁やイワシ漁を行うだけでなく、お米「やだまい」の栽培も手がける漁師と農家の二刀流。なかなかカメラ目線をしていただけなかったのですが、寡黙に仕事をこなす背中からはオーラが漂いまくってました。
研究熱心で新たな栽培方法やより良い植え付け方法を模索することで、鈴鹿エリアの中でも特に良質な海苔を安定的に出荷して仲間からも一目おかれる存在だそうです。
前編で摘採した生海苔は海苔小屋(加工場)横にあるプールに一時保管されます。
そこからは自動で小屋に運ばれ、私たちが手にする板海苔の状態までワンストップで加工されていきます。
と、その前に「やだまい」おにぎりで朝食タイム♪
お米がツヤツヤ。海苔の香りも素晴らしい✨
めちゃくちゃおいしゅうございました!
具には泰一さんが収穫したアサリが入っていましたよ。
ストーブで冷えた身体を温めながら、その日の状況を話し合います。
真ん中は矢田さんのお母さま、秀子さん。
板海苔の製造機器。写真ではスケール感がわかりにくいのですが、奥の方には巨大な乾燥スペースがあり、左にはできあがった板海苔を送り出す設備がつながっています。
鈴鹿エリアでいち早く機械によるオートメーション化を行ったのがお父さまの勇さん。
機械にも寿命があり、定期的な交換が必要で現在は3代目だそうです。
機器の調整やメンテナンスをする時の勇さんの目は真剣そのもの。
海苔小屋の設備をすべて整えるには、億単位のお金が必要だと教えてくれました。
海苔小屋に送られてきた生海苔は、専用の機械でカットされて異物も取り除かれます。
そこから真水を混ぜて塩分濃度や粘度を調整して次の行程に送られます。
メインマシーンに送られた生海苔は、紙漉きの要領で6枚ずつプレスされます。
乾燥前は、思ったより分厚かったのが印象的でした。
想像を遥かに超えるスピードで海苔がどんどん作られていきます。
「これは造幣局みたいなもんや!」勇さんが語ります。
現在はリーズナブルな値段になった海苔ですが、以前はお歳暮などにもよく使われた高級品。「黒いダイヤ」と呼ばれていたそう。
プレスされた海苔に光を通して、さらなる異物を自動でチェックします。
異物がないのが品質の肝。勇さんは「やだのり」の品質に絶対の自信をもっています。
乾燥ゾーンで数時間かけて水分を飛ばし、板海苔の完成です!
機械の力を最大限に使いつつも、最後はやっぱり人の目で細かくチェックを。
品質を守る取り組みがされています。
炙る前の板海苔は黒々としていますね♪
ピカピカして美しい・・・
完成した板海苔の品質を示す判子を矢田さんが押しています。
写真ではちょっと見にくいですが、「重」という等級は板海苔の中でも特に厚みがあって希少価値が高いものだそう。
いつのまにか、太陽が顔を出していました。
右の方に写っているのは海苔養殖のための支柱ですね。
摘採が終わった後も網のメンテンスなどさまざまな作業があります。
秀子さんが生海苔をお裾分けしてくれました!
一般の食卓には登場することのない、漁師だけの特権✨
そのままいただいてみると、磯の香りとしゃりしゃりとした独特の食感があります。
三杯酢でそのままいただいたり、つくだ煮に加工したりと妄想がふくらみます♪
海苔小屋では、勇さんがストーブで「やだのり」を炙ってくれました。
「かならず表から炙るんだ!」勇さんは語ります。
炙りながら、海苔にまつわるいろんな話を聞かせていただきました。
昔は何十軒もあった近隣の海苔漁師が、後継者問題やコストのかかる生産機器が原因で4軒だけになってしまったこと。矢田家は泰一さんが継いでくれてうれしかったこと。若い頃に船から落ちて骨折し、命の危険があったことなどを話してくれました。
しっかり炙ると、黒々としていた海苔が緑色に!
口に含むと、華のある香りがいっぱいに広がります。
今までに体感したことのないパリパリ感にただただ驚きます。
矢田さんもおいしそうに食べてました♪
「やだのり」は提携ショップや矢田さんのホームページ(http://www.yadakatsumi.com/eat)から購入可能とのこと。ぜひぜひお試しください✨
そして、前編で写真提供をしていただいた戸高翼さんが撮影・編集した90秒のショートムービー「やだのりができるまで」も公開されました!
https://www.instagram.com/p/CZD-ve6pD_C/
こちらもぜひご覧ください♪
海の農業:海苔漁の現場。ちょうど風も波も穏やかな日の取材でしたが、それでも冬の寒さが身に沁みる過酷な場所でした。
そんな場所で身体を張っておいしい海苔を食卓に届けてくれる漁師さんの存在に感謝しながら、購入させていただいた「やだのり」でささやかな手巻きパーティーを開催しようと思っています♪