いと

移ろいゆく季節の中で 変わらない思いを綴ります

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移ろいゆく季節の中で 変わらない思いを綴ります

最近の記事

これはきっと、この世界でもっとも愛おしく凶悪な呪い。

去年の今頃、まいにちこの花の姿をうつしては、ぼうっとわたしの隣でねむる猫に見せるのが日課でした。 そしてそれをみると彼は、ああきれいだねぇ、と欠伸をしながら言うのでした。それがおきまりでした。 ある日、珍しく猫の方からわたしにこう尋ねました。 この花の名前、なんて言うの? カンパニュラ。鐘のような形をしてるでしょう。 そっか、そのまんまだ。 かわいいよね。わたし、このお花がとても好き。 かわいいね、カンパニュラか。 うん。 机の上でかわいらしく咲いていたカンパニュラが跡形

    • あのひとも、きみも、わたしも。

      わたしは、わたしをあまり好きじゃない。 いわゆる自己肯定感ってやつがない。 それは別に容姿とかそういった表面的なものではなく、もっと奥深くにある、人間の本質的なところが、好きになれない。 そして最近、あることに気がついた。なぜわたしの恋は実らないのか、そして初めからハッピーエンドにはならないとわかりきっているのに、そんな恋ばかりを自ら好んで選び続けてしまうのか。 わたしは人一倍自分のことを好きになりたくて、いつだってそうなるように努力しているし、祈ってきたつもりだ。そして

      • 大好きだったあの頃の面影を探すのはもうやめろとあれほど言ったでしょう

        神様は意地悪だ。 好きな人とは会わせてくれないくせに、会いたくない人に限ってばったり再会させるだなんて。 今日、私の人生において唯一縁を切った相手と遭遇した。正確には私が気づいただけだけれど。 綺麗に切りそろえられたボブ、華奢な体。 たったの一瞬だったけれど マスクをして俯いた彼女は間違いなくあの子だった。 遡ること中学1年生、今日見かけた彼女と私は大親友だった。クラスは違えど、休み時間になればお互いの元に飛んでいってはチャイムが鳴るまでお喋りして、放課後になればどちら

        • 卒業②

          春の訪れにしては派手すぎる、 そう思うほどによく晴れた空の下で、今日私は高校を卒業した。 そして、好きなひととも もう会えなくなった。 「写真一緒に撮ろ!」 そう言って撮ってもらった写真に写る私は、どこの誰から見ても“恋する乙女”のそのもので、本当に可愛かった。自分で言うのも何だけど。 打ち上げの後、それぞれが駅に向かう時 今が最後のチャンスだ、そう思った。けれど彼との別れを惜しむ女子は後を絶たず、結局いつものお取り巻き女子四人に囲まれた彼に話しかけることはできず、別れ

        これはきっと、この世界でもっとも愛おしく凶悪な呪い。

          大丈夫は自分に言い聞かせるための言葉じゃない

          思い返せば 小学校の高学年に上がる頃から、どの担任の先生も決め事で真っ先に指名するのはいつも私だった。もちろんそこで頼まれた仕事は抜かりなく全うしてきた。だから当然周りからも慕われるようになり、何かあれば“頼れるいとちゃん”にみんなが声をかけてくれるようになった。 別に頼られることはきらいじゃないし、常に何かしらの仕事に取り組み、やることが目の前に積み重ねてあることには慣れっこ。むしろ自分がその度に周りから認められる気がして、いつの間にか“頼れるいとちゃん”こそが私だった。

          大丈夫は自分に言い聞かせるための言葉じゃない

          雨の降る日、気まぐれなきみに傘を差しのべるのは私でありますように

          「じゃあ、私達こっちの駅から帰るから」 そう言って友人ふたりは私と好きなひとを残して、私たちとは反対方向の道へ帰って行った。そして残された私たちはふたり、肩を並べて駅まで向かうことになった。 「さむいね」 そう言って、自称“日本一のさむがりさん”なきみは、寒そうに腕をさすった。だがおかしなことに、雨が降る中で一向に傘をさそうとしない。 「卒業式に風邪ひいたら笑えないよ」 「おれフランス人だから傘はささない」 フランス人は傘をささないらしい。 どこで覚えてきたのかも

          雨の降る日、気まぐれなきみに傘を差しのべるのは私でありますように

          もしもねこに生まれ変われたなら

          「△□くん、第一志望A大にしたらしいよ」 中学時代の友人から、なんの前ぶりもなく突然やって来た半年ぶりの連絡だった。 △□くん、というのは私の元恋人で 私の中学時代すべてを捧げた人。彼とは一昨年の秋まで、遠距離恋愛をしながら3年半付き合った。 「今更何を△□のことなんて。」 そう返そうと思った。ん?ちょっと待って。 A大って、あのA大?東京にある、あの大学? これ程に私が反応したのには理由がある。 何故ならA大は、かつて私たちがお互いをそれぞれの将来に描いていた頃、地元

          もしもねこに生まれ変われたなら

          卒業

          ゆっくりと歩きだそう この道、未来へと続く さよなら 泣かないで 忘れないよ 離れても、愛しています EXILEの「道」 この歌を歌った今日、今まではぼんやりとしか認識できていなかった「卒業」の二文字の輪郭が突然はっきりと浮かび上がった。 8日後の3月9日、晴れて私は高校を卒業する。 3月9日といえば レミオロメンのあの有名な卒業ソングを思い浮かべる人がほとんどだろう。そんな有名な日付に、高校生活の締めくくりを迎えられるのはちょっぴり嬉しかったりする。 話が少し逸れてし