大好きだったあの頃の面影を探すのはもうやめろとあれほど言ったでしょう

神様は意地悪だ。

好きな人とは会わせてくれないくせに、会いたくない人に限ってばったり再会させるだなんて。

今日、私の人生において唯一縁を切った相手と遭遇した。正確には私が気づいただけだけれど。
綺麗に切りそろえられたボブ、華奢な体。
たったの一瞬だったけれど マスクをして俯いた彼女は間違いなくあの子だった。



遡ること中学1年生、今日見かけた彼女と私は大親友だった。クラスは違えど、休み時間になればお互いの元に飛んでいってはチャイムが鳴るまでお喋りして、放課後になればどちらからともなく一緒に帰る、とにかく仲の良い友人だった。
話によく出てくる「元恋人(△□くん)」と私はまだ付き合っていなくて、この頃は単なる片想いの相手だった。(付き合うのは2年後の夏)
もちろん親友ともなれば、恋バナの一つや二つは日常茶飯事。当時の彼女には恋人がいて、それはもう誰もが羨む程の素敵なカップルだった。幸せにつつまれていた彼女はいつも、「早く△□くんといとが付き合えばいいのに!あたしが誰よりも応援してるし、なんなら二人のキューピッドにだってなってやるんだから!」と嬉しそうに盛り上がっては 私の背中を押してくれる大切な存在だった。


2年後、中学3年生の春。
春の一大イベントといえばクラス替えだ。
廊下に張り出されたクラス表の、私と同じクラスの名簿に△□の名前はなく、しょんぼりとしている私のところへ親友が駆けてきた。

「いとの隣のクラスになった!△□も一緒!」
そう嬉しそうに私に告げた彼女は、“△□といとをくっつけるチャンスだ”と小さな声で付け加えた。

無邪気に笑う彼女の笑顔を見て、「いいな、私が同じクラスだったらよかったのに」と思う自分がいた。そしてそんな風にしか思えない自分のことがとても嫌だった。けれど、どうしても、言葉には言い表せないモヤモヤと嫌な予感が脳裏をよぎっては頭から離れなかった。



三年の新学期が始まって数ヶ月が経った頃、私の“嫌な予感”は的中する。

「隣のクラスの△□と親友ちゃん最近いい感じだよね~!親友ちゃん曰く両想いなんだって!」

耳を疑うような噂が舞い込んできた。

彼女、かつてお付き合いしていた恋人とは遠距離を期に自然消滅していた。どうやら私の“応援”をしているうちに、好きになってしまったらしい。よくある話、呆れるほどにベタな展開。

結局、両想いだというのは彼女の思い込みで、この噂の三ヶ月後に私と△□くんは付き合った。


親しかったはずの彼女はいつからか私を憎むようになり、「あいつが私の恋人になるはずだった△□を横恋慕した。」と周りに言いふらした。いつも誰よりも傍で応援していてくれた彼女と私、その近すぎる距離感故にその関係が崩れてしまった。今考えれば元恋人の方にも思わせぶりのような態度があったのだろうし、一概に彼女を悪者にすることは出来ないけれど。

そんなこんなで、仲の良かった彼女と私は、彼女から全てのSNSをブロックされたのをきっかけに縁を切った。大好きだった親友を失ったショックは、元恋人と付き合っていた三年半の間もずっと癒えずに 心のどこかで後悔することさえ、多々あった。


人間の友情なんてものは脆い。
築いた時間の長さなんて関係ない、跡形もなく崩れ落ちるまでほんの一瞬だった。

当然ながらもう会いたいとは思わないし、むしろ辛くて顔を合わせたくもなかった。なのに彼女は今日、私の前に現れた。おまけに大学まで同じだというのだから。

神様、一体何事ですか。私が何をしたというのですか。

心の底では会いたくて堪らなかった、でももう二度と、純粋に笑いあったあの日には戻れないし、わたしはきっと彼女を許すことは出来ない。この広い世界で今、このタイミングで再会したことに意味はあるのだろうか、どれだけ考えても私にはやはりその意味はわからない。


ーたかが中学生の痴話喧嘩、ばかばかしい。
そう割り切って考えることが出来たのならどれほど救われただろうか。
ーされど友情の喪失。
大学生になろうとしている今でも、親友という大きな存在を、恋人という存在の代償として失ったことを受け入れられずにいる。

今となってはそこまでして得たその恋人の隣でさえも失っただなんて、もう笑っちゃうよね。

そんなこんなであと3日、私も大学生になる。

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