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【多様性を考える絵本】ぼくらのサブウェイ・ベイビー

これは、ニューヨーク市の地下鉄で
自分の家族を見つけたある赤ちゃんのおはなし。
≪中略≫
まるで奇跡のような本当の出来事です。

「ぼくらのサブウェイ・ベイビー」見開きページより

今回紹介するのはアメリカで2020年に「Our Subway Baby」として発行、日本では今年の4月に発行されたばかりの絵本です。私が好きなノンフィクションのお話です。

とある男性が、地下鉄の駅で生まれたばかりの赤ちゃんを見つけたところからお話は始まります。たった数分しか会っていないのにもかかわらず、この男性と、一緒に住むパートナーの二人は、この赤ちゃんのことが気になってしょうがなくなっていました。
すると、家庭裁判所の裁判官から、赤ちゃんを養子にしないかと提案されます。
男性は戸惑います。今まで、赤ちゃんを育てるということは考えたことがなかったし、パパふたりの家庭が赤ちゃんを迎えることは、簡単なことではないと思っていたからです。
そう、男性とパートナーは同性カップルでした。さらに二人の部屋は広くもなく、貯金もない。でも、裁判官はいいます。「愛があれば、なんだって可能ですから。」と。

この絵本、表紙やタイトルだけではどんな本かわからず、読み始めは、赤ちゃんがニューヨークの地下鉄の駅に捨てられているなんて、ちょっと怖い事件が待ってるのかな?と思ったりしたんですよね。でも、全く違って、とてもあったか~~い気持ちになるお話でした。

大人目線でこの本を読むと、こんな簡単に養子縁組がうまくいくなんて…と思ったりもするのですが、本当に20年前にあった実話なんですよね。”ニューヨークってやっぱりすすんでるな、すごいなぁ”と感じましたし、この男性カップルに赤ちゃんを養子にすることを提案した裁判官は、見る目がある方だなとも思いました。
絵本の作者は赤ちゃんを見つけた男性のパートナー、つまり赤ちゃんの父親の一人なのですが、文章から赤ちゃんへの深い愛情や、赤ちゃんを見て何か家族になる運命を感じたんだということが伝わってきます。

絵本には赤ちゃんが地下鉄で見つけられ、3人が家族になったところまでしか描かれていませんが、本の最後(カバーの部分)に「作者からの手紙」というものがあり、ニューヨーク州で同性婚が認められた翌年の2012年には男性2人は結婚をしたこと、息子は大学生になって183cmにもなったことなどが書かれています。3人の写真も載っていて、とても幸せに過ごしていたんだろうなということがわかります。
日本では、特別養子縁組の条件は厳しく、同性婚も認められていませんが、いろいろな家族の形があっていい、という考え方がどんどん広がっていけばいいなと思います。
こういう本は、もともと偏見などはない子どもたちは結構すんなりと"いい話だな~”と聞いてくれますが、大人は色々考えさせられるんですよね。日本でもし同性カップルと子どもという家族の形が法律で認められたとしても、子育てしにくい環境じゃないかな、とか。(特に男性カップルにとっては)

絵本というのは、だれでも簡単に読めますが、年齢や読む時期、時代によって受け取り方は変わるのが面白いなぁと感じます。この絵本が10年前にあって、その時代に読んでいたらどういう風に感じただろう、はたまた10年後に読んだら…? 時間を空けて、また子どもとともに読んでみたいと思います。

先日、この本を6年生の読み聞かせに読んだのですが、じっくり聞いてくれました。担任の先生も、この本買いたい!とメモしてくれていました。子どもに喜んでもらえるはもちろんですが、自分が好きな絵本が大人にも響いてもらえるのって嬉しいなと思いました。






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