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Apple HomePod miniの発売開始から、未来を予報|新たなカースト制度ができる?!

こんにちは。VISIONGRAPH Inc.です。
11月6日にAppleのHomePod miniが発売されましたね。ここから見える予報を、未来学者のAmy Webb氏のレポートを読み解きながら解説していきたいと思います。

私たちVISIONGRAPH Inc. と、このシリーズについて

私たちVISIONGRAPH Inc.は未来像をつくる専門会社で、海外のイノベーションリサーチをベースに企業に対して未来の予報を活用したコンサルティングをしています。
いつもは海外のイノベーティブな新ビジネスやアーティストの持つビジョンを読み解きますが、このシリーズでは、今話題になっているニュースから見える未来の予報を解説していきます。

アメリカの未来学者 Amy Webb(エイミー・ウェブ)氏

私たちVISIONGRAPH Inc.が日本事務局を務める米国最大級のカンファレンス&フェスティバルSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)でも、毎年人気のスピーカーとなっているのが、未来学者のAmy Webb氏です。
2020年のオンラインセッションは、当社の方で日本語字幕もつけているので是非ご覧ください。

彼女は毎年「2020 Tech Trends Report」というレポートを無料で公開し、SXSWでも講演を行っています。当社も参考にしている非常にユニークな未来学者です。
彼女はレポートの中で、様々なテクノロジートレンドから、未来のシナリオを発表してます。
このシリーズでは、Amy氏のレポートにあるシナリオの翻訳を掲載しながら、今日本で話題な出来事からみえる、未来の予報を解説します。
是非Amy氏のレポートもDLしてみてくださいね。

AppleのHomePod miniが11月6日に発売!

今ではホームアシスタントが家にある人も日本では少なくないかと思います。我が家にも二代のGoogleアシスタントが、毎日活躍をしています。Appleの発表で新しく注目を浴びたHomePod mini。手頃な値段で魅力的ですよね。「購入する!」というtwitterの書き込みもよく見かけます。

とはいえ、まだまだホームアシスタントの日本での普及率は2019年では6%にとどまっているようです。
しかし、認知率は76%ということで「Apple製品だったら...」ということで、今回を期に家に導入する人もいるかもしれません。

各社の競争と、それが導くホームオートメーションの未来

Amy Webb氏の 2020Tech Trandの22. Home Automationの中にある未来のシナリオではこんな事が書かれています。
日本語に翻訳したものを下記に引用させていただきます。

2035年、Appleファミリーは比較的裕福で高齢な人々です。
彼等はAppleの洗練された美しいハードウェアをすべて買うことができます。Appleのスマートグラス、IoT接続トイレ、カスタム冷蔵庫は、"直感的で使いやすく高価である"というAppleの伝統を継承しています。
Appleのシステムには、音声インタフェースが搭載されており、2種の声から選択が可能です。
しかし、AppleのA.I.システムは上書きによる調整ができないため、利便性には次のようなコストが伴います。Appleのホームエアコンでは、ドアを1分以上開けっぱなしにすると、システムが絶え間なくブザーを鳴らし続けます。また、電球に埋め込まれたセンサーで十分な太陽光が検出された場合は、Appleのシステムは照明のスイッチをロックして使用できなくしてしまいます。

およそ15年前、テキサス州オースティンで開催された2018年のサウス・バイ・サウスウエスト・フェスティバルで、Googleのコネクテッドホームの展示がありました。
当時のキャッチフレーズは「それGoogleにやらせろ」でした。魅力的なPRモデルは、小さなグループを作って3階建ての家を回りながら、A.I.と繋がったスクリーンや、フローズンダイキリを作るカクテルメーカー等を紹介しました。
Googleのシステムは直感的ではないが、我々のデータをうまく利用することができ、様々なレベルのサービスやアクセスを提供しています。
料金を支払う余裕があり、かつ十分な技術的知識を持っている家庭は、Google Greenにアップグレードする事ができます。Greenファミリーは自分の家のシステムを自由に上書きすることができ、コーヒーメーカーや庭の水やりシステムなど、より多様なものに接続することができます。また、彼らはGoogleによるマーケティングや広告を停止できるという特典を受けますが、彼らのデータはそれでも収集され、第三者に提供され続けます。
Google Blueは、システムの上書き権利が限定的に利用可能で、追加機能も利用可能ですが、Blueファミリーは強制的にGoogleによるマーケティングの対象となります。
Google Yellowは無料ですが、最下層の区分です。システムの上書き権利はなく、使用可能なデバイスの数や機能が少なく、個人データについても限定的な保護権利しか与えられません。

