5 海の神様に捧ぐ儀式
火傷をし、詐欺に遭い、散々な旅行初日。
でも、二度と見ることはできないかもしれない、サンテリアの神秘的な儀式を見ることができました。
サンテリアとは
サンテリア(ヨルーバ)とはアフリカ由来の宗教のこと。
スペイン植民地時代にアフリカから奴隷として連れて来られた人たちが強制的にカトリックへ改宗させられる中で、彼らの精神的な支えとなり、ひそかに守り続けていたアフリカの宗教とカトリックが融合した宗教。
信仰者にはそれぞれオリシャ(守護神)が決まっています。
オリシャごとにカラーがあり捧げ物も異なります。
以前紹介したOshunの色は黄色。
戦士のChangóは踊り、雷、稲妻、太鼓、火の守護神。色は赤と白、など。
キューバの街を歩いていると、よくビーズのブレスレットやネックレスを付けた人を見かけますが、皆それぞれの守護神の色のものを付けています。
それから道の角に鶏が置かれているのを見かけることもよくあります。それはサンテリアの捧げものの一つ。
Festival de Caribeで行われていたのは、海の女神Yemayáの儀式。
”Oda a Yemayá.”(ジェマジャへの頌歌)と呼ばれ、Juan Gonzálezの浜辺で行われました。
Casa del Caribeからバスで2、30分揺られて到着したところは、山というか崖に囲まれた海。
そこにも屋台が出ていて、ジュースやビール、パイナップルやマーモシージョと呼ばれるフルーツなどが売られていました。
マンモシージョはその身自体は少なく、中に大きな種が入っています。
海沿いの砂利にはその皮や種がごろごろと転がっていて、最初は海からやってきた植物なのかと思っていたほど。みんなが食べたものをそこに捨てていただけでした(笑)
儀式のはじまり
海の一角で、儀式を行う準備がはじめられました。
岩に布をかけ、草が集められ、鶏がつれて来られる。
すぐ横には信仰の対象となっている石に顔がついたような偶像を持った女性が座っていて、人々はそれに向かって簡単なお祈りをする。
岩に布と草が飾られ祭壇が作られ、そこにケーキが置かれる。
ケーキ?
現代的なものもお供えするんだな〜、と思っていると
祭壇の下には、鶏が何羽か置かれました…。
しばらくすると、荷台引きずった馬がやってきました。
その方向から何か動物の声がします。
よく見ているとその荷台から手足を縛られたヤギが運びおろされています。
ヤギが祭壇の方へ連れてこられ、一人の女性がヤギの頭に何度もキスをします。
なんだか嫌な予感がする…
その予感は的中。
一人の男性が椅子に座りヤギを抱え、別の男性がヤギの首を切り始めたのです。
何とも生々しい光景。ヤギが泣き叫ぶ声が聞こえ、それまでずっとビデオを回していましたが、見てはいられなくなり、撮影中止。
私たちは岩の上からその様子を見ていたのですが、そこまで獣のにおいがしてきました。
切り終えると、血まみれになったヤギの首が鶏と共に祭壇の下に置かれる…。
祭壇の前には、赤い服に紫のスカートのようなものをまとった男性が2人、白い服に同様のスカートを着まとった男性が1人、Batáとよばれるサンテリアの神聖な楽器とされている太鼓を持って座っていました。
そして祭壇のほうに向かって、声を発しないままBatáをたたき演奏を始めました。
しばらくすると、今度は海の方に向きを変えます。
何人かが楽器にキスをし、お金のようなものを箱に入れる。
そして一人指揮を執る男性が楽器の音に合わせて歌い始めると、楽器側に向かって円を描くように集まっていた人々がそれに合わせて歌い始めました。
しばらく踊りが続くと、楽器へキスを終えた女性が円の中心で踊り始めました。次に松葉杖をついた体の不自由な外国人らしき白人男性が踊り始めます。
最近では、外国人がサンテリアなどのアフリカ系の宗教に関心を持ち改宗する人もいるとか。
関心を持つのは良いのですが、関心を持つあまりその好奇心から本当にその宗教について理解せずに入ってしまい、様々な問題が生じていると聞きます。
特にこういった宗教は特殊です。興味本位で”信仰”するのは危険。
取り憑かれる瞬間
その後も何人か代わる代わる踊っていきます。
中心で踊っていた一人の男性の様子がなんだかおかしい。
動きが激しくなり、そして海へ入っていきました。
荒波にもまれながらも鶏のような踊りを続け、時々笑うように鶏の声を出しています。
儀式を指揮する一人の男性が、常に彼の傍に付いています。
周りの人は歌いながら彼の様子を見ていました。
陸に戻ると、祭壇の前に座り頭を下げ、再び人々とあいさつを交わしたり、話をしながらその場から人に支えられながら離れていきました。
しばらくすると、その男性が青いスカートのようなものをまとい、頭には青いスカーフ、そして白い布を顔に巻いて戻ってきました。そして、再び円の中心に戻り踊り始めます。
青はYemayáのカラー。
今度は普通に立っていた女性が急に全身にけいれんを起こしたかのように暴れだし、その場に倒れました。
頭と上半身が異常なまでに激しく動いていて、それは遠くから見ていても恐怖を感じるほど。
近くにいた人が彼女を立たせ、一人の男性が彼女の左右の耳元で何かをささやく。
すると彼女は正気に戻り、別の場所へ連れて行かれました。
どうやら彼らは取りつかれたようです。
しかし、取りつかれたままだとこの世に戻って来られないので、正気に戻させるといいます。
その後も最初にとりつかれた男性を中心に歌と踊りの儀式が続けられ、最後は皆その場から歌いながら、そして演奏しながら去って行きました。
ビデオを用意したので、ぜひリアルな儀式の様子をご覧ください。
なんとも濃い時間。
なかなか衝撃的なものを見ました、、、。
こうやって一つの神様の儀式を見ると、他の神様の場合はどうなんだろう? と興味がわきます。
こんな貴重な経験、なかなかできるものではありません。
まだまだ旅は始まったばかり。
火傷、詐欺、儀式
こうして、ようやく旅の初日が終わりました。
つづく...
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