【ショートショート】公園の水飲み場とinstagramとtick tock と…

秋の陽気で気持ちの良い昼下がり。

グレープフルーツのカリスマが、
とある公園の水飲み場の前に立っていた。

頭にはグレープフルーツの皮を何枚も合わせて作った帽子をかぶっていて、白いタンクトップにズボンはまるでグレープフルーツの房のようなカボチャパンツを履いていて、靴はグレープフルーツの柄のビーチサンダルだ。

見た目はとても怪しいが、この公園付近では彼は有名人で、彼にグレープフルーツを渡してとある儀式をうけると妊婦の悪阻が軽くなりさらに安産になると噂だった。

今日も1人の悪阻で苦しむ妊婦が彼の元にグレープフルーツを持ってやってきた。
彼は妊婦からグレープフルーツを受け取ると、小慣れた様子で質問した。
「ぎゅっと絞ってジュースにするか、皮を綺麗に剥いて房にして食べるか？」
妊婦は悪阻で気持ち悪いのを我慢しながら、小声で「房でお願いします。」と答えた。

グレープフルーツのカリスマは妊婦の要望通り、渡されたグレープフルーツの硬い皮を器用にむいて房の白い筋の部分も綺麗にとって、まるで高級スイーツに入っているかのような綺麗な皮の剥かれた状態の実を妊婦に渡して食べさせた。