ゆるくSWOT分析:海外版note!?「Medium」
どうも、みらしんです。
ネット界隈で話題のサービスについて、ゆるくSWOT分析で紹介しています。
今回は、海外版noteとも言われている「Medium」の紹介です。
ちょっと長くなってしまいました(^_^;)
Mediumとは?
Mediumはブログの投稿と閲覧ができるプラットフォームです。
ツイッターの共同創業者であるエヴァン・ウィリアムズ氏が2012年に立ち上げました。
サービスの理念は、書き手と読み手の深いつながりを作ることです。
質の高いコンテンツにこだわり、広告の掲載がありません。
(アフィリエイトは認められているようですが)
ビジネスモデルはとてもユニークです。
読み手は、月5ドルを払うとMediumのメンバー会員になれます。
これがMediumの収入源です。
メンバー会員はMediumのすべての記事を読むことができます。
書き手は、記事の公開範囲を全員かメンバー会員限定かどちらかで選ぶことができます。
書き手は、メンバー会員向けの記事において、メンバーが読んだ記事の時間、反応などによって、Mediumから収益を得ることができます。
つまり、
書き手は収入を得るために良質な記事を書き、メンバー会員向けの記事を増やす
↓
読み手は良質な記事を求めて、メンバー会員になる
↓
Mediumの収益が増える
というビジネスモデルが成り立っています。
MediumのPVは伸び続けており、月12億PVを超えています。
※画像元:What’s Around the Corner for Medium
メンバー会員は、数十万人いるようです。
Mediumがどんなサービスかわかりましたか?
それでは、ゆるくSWOT分析をしていきましょう。
Mediumの強みは?
強みを3つ紹介します。
①質の高い記事が集まるビジネスモデル
1つ目は、質の高い記事が集まるビジネスモデルです。
そもそも、なぜ記事の質は落ちるのか?
その1つの解は、書き手が広告収入に依存してしまうからです。
広告収入はPV数に比例するため、書き手は記事の質よりも量を意識してしまいがちです。
Mediumはこの広告モデルを排除しました。
これは広告が収益源である競合が真似できない強みです。
また、ユーザーがMediumを支持する強みでもあります。
これに加えて、
・記事の質を定量化して収益を還元するプログラムの提供
・良質な記事をサービスの目立つ位置にピックアップして掲載
といった取り組みにより、記事の質を高めています。
②書き手のモチベーションを上げる収益モデル
2つ目は、書き手のモチベーションを上げる収益モデルです。
Mediumの収益還元プログラムでは、書き手は記事が読まれれば読まれるほど、読み手から反応があればあるほど、収入を得ることができます。
広告のようにクリックされなくても、noteのように課金されなくても、収入を得ることができます。
書き手の9%は月10,000ドル以上、1%以下のトップライターは月5,000〜30,000ドルの収入を得ているようです。
この収益モデルによって、記事の供給が増える→ユーザーが集まる、という好循環が生まれています。
③書き手と読み手がつながる機能の充実
3つ目は、書き手と読み手がつながる機能の充実です。
Mediumにはnote同様に書き手と読み手がつながる機能が充実しています。
ざっと、
・書き手をフォローする機能
・書き手に拍手を送る機能
・書き手にコメントする機能
・フォロー者にニュースレターを配信する機能
・Mediumからオススメの書き手や記事のレコメンド
などがあります。
また、Mediumの収益プログラムも、読み手と書き手のつながりが深くなればなるほど、書き手への還元が多くなるため、これもつながりの機能と言えるでしょう。
これらの機能によって、新しくつながる、深くつながる、という環境が生まれています。
このつながりは、一般的なブログ運営では実現するのが難しいMediumiの強みだと思います。
Mediumの弱みは?
弱みを3つ紹介します。
①月5ドルを払わないと多くの記事が読めない
1つ目は、月5ドルを払わないと多くの記事が読めない点です。
Mediumの収益プログラムの対象は、会員メンバー向けの記事になるため、会員メンバー向けの記事が多くなっています。
Mediumで★が付いているがメンバー会員向けの記事ですが、ほとんどに★が付いています。
無料でも月に3記事まで、メンバー会員向けの記事を読むことができますが、それ以上は読むことができません。
メンバー会員以外、多くの記事が読めないことから、ユーザーのグロースには限界があるのではないかと思います。
また、メンバー会員が増えずに、メンバー会員向けの記事が増えつづけた場合、供給過多で書き手1人あたりの収益還元が減る→書き手が減る→サービスの価値が失われる→メンバー会員が減る→収益還元が減る…といった負のスパイラルに陥るかもしれません。
②書き手の収入源が限られている
2つ目は、書き手の収入源が限られている点です。
書き手がMedium上で収入を得るためには、Mediumの収益プログラムか他社のアフィリエイトリンクを貼る方法しかないと思われます。
広告は掲載できず、noteのように記事の販売や定期購読の機能もありません。
記事のプロモーション色が濃くなると、ルール違反になる恐れもあります。
このため、他の方法で収入を得たい書き手は、Mediumを選ばない、もしくは、選ばなくなるでしょう。
③自由にカスタマイズができない
3つ目は、自由にカスタマイズができない点です。
Mediumは書くことにフォーカスできるUI/UXです。
そのため、デザインや機能など、カスタマイズに制限があります。
ブログを個性的なデザインにしたい!→できない
計測ツールを導入したい!→サポートにメールでリクエストして結果を待つ
こんな感じです。
カスタマイズに自由度を求める書き手は、Mediumではなく、WordPressなどのCMSを選ぶことになると思います。
Mediumの機会は?
