マガジンのカバー画像

2021/01〜/日記、記憶、メモ

89
2021年のひとりごと、日記
運営しているクリエイター

#エッセイ

屋久島日記 20代最後の一人旅

屋久島日記 20代最後の一人旅

一日目 日記をつけようと思った。

 はじめから決めていたわけではない。

 宿について、檜の浴槽があると、さっき知った。

 お湯がたまるまでの間、座敷の上に大の字に寝転んだ瞬間、思いついたのだ。

 タイトルも、ひとりでに指が動いた。

 「あ、そうか。これが20代最後の一人旅になるかもしれない」と自覚し、そのままタイトルにした。

 屋久島は、肌に触れる、あらゆるものが吸いつくような湿気を帯

もっとみる
自分の老いは自分で決めたい

自分の老いは自分で決めたい

 「おとなになる」ことの意味を、かんがえる。

 歳を重ねて思うのは、年齢関係なく、おとなと呼ばれる人々は意外と、みな必死だし、時にいいかげんだし、泥臭いということ。

 身体だけは、野生の秒針を忘れていない。年々、着実にしわが増え、内臓機能はおとろえ、肉はどろん、とたれてくる。

 身体は、老いると、どんどん下へ下へとしずんでいく。まるで土に近づくように。そのまま埋もれて還る日までの、準備のよう

もっとみる
真夏の前夜の夢

真夏の前夜の夢

 気づいたら、南での暮らしが、すでに二週間以上も経過している。

 夜7時、やっと暗くなる。聞いたことのない、虫の声がする。久々に蚊に刺される。中指と薬指の付け根。あー、なんで気づかなかったんだ、と思いながら、かゆみをこらえる。朝からサウナのような蒸し暑さ。まだまだ序の口、と言わんばかりに、太陽の高さと共に、湿度も上がる。

 キツネではなく、たぬきが道路を横切る。キツネより、まるいからだ。顔も大

もっとみる
早く行きたいなら1人で。遠くへ行きたいならみんなで。

早く行きたいなら1人で。遠くへ行きたいならみんなで。

 タイトルは、アフリカのことわざ。

 大好きな言葉。好きすぎて、自宅の窓ガラスに、白インクで描いた。

 5年前、同じタイトルのnoteも書いた(忘れてた)。けれど、今回はまったく違う視点で、この言葉をかみしめている。

 今年の春から、南へ行くことになった。鹿児島だ。北海道から、鹿児島へ、気候も伝統もまったくちがう土地で、またゼロから、新しい生活を始める。

 転職も引っ越しも、まったく想定し

もっとみる
世界平和はおとずれない

世界平和はおとずれない

 「こうであってほしい」と願う世界は、ある。

 けれど、わたしが「こうであってほしい世界」は、誰かにとって「こうであってほしくない世界」かもしれない。

 たらればで語る未来に対して「願うだけじゃ叶わないよ」と、はっぱをかける自分と他人に、鼓舞されたり、惑わされたり。

 相手が思いどおりにいかなかったり、矛盾する行動をとったりすると、腹が立つこともある。

 白黒つけたい他人と、白黒つけられな

もっとみる
「どんな人間になりたいですか?」という質問に対する答え

「どんな人間になりたいですか?」という質問に対する答え

 このまえ、「今後、どういう人間になりたいと考えていますか?」という質問を受けた。

 「うーん」と言いながら

 「あれ、わたし、どういう人間になりたいんだっけ」

 と、我に返った。

 そういえば、「人として、こうありたい」「こんな人間になりたい」という目標を、ずいぶん、持たずに生きてきたことに気づいた。

 「自由でいたい」とは、思う。

 でも、「自由でいたいです!」と答えようとは思わな

もっとみる
血肉化と学び直し

血肉化と学び直し

 物語を書き始めて、つくづく、自分の器の小ささを思い知る。

 ここで言う「器」とは、人がらの意味ではない。感受性の受け皿、とでも言うべきか。

 自分のなかから湧き上がるものの、なんて薄弱なことよ。説得力の無さに、何度も書く手が止まる。

 自分の感覚だけを頼りにしてつくられた物語は、まるで霧のようだ。何かを言っているようで、何も言っていない。何か言いたげなことだけ伝わるか、むしろそれすら伝わら

もっとみる