だって私は牡羊座の女

筆名:小林羅紗

だって私は牡羊座の女

筆名:小林羅紗

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最近の記事

太陽の嘘つき

なんとなく信じていたものに振り回されるだけ振り回されて、あっけなく時は過ぎ、僕はぼろきれの様になってしまって、縋れるものすらなくなったから、みなさん、「さようなら」ということなのです。 太陽も青空も、いかにも平等で人道主義みたいな顔をしていやがるが、僕を救ってくれたことなんか一度もない。 僕は歩いている。 上野の、蒸されるような熱気とコンクリートのひりひりした照り返し、酔っ払いの痴態を、右から左に流している。 汗でじっとりした服のぬるさと頭の脂のにおいにも慣れてしまった

    • 【短編】踊って

      「……俺にも見せてよ。踊らなくてもいいから」 安藤は一瞬目を伏せ、「いいよ」とベッドを降りた。 静かに靴下を脱ぎ、ゆっくり、アラベスクの姿勢をとる……。腰も足も大きく反り、橘は目を張った。 彼女の細い手足がしなやかに動かされ、フレアスカートがゆらめき、手先は、脆そうにも見える柔らかさをもって、指の先までたっぷり満たされたように静止した。 真ッ直ぐに伸ばされた左足の緩やかな凹凸には、橙の灯がほのかに照っている。橘は思わず立ち上がる。触れずにはいられなかった。 ざらざらした手

      • ほら、読めよ 見ろよ

        やだ!!!!! 何が嫌かって、 生活が連続し続けてなお変化の無いこと、それが自分自身と鏡写しだってこと、つまり、あたしは怠け者で無努力で徒に太ってくだけ ってこと! 別にそんな太ってないけど 精神的な話ですよ 不誠実な肥えなの 与太じゃありません あたし本気で言ってるわ 怒ってるわけじゃないの 拒否してるだけ 代案はなし ほら言ってるそばから!!!!! ああ、勝手だよバカ 生活嫌なら変えろってね やりたきゃ体が動いてるわ あたしは寝てるよ こうしてる間にも世の中は回って

        • 朝だ!朝だー、満員電車か学校か寝床か

          学校へ行く前の朝、それも少し早い、6時半頃に駅前のコンビニで適当なグミを1パック買う。 それはお守りのようなひと袋だから。 別にお腹も空いてない朝からそれを食べようとは思わないが、それを「朝に買う」ことが、菓子一つで朝が始まることが大切なのだ。 いつもよりちょっと早い時間帯の電車に乗るだけで、サラリーマンの量が2倍になる。横一列に座るスーツのおじさんたちはみんな半袖だ。半ば滑稽に映るが、それは姿写しの格好のせいなのかまばらな頭皮頭髪のせいなのかは分かんない。けど、多分眠そう

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        • 創作など
          5本
        • 創作以外のもの
          7本

        記事

          【短編】憧憬・軽傷・かすり傷

          【フィクション/創作】 あの日から、4ヶ月が経った。 先生が“停職”していたのを知っているのは、私だけだ。その間に私は学校を辞めてしまって、先生の顔はまだ見てない。1か月前に先生は復職したはずなのだが、とても会う気にはなれないだろう。 あれから、私はまだ社会に庇護されるべき小娘あることを身をもって知り、なんだかやるせなくなってしまって、この頃はずっとふらふらしている。先生……、ちょっとだけ痩せたらしい。冬は越せるのかしら。大丈夫かな。 たまに、秋の夜長に参ると、先生の連絡

          【短編】憧憬・軽傷・かすり傷

          日記〜最近喉が乾燥して無限に咳が出る〜

          なぜこうも後ろ向きなんだ 自分でもわかってるはずなのに、目を背けないわけには行かなくて、すごく、気持ち悪い 脳が逃げている。 いや逃げてるのは自分なんだ 脳みそやら意識の裏やらに責任を押し付けて逃げている 革命だとかロマンの熱に浮かされて非現実的な夢物語にしか飛び込めないんだ いつか死ぬ。 死ぬけど、“今”じゃないとたかを括っている。 それと同じように荷物を先に先に送ってじぶんで先送ったそれに怯えて暮らしてるんだ バカすぎる いつか潰れちゃうね それもこわいよ どうし

