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34.かいしんの いちげき!!


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私の運命を変えた、2019年の第95回箱根駅伝。
そろそろ連載名「チームつくばの片隅に」の看板に偽りありと苦情が来そうなので(汗)、話題を関東学生連合から筑波大学に戻そう。
日付も、開催当日の2019年1月2日まで遡る。

筑波大学生としては12年ぶりに、相馬崇史くんが関東学生連合チーム5区、箱根の山を駆け上った。
(当日のようすについては、下記まとめをご参照ください)

5区には行けなかったが、私は、自宅近くの沿道に出て2区を走る全選手を応援した。関東学生連合チームは最後尾だったけれど、駿河台大学の西沢晃佑さん(現・新電元工業)がしっかりとした足取りで走ってくるのが見えた。
自作の「関東学生連合」旗をしろたんに持たせ、西沢さんの姿が見えなくなるまで、全力で振った。

後ろからやってきた運営管理者の中で、関東学生連合チームを率いる麗澤大学の山川監督が、こちらを見て驚いているように見えた。
私の気のせいかもしれない。いやきっと気のせいだ。ものすごい沿道応援の群衆の中で、こんな小さな旗を判別できるとは思えない。
それでもすっかり自己満足に浸り、意気揚々と自宅に戻った。

ネット上には、筑波大学の相馬くんファンは多く、最後尾でなかなか映らないテレビでの露出度に反比例して、熱い応援コメントが躍動していた。

#関東学生連合 と、 #タツヤを漢に のタグで検索すると、多くの駅伝(陸上)ファンの方が、応援tweetを展開していた。
私の意味不明な大騒ぎ発言にも臆せず、気の利いたコメントをくださる方もいた。

それまで全く接点のなかった赤の他人が、箱根駅伝、関東学生連合というキーワードで同じ空気感を共有する。
まるで「同志」に巡り合ったような、不思議な感覚だった。

陸上を語る人々の世界の片隅に。今、確実に私は、存在している。

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翌1月3日。事件は大手町で起きた。

昨日5区を走ったばかりの相馬くんが、運営スタッフとして働いているようすを、同期の猿橋拓己くん(今年の箱根駅伝の3区ランナー)が楽し気につぶやいていた。

箱根駅伝は「関東学生陸上競技連盟」が主催する大会である。
連盟に所属する各大学から、多数の部員さんが補助員としてボランティア協力している。

しかし、箱根駅伝を走った選手本人が翌日補助員をするなど、今まで聞いたこともない。(前例はあると思いますが…)
相馬君が「報道受付」係だったことは、運命のいたずらであろう。
その姿を目ざとくスポーツ報知さんがすっぱ抜いた。

真面目な相馬くんらしい。
モニタの前で、私はほっこりした気分になった。

ところが、同じく相馬くんの同期で、前日に相馬くんの付き添いをしていた「だまちゃん」こと、児玉朋大くん(今年の箱根駅伝の10区ランナー)が、この殊勝な話題に大爆弾を投げ込んできた。

「暇だから」

このキーワードは、私の胸のど真ん中に突き刺さった。

それまで、「筑波大学箱根駅伝復活プロジェクト」当事者さんたちの個人アカウントは、あえてフォローせず、ネット上でも話しかけたことはなかった。
クラファン支援者だからといって、プライベートな部分に踏み込むべきではない、というのが私のポリシーだったからだ。

けれど、10月の予選会会場で目の当たりにした、筑波大学の「小さな陣地」に危機感を抱いていた私は、ネット上で一緒に筑波大学を応援してくれる人を熱望していた。

ネットの海に潜む「筑波大応援予備軍」を見つけるために、この絶好球を打ち返させてもらう。

見ず知らずのアカウントからでも、児玉くんのキャラクターならきっとうまく処理してくれる。自分に課していた「個人に話しかけない」というルールを破ることにはなるが、だまちゃんを信じて、思い切りバットを振った。

筑波大学のある茨城県つくば市は、「研究学園都市」構想のもと、人工的に作られたまちである。
今はつくばエクスプレスが開通してかなり便利になったが、「周りに野っ原しかなく、暇をつぶそうにも娯楽がない」というちょっぴり自虐的なネタは「つくばあるある」の一つだ。
かつ、国立の筑波大学に進学する理由の比重として「経済的理由」は軽くはない。それを踏まえた、捨て身の大喜利だった。

私が打ち返した球を、だまちゃんはガッチリ掴んでくれた。

しかも、イチローばりの超ファインプレーである。

「笑ってしまいました。もしかして筑波大の関係者さんですか?」という趣旨のDMをくださる方がぽつぽつと現れた。

かいしんの いちげき!!

筑波大学箱根駅伝復活プロジェクトのことや、クラウドファンディング支援者であることを説明させていただいた。

暗闇の中手探りで進んできた長い洞窟。その出口をふさぎ、外の光をさえぎっていた大きな岩。
今までびくともしなかったその岩が、ぐらりと動いた気がした。


>>35.OTTとリトルデーモンたち

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