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📖太宰治と私の生き方

高校3年・夏の読書感想文 

栃木県立宇都宮中央女子高校・平成26年度 
校内読書感想文コンクール 優秀賞

(宇都宮中央女子高等学校・生徒会発行の松苑より)


「恥の多い人生を送ってきました。」

 この本の語りだしを読み、主人公がどれほどの苦悩を抱え、自問自答を繰り返してきたのかと、心が引き付けられた。読み進めていくうちに、この作品と太宰治に対する共感、同情の気持ちが強くなった。実に、人間味に溢れているのだ。

 大庭葉蔵は道化を演じて生きてきた。それは、人間に対する最後の求愛である、と作中で太宰は告白している。世の中の営みの不可解さに、幼い頃から絶えず、戸惑いと恐怖を抱いてきた葉蔵。月日が経れば経るほど、その不信感は増していくことになった。

 それは、まるで、人間が成長に伴って、純粋な心を失っていくかのように。それが、葉蔵にとっては、私の何倍もの大きさに感じられていたのだろうかと思うと、胸が苦しくなった。

 太宰はひたすらに、自分のありのままの姿を、この一冊にさらけ出してきた。自分の弱さ、恥、醜態、嘘。何一つ隠すことなく。読者に、そして私に、はっきりとした口調で、語りかけ、訴えてきた

自分の弱さを語ることは、誰にでもできる簡単なことではないはずだ。それでも、太宰は綴った。今まで私が読んできた小説の中で、こんなにも勇気を奮い起こした作家を、私は知らない。

 道化を演じている。きっとそうだ。私も、正面にいるこの人に、今、隣にいるこの子にも、学校の友達、部活動の仲間、親、兄弟にでさえも、本当の自分を100%見せているとは言えないと思う。きっと、一番の友達にだってそうだ。本当は、相手の何%を理解しているのだろうか、知りえているのだろうか。

 そんなの、誰にもわからない。

 それでも、人との関わりを持たないことは、あまりにも虚しい、ということは確かである。そして、また、現代の日本社会において、人との関わりなしに生きることは困難を来す、というのも事実である。

人付き合いに打ちひしがれ、自分以外の一切を気にせずに生きていくことができたら、どれだけ楽だろうか。そんな風に考えることも時にある。

 それでも、やはり、私は人との繋がりを求めずにはいられない。太宰と同じように。私は、これが人間の本質だと思う。



 つい先日、私が通う高校で、合唱コンクールが行われた。正直私は、この行事が大嫌いだった。何でわざわざやらなくてはいけないのだろうか。

 途中で言い合いや不満が出ることだって、最初は全然音が合わず声も出ないことだって、わかってる。自分が音痴だってことも。他のパートの不満、クラス全体の雰囲気の淀みだって、みんなわかってるよ。

ああ、何で、行事のたびに不満、不安が出てくるんだろうことが終わるまでの辛抱だ、と自分に言い聞かせてきたのは、中学一年生の時からだ。

 そんな風に心は憂鬱でも、決して、それを態度に出したりはしなかった。わかっていたから。態度に出してしまえば、みんなが作り上げようとしているものが、一瞬で崩れてしまうことを。

心の持ちよう、メンタルが大事だと。私は既に知っていた。気持ち次第で、ことが良くも悪くもなることを。いいか悪いかだったら、絶対、良い方が良いに決まっている。だから、私は、何かをなすために耐え忍ぶことを選んできた

それでも、私は幸せだった。なぜなら、学校行事や部活動のサッカーに対して、今まで本気で打ち込み、他人の目線を忘れる位に、熱中することができたからだ

 この点において、私は、太宰よりも幸せだったと感じている。

 この生き方を、今までの17年と少しの間に身に着けてきた。

 合唱も例外ではなく、やり始めたら全力で取り組んだ。予想通り、一時の不安はあったが、高校3年間の時を同じくした仲間との最高の思い出を作りたい。その思いは同じだった。

本音が人を傷つけることもあったが、正面から言葉にすることで、クラス全体に同じ考えが浸透していったのだと思う。結果は、総合優勝。

 私は、今、とても幸せだ。



 太宰の人生はどうだったのだろうか。

 私は、太宰は、自分を含む人間の弱さと正面から誠実に向き合った、誠実な男だと思う。ただ、あまりに純粋であったために、悩みの種から目をそらすことができず、そのために酒や薬、女に溺れることで、不安を紛らわそうとしたのだ。

 本書で、太宰は、「生」は悲劇名詞であり、「死」は喜劇名詞であると言い切っている。

 私は、タイトルの「人間失格」は、太宰の恥の多い生き様ではなく、生きることに絶望した末に、死ぬことで幸せを得ようとして、すなわち、太宰が人間を止めることが、自殺の覚悟がそのゆえんであったのだと思う。



これから先、生きていくうえで、様々な不安を抱くだろう。その時、私は、我慢することと、表現することのバランスを保ちながら、何か熱中できることを見つけていきたい。

 それが、太宰が成し遂げられなかった、「人間合格」に繋がることだと思う。私は、わが生涯を生き抜いて、それを証明したい。

18歳の誕生日直前の書き上げた、私の青年の主張。
ご精読ありがとうございました。

読んでくださったあなたに、何か気付きや再発見があれば幸いです。

どうすれば、より心豊かに生きていけるか。

自分だけでなく、私が影響を与えられる範囲の人に、しっかりと何かを遺せる人でありたいです。

同じ時代に生きるあなたの幸せを
心より願っています。

では、また。
どこかで、お会いしましょう。


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