          日記〜最近喉が乾燥して無限に咳が出る〜

          抜粋

          申し上げます 申し上げます 七月に入ってしまいました。 先々週の金曜に見た夢に心が折れてしまってからというもの、そのままずっと、だらだらと家に籠る日々なので御座います。 今度、病院にかかることは決まっているのですが、にしても依然、大きな不安がある。この怠惰に名前がつかなかった時を考えてひとりゾッとする 私は、ずっと前から抱える不安に名前がつくことを望んでいた。 病人になりたいと思っているのだ 病人か病人でないかの境は、誰が決めるものでもなく、ただ、在るものだと思う。 い

          まるで卍 おれとお前

          まるで卍 おれとお前

          クレしんの初期映画の作画にある独特なデザイン、ねこぢるの映像観に近い感じがある

          クレしんの初期映画の作画にある独特なデザイン、ねこぢるの映像観に近い感じがある

          ニュー・源氏物語 〜桐壺更衣逝去〜

          あくまでテスト対策用の、私用の即訳でございます……悪しからず …… … その年の夏、桐壺の奥さまはなんてことないようなご病気にかかられた。いつもはそれで安静にしていれば、しばらくするとひょいとお顔をお出しになるのだけれど、奥さまはなんだか普段と違うお顔つきで、お里に帰ろうと準備をなさっていた。しかしこんなことは天子さまがお許しになるはずがない。しかし、天子さまも鈍臭いお方である。自分が奥様を愛でるのに夢中になって、その声色やお顔つきに、力ない笑みに、奥さまのご疲労をお感じ

          ニュー・源氏物語 〜桐壺更衣逝去〜

          目、心の、フィルターの、嫌がらせ

          彼女の声は、教室によく通る。笑い声も同じであった。 私はその声を聞く度、そのわざとらしいような、まとわりつくような甘い、人工的な「かわいい女の子」のトーンがいやでも耳に入るのが不快で、鳥肌の立つような嫌悪に苛まれているのである。 あきらかに“いやなもの”、その腹黒の鱗片を見せるにも関わらず、彼女はその上からお手製の純白のヴェールに隠したつもりでいる。そのヴェールが安直でチープなものであるのに彼女は気づいていてかいないのか、それがいかにもほんとうの自分の姿であるように振る舞

          目、心の、フィルターの、嫌がらせ

          「台無し」の日が編む太宰

          雲が厚く張って、もんやりした暗さと湿気が重いような日、 ほんとうに些細なきっかけで、機微の均衡が崩れてしまって、三時間ほどワンワンと泣いておりました。 そう長いこと伏していると、身体中の水分が絞られてしまったような頭痛と、目の痛みとが、有刺鉄線で締め付けられたようにジクジク響くのです。こうなると、もう初めにあった差し迫るような悲しみの恐怖、自責の罪状なんか忘れてしまって、惨めったらしさばっかりが勝ってしまう。 あなた、この怖さがわかりますか、わかりますか。ええ。 頬にナメク

          「台無し」の日が編む太宰

          『愛の渇き』に触れて-三島の根っこを覗きたい

          矛盾を抱えた幸福追求は、罪悪なのだろうか。 信仰を持たぬ“理性の怪物”が最後に辿り着いたのは…… オチのネタバレあるよ知りたくない人はブラウザバック推奨です。 このnoteをわざわざ読むような人間は既読なんじゃねえかとも思うが、一応。 はじめに 私が初めてこの本を手にし、読んだのは全くの偶然であった。 高校の図書室で、背伸びして三島でも読もうかと適当に手に取ったのがこの『愛の渇き』である。 この感動を、読了感を記録するため、noteに残すこととした。 清涼感と毒味と粘

          『愛の渇き』に触れて-三島の根っこを覗きたい

          楽しそうって理由だけで結婚したい

          楽しそうって理由だけで結婚したい

          【短編】ぷかぷかしよ

          「せんせ、この匂い、家庭に持ち帰らないでね」 女。あどけない女。足から小ぶりの臀にかけての肉がきゅっと弾けるようで、白く、吸い付くような肌をしたその女は、躰を起こして細い煙をたてている。 「それなら最初から吸わなきゃいいんじゃないの」 男は冷たく宥める様子もなく、普段からそう話すようなトーンで飄々と言った。 「まあ……多分私、先生に、隠してほしいんだと思うの」 「スパイス?」 「それにしちゃヤニ臭いわ」 「はは、言えてる」 男は何を考えているんだろう。所詮、いわゆる、愛人

          【短編】ぷかぷかしよ

          私が隠されたとこからほんのり匂う“粋”を主張する人種なのに、なんでもペラペラ喋っちゃうのは良くないと思ってる

          私が隠されたとこからほんのり匂う“粋”を主張する人種なのに、なんでもペラペラ喋っちゃうのは良くないと思ってる