Amazonは興味深いアプローチで、最終的にはとても賢い方向に向かいました。Amazonが2018年秋に発表した音声インターフェース搭載のAmazonBasics電子レンジ等は、当時ほとんど注目されませんでした。ポップコーンの袋を電子レンジに入れて、アレクサにポップコーンを弾けさせるように指示するだけです。
当時のハイテクジャーナリストたちは、この電子レンジをアレクサの奇抜でばかげた使い方だと書きましたが、彼らはこのシステムが実際には「ポップコーンを定期購買させる為の設計」という大きな構図を見過ごしていました。この電子レンジにより、Amazonは加熱されているものと、ネットで注文されているものの両方を追跡できるからです。その商品が消費されると自動的に注文され、在庫が無くなる前に新しいものが届くのです。
Amazonは、連邦政府、州政府、地方自治体に対して、Amazon.comでの大幅な割引を提供し、調達要件を厳しく遵守し、彼らのニーズに合わせてカスタマイズされたクラウドサービスを構築・維持してきました。このような賢明なアプローチにより、Amazonは米国では社会サービスの指定プラットフォームとして定着しました。こうして、Amazonは政府資金を長期的に取り入れる方法を生み出しました。
現在、低所得世帯はAmazon Houseに住んでおり、米国の公営住宅プログラムにもなっています。Amazon Houseはどのような点においても、これまでの政府のプログラムで提供された公営住宅よりはるかに優れています。Amazon Homesは、すべての部屋にネットワークに接続された端末を完備しています。
昔の補助栄養援助プログラム(以前はフードスタンププログラムとして知られていた)は、現在Amazonが主催しており、Amazonブランドの食べ物や飲み物、家庭用品、トイレタリー、書籍が大幅に値引きして提供されています。
当然のことながら、このプログラムはシームレスに機能しています。
資金配分の遅延はなく、口座の状況を簡単に調べることができるので、すべての取引は自治体の役所で長い列を作ることなく完了されます。
Amazon Houseに住む人々は、Amazonを通して大半のものを購入するため、彼らのデータは少しずつ削り取られ、生産的に金銭化されています。AmazonのA.I.は最も広く普及しており、Amazon家庭以外でも、貴重な行動データを収集しています。


2020Tech Trand 22. Home Automation / Amy Webb.を翻訳

我が家にあるホームアシスタントはGoogleですが、miniの方は5000円以下で購入をしました。AppleのHomePod miniよりもだいぶ安いですね。
当たり前でもありますが、ユーザーのデータを収集し、広告で収益を稼ぐGoogleとしてはデバイスは安くてもいいんですね。
このような機能が追加されたり、製品の方向がこのような形として進むかどうかは、未来の{あるかもしれない}シナリオなので置いておいて、Amazonは小売、Appleは製品の販売、Googleはデータビジネスという特色をうまく活かした予報だと思います。

各社のホームアシスタント戦争の先にある{かもしれない}、「新たなカースト制度」

さらにAmy氏の2035年のシナリオを読み進めてみましょう。

A.I.の構造とシステム間の相互運用性の欠如は、個人情報データと生活環境による差別化をもたらしました。
今や我々はデジタル・カースト・システムの中にいると言えます。
Google、Apple、Amazonのどれかを選択することによって、あなたは社会的価値観と家族の価値観を一致させることを余儀なくされます
Appleファミリーはお金持ちで、おそらくA.I.にはそれほど精通しておらず、高級な住宅に住んでいます。
Googleファミリーは、裕福で技術的にも富んでいる場合もあれば、個人データをマーケティングに利用される事を良しとする中流家庭の場合もあります。あるいは、人生に於いて多くの選択肢を持つことはそれほど重要ではないと満足している人々の可能性もあります。
Amazonファミリーを体裁良く見せる方法はありません。たとえクールな道具を自由に手に入れられるとしても、彼らは貧乏です。
家族は事実上、ホームオペレーティングシステムに閉じ込められており、それは世代から世代へと受け継がれることさえあります。Google Yellowファミリーは、Amazon ファミリーやApple ファミリーになるよりも、Google Blueレベルまたは Greenレベルに移るほうが簡単です。その理由でGoogleを選択する家族は多くいます。
(中略)
AmazonファミリーがAppleファミリーと結婚する可能性はゼロではありませんが、古い格言「自分と違う者同士が惹かれ合う」はもはや当てはまりません。
A.I.による出会い系サービスでは、私たちのデータに基づいて合致する相手を探し出します。私たちがどのテック企業を利用してきたかは、大きな基準になり得るのです。
A.I.出会い系サービスによって、可能性の高い求婚者の選択肢が劇的に減少したため、選択に苦しむこと少なくなったと言えるかもしれません。
しかし、年齢の離れた相手を好きになったり、両親の賛同を得られない相手と付き合ったりという、かつての人間らしい選択肢は今ではほとんど無くなりました。
アメリカでは、自分の仲間のAppleファミリー、Google Blueファミリー、あるいはAmazonファミリー同士で結婚し、赤ん坊を持つ事にが当たり前になり、それ以外の選択は社会的に受け入れづらくなっています。
Aldous Huxleyのディストピア小説「Brave New World」で描かれた世界に近づいています。

2020Tech Trand 22. Home Automation / Amy Webb.を翻訳

ホームアシスタントの進化によってライフスタイルが変わり、そこで生活することによって家庭の価値観自体も決まってしまう...。

確かに現代の若者にフィーチャーフォンを持っている人はほとんどいないと思いますが、私たちの青春時代ではフィーチャーフォンとスマートフォンが混在し、カップルのすれ違いの原因にもなったという話も聞いた事があります。

また、私たちが無くしていこうとしている「偏見」が、形を変えて新たに生まれてくる可能性も大いにあります。

彼女の予報から読み取れるのは、この{あるかもしれない}という世界から、今自分たちが何をすべきか?何を考えるべきか?というメッセージです。
無意識に新しくホームアシスタントに頼りすぎてしまった先に、このような世界がやってくるかもしれません。
便利なものはうまく活用しながらも、自分がどのような生活をしたいのか?を常に考えていく必要があるなと学びました。

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{あるかもしれない}未来の予報から、自分たちが欲しい未来と、今自分たちがとるべき戦略を考える

VISIONGRAPH Inc.では、海外のイノベーションリサーチをベースに、このような未来の予報を社内のデータベースとしてストックしています。
それをもとに、事業構想やビジョン策定、人材育成などを目的としたワークショップやコンセプトデザインを手掛けています。
もしご興味がありましたら、お気軽にWEBサイトからお問い合わせください。


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