機会を2つ紹介します。
①クリエイターの増加
1つ目は、クリエイターの増加です。
ここ最近、パッション・エコノミーという言葉が話題になっているように、個性を発信し、人とつながり、収入を得るクリエイターが増えています。
YouTubeのチャンネル数は3年で2倍以上に伸びています。
※画像元:How Many YouTube Channels Are There?
このクリエイター増加の傾向は、コロナによる自粛の影響により更に加速するとも言われています。
海外の事例では、会社をクビになったライターが、Substackというニュースレターのサービスを始めて、読み手から直接収入を得るという話も聞きました。
この傾向は、Mediumにとって機会と言えると思います。
②サブスク市場の盛り上がり
NetflixやSpotifyなど、定額課金サービスに課金するユーザーが増えてきました。
Netflixの加入者は3年で1億人も増えています。
※画像元:Netflix、最高益も会員増220万人に鈍化 コロナ消費一服
日本のサブスク市場も右肩上がりに伸び続けています。
※画像元:2020年度に7873億円で23年度に1兆円規模の見込み、国内サブスク市場
盛り上がりの背景として、ユーザーは良いものにはお金を払い続けるという傾向が強くなっているように思います。
Mediumも質の高い記事を掲載し、メンバーから定額課金するビジネスモデルです。
このため、サブスク市場の拡大は、Mediumのメンバー会員が増える機会と言えるかもしれません。
Mediumの脅威は?
脅威を2つ紹介します。
①動画メディアや音声メディアの利用時間拡大
1つ目は、動画メディアや音声メディアの利用時間拡大です。
今、YouTubeやNetflixなど、動画の可処分時間が爆発的に増えています。
日本の情報ですが、YouTubeの利用時間が前年比29.4%伸びたという報道もあります。
また音声メディアの市場もここ最近盛り上がってきています。
時間の消費がテキストから動画や音声にシフトしているようであれば、テキストメディアであるMediumにとっては脅威になりえるでしょう。
②ニュースレターメディアの拡大
海外では書き手と読み手が直接つながり、書き手が収入を得ることができるニュースレターメディアが流行しているようです。
代表サービスは、2017年にリリースしたSubstackです。
Substackは自分でニュースレターの料金を決めて、読み手から定額課金で収入を得ることができます。
上位16名のライターにもなると、年間16万ドルほどの収益を稼いでいるようです。
ニュースレターメディアのほうが稼げる、質の高いコンテンツに出会える、そんな風に思うユーザーが増えてしまう場合、Mediumからユーザーが離れてしまう脅威になると思います。
Mediumは今後どのように進化すべきか?
最後に、SWOT分析からMediumが今後どのように進化すべきか考えてみます。
2つ考えてみました。
①書き手の収入源の多様化
1つ目は、書き手の収入源の多様化です。
Mediumの書き手の収入源は、主にMediumからの収益還元プログラムに限られています。
そこで、書き手が定期購読や記事販売でも収入を得ることができるように進化します。
書き手の収入源を増やすことができれば、より多くの書き手がMediumを使い、良質な記事が増える可能性があると思います。
また、良質な記事が増えれば、読み手も増える可能性があると思います。
この施策を進める場合、現在のエコサイクルを崩さないために、新しい収益の一部を現在の収益還元プログラムの原資にするなど、運営上のバランスが重要になってくるでしょう。
②音声メディア領域への進出
テキストよりも、動画や音声が成長するなかで、Mediumも進出を考えるべきだと思います。
ただ、動画はYouTube、TikTokなど強力なプレイヤーがいるため、新規として参入するのは難しいと思います。
一方で、音声は市場を寡占するようなプレイヤーがまだいません。
音声領域であれば、Mediumで書いた情報を音声で伝えるだけで、より多くのユーザーにリーチできるため、Mediumの書き手との相性も良いと思います。
先ほどのSubstackでは、ニュースレターだけでなく、音声メディアに発信できる機能も提供しています。
事前に書き手の声を入力しておけば、ブログに投稿した内容からポッドキャストが自動生成する、そんな機能があったら差別化にもなり、面白いと思います。
以上、MediumをゆるくSWOT分析してみました。
果たして、Mediumはこのまま質の高い記事を提供し、メンバー会員を集め続けられるのでしょうか。
それとも、テキストメディアの衰退と同時に、ユーザーを失ってしまうのでしょうか。
あなたはMediumがどのように進化すると思いますか。
今回のブログは以上になります。
お付き合い頂きありがとうございました!
ブログ、ツイッターでも情報を発信していますので、良かったら見にきてください。
<本記事の参照情報>
・What is Medium?
・Medium (Webサービス) - Wikipedia
・What’s Around the Corner for Medium
・関係性を重視するメディを志向するMediumの今後
・noteとMediumは本質的に別物だ
・Mediumを始めるときに知っておきたい55のポイント
・Can I Make Money Writing on Medium?
・Should You Publish on Medium? The Pros and Cons for Growing a Blog
・Medium Rules
・Netflix、最高益も会員増220万人に鈍化 コロナ消費一服
・2020年度に7873億円で23年度に1兆円規模の見込み、国内サブスク市場
・How Many YouTube Channels Are There?
・ウィズコロナの可処分時間消費 動画、音声、コミックが存在感
・Podcast Advertising to Exceed $1 Billion by 2021
・なぜいま、有料 ニュースレター が支持されるのか?: サブスタック CEO クリス・ベスト氏
・a16zがニュースレターに注目する理由ーーメルマガ配信「Substack」が1530万ドル調達
・How to use Substack for podcasts
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