見上げればいつも四角い青空#26 ヘルシンキに想いを馳せる/映画『かもめ食堂』を観て
少しネタバレを含みます。
フィンランドのヘルシンキの一角、石畳の坂道の途中にあるガラス張りのお店、一見何のお店かも分かりづらい、その名もかもめ食堂。中を覗くと店内は、木目を基調としたインテリアで満たされ、カウンターに腰を預け、皿を拭く日本人女性。
店の外では年配の女性3人が中を伺いながら、こそこそ話。「大人かしら?」「あんなに小さいんだから子供じゃないの?」という感じ。
サチエが気づいて、お辞儀するとそそくさと立ち去ってしまう。
かもめ食堂は、未だお客さまは“ゼロ“だ。危機的にも思えるが、サチエは悟りを開いているかのように、こころ静かにゆっくりと生きている。
映画『かもめ食堂』は、サチエを中心に、かもめ食堂お客さま第一号のフィンランド人学生、運任せに世界地図を指差してヘルシンキを訪れ、ひょんなことをきっかけに手伝うことになるミドリ、両親の介護から解放されエアギター選手権を観るためにヘルシンキを訪れ、ロストバゲージで帰るに帰れなくなったマサコ、そしてヘルシンキの人たちとの間で起こるさまざまな小さな出来事を追っていく。
概念としては矛盾しているが、かもめ食堂を定点としたロードムービーだ。
“転”もなく、静かな映画だったけど、ヘルシンキに住まうサチエのそばに立ち、一緒に生活し、小さなサプライズに驚き、カノジョらの隣でなんと声をかければいいのかと悩んでしまう。
劇中には、日本人が考える美味しい和食がたくさん登場する。
なによりかもめ食堂一押しのおにぎりは、サチエらの手の中で頭だけちょこんと見える、とても美味しそうなものだった。感想戦でおにぎりを食べずにはいられなかったくらいに(笑)。
フィンランドの人はサーモンが好き。日本人は鮭が大好き。だからきっとフィンランドの人たちにはおにぎりが合う!
和食を気に入ってくれると信じて、悟りを開いたように生きるサチエの話に耳を傾け、トランジットでしか訪れたことのないヘルシンキに想いを馳せた。
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